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ゴブリン達と少年。

次々と襲いかかってくるゴブリン。


少年は動き難い体で必死にゴブリンの攻撃を躱しながら短剣で傷つけていく。一撃では流石に死なないが怯んだ隙に蹴りや短剣を突き刺せば倒れていく。


体が軽いので手や足を掴んで回転させるように振り回せば面白いように転がってくれる。そこに短剣を突き刺す。


一体一体に強さはない。それこそ黒い猿の魔物の十分の一もないかもしれない。だが、


「ギギャ!!」

「ギギャ!」

「「「「ギギャギャギャ!!」」」」


…数が多すぎる。すでに肩で息をしているのに動きを止める暇もない。ゴブリンの一撃、一撃、それを体を必死で捻り、しゃがみ、弾き、蹴り、転がりながら避ける。


「ハァ…ハァ…。」


息の吐きすぎで脇腹が痛い。汗で目が開け難い。膝が笑っている。スライムがメチャクチャ揺れてウッザイ!


「ハァ!クソッ!」


滑りそうになる短剣を握りなおし。今度はこっちからゴブリンに襲いかかる。


「ああ!!」


もう疲れて力の入らないが休むと足がもう上がらない気がして体を無理矢理動かしてゴブリンを斬りつける。


「ギギャ!!」


その後ろからゴブリンが二体。少年の背中に斧と鉈を振り下ろしていく。少年はそれに気付かずに斧と鉈の刃は背中に纏わりつくスライムごと斬られる。


「…うぉ!!」


だが、間一髪で躱す。薄皮一枚…いや、スライム一膜分斬られるだけで済む。


「斬られてない!?良かった!ハァ…ハァ…スライムが斬られた時に感覚があったぞ!怖っ!」


集中し、少年の神経が張り詰めているせいで密着しているスライムの微かな動きに反応することが出来、そのおかげで気付いていなかった背後からの攻撃を咄嗟に避けることが出来た。


少年を覆うスライムの膜は15センチ。スライムの粘着性と弾力性が攻撃の速度と威力を削ったとしても躱せたのは奇跡だった。


その後も休む事なくゴブリンは襲いかかってきた。










「……。」


すでに何匹目だったか覚えてないゴブリンを斬りつける 。少年は完全に疲れていた、すでに避けるとは呼べない動きでゴブリンの攻撃をなんとか凌いでいるだけだった。体に纏わりつくスライムはもう何度も斬られている。


「……。」


だが、偶然か少年の体には刃は届いていなかった。


ゴブリンの刃がスライムに触れると刃はその周りを滑るように走り、少年に当たらない。胴薙にする刃も少年自ら倒れて転がり躱す。つき刺してきても、スルリと滑るように躱す。


少年は向かってくる力に対してなんの抵抗もしない事でその力を躱す術を覚えていた。スライムを纏わりつかせており、体に力が入らなかった事による副産物だ。


短剣を握りはしているものの短剣の重さですら持ち上げられなくなっている。だが、その刃でゴブリンの体を躱すと同時に斬りつけていた。


少年はゴブリンから攻撃されるその勢いをそのままに無駄な力を使わずゴブリンからの攻撃の力と自分の体重で短剣を動かし斬りつける。


少年はこの戦いの中で向かってくる勢いを自分の体の中で進行方向だけを変えて使う術を覚えていた。


少年にとっては疲れて動きたくない、スライムが邪魔で重い、ただそれだけの理由であったが。


「もう、…無理。」


二時間後…限界がきた。少年は立つ事すらやっとの状態で辺りを見渡す。


血に塗れたゴブリンの山、そう評してもおかしくないほどに。気付いた時には立っているのは少年一人だけになっていた。


誰もいない事を確認して首を下に向ける。疲れて首ですらこれ以上動かしたくなかった。足が震えるのすら

呼吸と骨格を駆使して無理矢理に黙らせる。力が入らないので少しでも動くとスライムが揺れてその細やかな反動でバランスを取れずに倒れてしまいそうだったので必死だ。


もう、今日は無理だ。体が悲鳴を上げている。


「…修行は、明日にしよう。…師匠と姉弟子の所に戻ろう。」


少年はスライムが揺れないように体を無駄な力が入らないようにゆっくりとしながら師匠たちの元へ歩いていく。


思うのは修行の事、朝しか修行をしておらず、しかも、ゴブリンに襲われるという不運によってまったく進んでいない修行の事を考えると疲労はさらに重くなったように感じる少年。


だが、この瞬間に少年は完全な脱力と力の捌き方をマスターして、スライムを引き剥がすまで後少しのところまで来ていることをまだ知らないでいた。








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