新しい出会い
カタカタカタ
カタカタカタ
小さい頃からよく見る夢
外は土砂降りの雨で
土の跳ね返りが見えるほどだ
庭の様子を見ると
ヤッパリいつもの
男が来ている
・・危ないな、夕芽に
教えなくちゃ
そう裸足で庭に走り出す
泥が足の裏でぬめぬめして
気持ちが悪い
足の裏をつつく感じがする
見ると
百匹は超えようかという
亀が土の中から
這い出てきていた
何匹も何匹も
5センチほどの
小さな亀から
30センチほどの亀まで
皆同じ方向を向いて
這い出てくる
・・教えなくちゃ、教えなくちゃ
カタカタカタ
カタカタカタ
どうやら夢ではない音に
目が覚めた
「起きちゃったよ、」
其処には眠る前と
変わらず 白い景色が
在った
「そうだよね、こんなもんだよ」
起きたら普段の生活に
戻れるんではないかと
淡い期待をしていたが
そんな期待はいつだって
ちゃんと裏切られた
「そうなんだよ、楽は
無いんだ」
もう、何年も癖になってしまっている
ため息をついてから 気がついた
「ん?」
カタカタカタ
カタカタカタ
やっぱり聞こえる
「夢じゃない!」
白い景色の中に
昨日は何の希望も
無かった
でも今日は、(今日か
昨日かはわからないけど)
音が在る
とにかく 音の方へ
向かう
足元の砂を
踏みしめるたび
キュッキュと音が鳴る
「この砂、骨だったりして、ふふ」
気を抜けば
カタカタはきこえなくなって
しまう
慎重に歩き
少しずつ
音に近づいた
カタカタに近づくにつれ
ザーーーーーーッという
音が重なってきた
「わっ」
不意に足をとられそうに
なり 後ろへ転んだ
見ると
砂の滝だった
「今まで何の流れも
無かったのに、いきなり滝って」
「前置きをくれよっ」
バクバクとなる心臓を
止めるように
大きく息をしながら
滝に近づき そっと下を見た
「バンジーでも出来そうなだな」
カタカタの正体が
其処にあった
砂の中に時々混ざる
ほんの小さな石が
赤いトタン屋根に当たって
カタカタといっていたのだ
「は・・」
肩の力が抜けた
白い景色の中
カタカタを求めて
歩いてきたら
赤い屋根の家がある
「赤い」
涙が出た
「色があるよぉぉぉ!」
「赤だってさぁぁ!!」
「しかも屋根だし!!」
泣きながら、笑えて来た
「色があるよぉ」
そうだよ、いろんな色がないと
おかしいよ
空や雲や鳥や草や
みんな色があって
「誰か居るかも」
滝から 赤い屋根は
小さく見えて
「飛ぶか」
なんでだか、飛べる気がしていた
そういうと、体はふわっと浮いた
「うわぁ」
言うと、体が沈む
慌てて胸いっぱいに
息を吸う
ふわふわと体は浮いた
何故だか背泳ぎの格好だが
息を吸うと体は浮き
思えば好きな方へと
進む
ただ、息を吐くと
沈むので
なれるまではチョと
苦しい
屋根の上まで来ると
息を吐き出し
そっと降りた
私はにんまりと笑った
「初めて楽しいぞ」
「何が楽しいの?」
「え?」
振り向くと
其処にはタクが居た
「うそ・・・」
「ねぇ、何が楽しいの?」
「うそだ・・」
「ねぇ、何が、た、の、し、い、の?」
「タクなの?」
タクは、
いや、タクに似た誰かは
少し首を傾げて
「ねぇってば、何が楽しいのさ」
違うんだわ
「何が違うのさ」
「いや、ううん、あ、
私空を飛んだんだよ!」
よく見ると 彼はタクよりも
10歳は若く見えた
「空を? へぇ」
そういうとタクに似た
その子は私の手を握り
走った。
「何処行くの?!」
ふふん、と彼はわらって
そして飛んだ
「ああ!!」
私が飛んだよりもずっと早く
ぐんぐんと登っていく
風が強くて 息が出来ない
「ねぇ!!」
「飛ぶって、これくらい
飛んだの?」
風をビュンビュンきって
飛ぶ彼に
ううんと首を振る
すると、彼は降りる気に
なったみたい
・・自慢、したかったのかな
「ねぇ、君は誰なの?」
タクに似た彼は言った
「私、は、ミウ」
「そう、僕はシズル。
ミウ、お腹すいてない?」
言われて初めて 気がついた
「空いてる、」
おいで、とでも言うように
シズルはトタン屋根に
入っていった。
・・ミウだって、
本当は政子っていう名だ
おばさん臭くてあんまり
好きじゃない
彼がタクじゃないと知って
なんとなく、違う名前を
言いたくなったんだ
「ミウーー!」
シズルの声がする。
「今行くー」
白い奇妙な世界で
はじめてあった人
タクに似た
男の子
白い世界の中に
赤いトタン屋根の家
其処に多分住んでる
男の子
シズル
逃げても始まらない
ココが終わりなのか
始まりなのか
とにかく 入ってみないと
解らない
私がこれからどうなるのか
世界がどうなったのか
「とにかく、行くべし」
「ミウーー?」
「行きます!行きます!」




