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スライムに包まれた少年

男は突然だった。


「よし、今から修行を開始する。」


「いきなり何を?って汚っ!」


男は唾でも吐くかのように口から薄緑色の粘液を少年に飛ばした。それは少年の体全体に纏わり付いて顔以外を覆う。その姿は薄緑色のブカブカの服を着ているような状態で気持ち悪い。


「…これは?」


「修行だと言ったろ?その薄緑色の粘液はゲルスライムという魔物だ。だいたい3日間纏わり付いて身体を少しずつ溶かしていく。」


「え!」


「修行は3日間以内にそのスライムを体から引き剥がす事だ。」


男は3日以内に引き剥がす事が出来なかったら死ぬと安易に言っているのだが少年は気にする事もなく了承する。


「…わかった。」


少年はコクンと頷いた。それを見て男は思わず笑った。


「ガハハ!物分かりがいいな!前にサクラにそれをしたら1日駄々をこねていたぞ!」


「…やる事が決まってるならそれをやるだけだ。他にする事もないし。」


「そうかそうか!頑張れよ!」


そう言って男は近くの触りやすそうな岩に座り込んだ。


少年は自分の体を見て徐に腕を振るってみる。腕が揺れるのと同じように纏わり付いているスライムもプルプルと揺れる。


手でスライムを掴んでみる。ネットリとした感触とともにスライムを手のひら分すくい上げる事が出来た。それを地面に叩きつけるように捨てる。


…これを繰り返せば全部のスライムを取れるのでは、そう思いついて必死にスライムをすくい上げて捨て続ける。それを見ている男は笑いを堪えていた。だが、それを無視して一時間ほどやり続けた。


「…減らない。」


「ガハハ!だろうな!」


一時間、堪えていた方だと思うが限界がきたのか少年を見て盛大に笑う。


「いや!お前!そんな方法で取れるなら修行にする意味無いだろうガハハ!!」


「付いてる分を取っているんだからいつかは無くなるはずだ。」


「それはスライムの特性を知らないからだよ!スライムはな増殖といって一つの体を二つに、二つの体を四つにとドンドン増やす事が可能な魔物なんだよ!もちろん無限にってわけじゃねぇ。その分どこからか栄養を摂取しなきゃいけない。…お前からな?ガハハ!」


「…なるほど。」


「このままじゃ3日も持たずにスライムの餌になっちまうぜ!」


部分、部分で取り除いてもそこから増殖して増えるから取り除くなら全部一気にじゃないと駄目みたいだ。

いったいどうすれば?


「…そういえばサクラだったっけ?あの子はどこに?森の中は危険だと思うけど。」


この修行が始まる前からもういなくなっていたけど。


「あーあいつは今、お前とは別の修行をさせている最中だよ。ま、問題ねぇよ。今日は軽く予行演習みたいな感じだから。」


…そうか、あの子も修行中なのか。少年は身体中に纏わりつくスライムを見ながら少しやる気を出す。


「よし!頑張るぞ!」


「ガハハ!その意気だ。…だが、そろそろ日が暮れる。おい、夜用に薪を集めて来い。」


「え?俺がするのか?」


「当たり前だ。今お前は鍛えてもらっているんだからメシの準備くらいするのが当然だろ。まぁ、今日のメシは特別に俺が準備してやる。薪だけさっさと集めて来いよ。」


確かに、何のメリットもないのに俺を鍛えてくれているんだそれくらいするべきだ。


「わかった。…ちなみにこの状態でか?」


すごい動き難いのだが。


「それも修行だ。」


そう言って男は岩の上から立ち上がり森の奥に向かって歩いていく。


「獲物を捕まえたらすぐに戻るから薪を集め終わったら火を起こして待っていてくれ。」


「わかった。」


少年は薪を集めに森を探索し始めた。


ここら辺は村からも離れていてあまり来ないゆえに誰にも取られておらず、薪となる木はそこら辺に大量に転がっている。すぐに集め終わり火を起こす。村から持ってきていた火打ち石で燃えやすい乾燥した草を燃やし風を起こしながら火を木に移していく。


十分もすればあとは木を重ねるだけで大きく燃え上がっていく。残りの薪も確保してあとは男とサクラが帰って来るのを待つ。


辺りも暗くなり始めた頃、後ろから草木を揺らす音が聞こえてきたので帰ってきたのかと思い振り返るとそこには剣を持つゴブリンが立っていた。


「ギギャ!」


ゴブリンは少年に向かって剣を振りかぶり襲ってきた。少年は慌てて近くにあった木を掴みゴブリンの持つ剣に木を合わせる。


木と剣がぶつかり合う、本来なら木が折れてそのまま少年は切られていたかもしれないが木を振るった角度が良かったのか、ゴブリンの力が弱かったのか一合目は互角の弾き合いを繰り広げた。


少年は慌てて立ち上がりゴブリンを睨む。


「ギギャ!」


ゴブリンをよく見ると少年よりも小さい、胸元くらいの背に緑色の体に腰ミノだけつけた姿だ。剣もかなり錆びてボロボロだ。


少年は油断をしないように落ち着いて、攻撃が当たらないようにすぐに動けるように体を低く落とし木を捨てて腰に挿してある短剣を握りゴブリンの挙動を見つめる。


ゴブリンは少年の動きに動揺しているのかまだ動かない、その隙に少年は前を向いたまま後ろにある燃えている薪を左手で掴みゴブリンに向けて投げる。それと同時にゴブリンに向けて駆ける。


燃えている薪に驚き剣を振るうゴブリンに少年は冷静に振り抜いた瞬間を狙って剣を下から蹴り飛ばす。そのままの流れでゴブリンの腹を蹴り飛ばす。


「ん?」


その時に見た。自分の体に付いているスライムが蹴った足に多く集まって来ていたのを。


もしかして、移動するのか?


「ギギャ!ギギャ!」


吹っ飛ばされたゴブリンが怒り狂いながら戻って来たが気にせずに少年は全身運動を使い振りかぶって短剣を投げる。


体から運動エネルギーが足を通り腰に、肩に、腕に最後に短剣に集約するように動かす。スライムもその動きに合わせて短剣に集まり出した。


短剣を離した時にかなりのスライムが自分の体から離れていったのがわかった。短剣は何故か飛び込んでいたゴブリンに刺さりそのままスライムに包まれた。


少年は体を見るとまだ部分部分にスライムが残っており少しずつ増え始めている。


「…わかったぞ。スライムを引き剥がす方法が。」






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