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私、いつ人間やめましたっけ?  作者: 雲梯
一章
4/21

4

 豆腐熊を撃退し、気持ちを晴らすべく町へ向かうことにした俺は只々勘に頼りながら、一直線に歩いていた。

 地理に詳しくもなければ、世界のことも分からない俺は進むしかないのだった。


 しばらく歩いても一向に変わらない景色に俺は早くも苛立ちを覚え始めていた。

 何せ横を見ても、前を見ても訳の分から無い草木が生い茂ってるだけなのだから。


 なんかもうこの際じれったく歩くより飛ぶほうが早い気がしてきた。

 上から精察したほうが遠くを見渡せるし、何より早い。

 思い立ったが吉日ともいうし、迷いもなく俺は地面をけって空中へと飛び立った。

 山から下るときも感じたが、やはり俺の体は飛ぶことに謎の慣れがあった。意識するだけで簡単に左右等調整できるのだ。呼吸するのと同義で、翼の動きさえも意識下にはなかった。


 暫く飛びながら俺は、先程敵対した豆腐熊について考えていた。俺はあいつと敵対したとき、いとも簡単に奴の本質に気付いた。奴は魔の気をまとっていると...

 ここからは軽い推察だが軽く聞いてほしい。恐らく、俺は新たな存在に生まれ変わる際、この地に適した体に生まれ変わったと考えられる。理由は簡単だ。自身の飛ぶときの感覚。今挙げた魔の気に関してだ。

 実際、俺はこの体に馴染んでいた。初めの方は何だか気持ち悪く、自分が自分ではない…そんな感覚が支配していたが、時間が経つにつれそんな感覚は消えていっていたのだ。


 ふと考えてみると俺自身に豆腐熊のような魔の気があるのかと考えたらそんなものは感じられなかった。

 何か、力のようなものは感じられたが熊の「それ」と同じかといわれると首を傾げるしかなかった。


 そんなわけも分からない小難しい事を考えていたら、前に街らしき影が見えた。

 自分の視力が上がったのか分からないので、自分の姿を見られそうなギリギリまでをとんでいく範囲にする。

 もしも、自分の姿を見られたときこの街に住む者たちが俺を敵だと判断したらたまったもんじゃないからだ。

 正直、そんなことされたら立ち直れないと思う。精神的に。


 先ほど言った通り見えないであろう位置に俺は降りたった。街へは徒歩5分で着くであろう距離だ。降りてすぐ周りを見渡すときれいな平原で、特に目立った高い物等はなかった。

 どうやら考え事をしている間に森は抜けていたようだ。


 だがここで俺は一つの問題に対面した。容姿だった。

 明らかに人外であろう、この容姿のモノを街は受け入れるであろうか。否、無理な話だった。

 そう考えた俺は、軽くひっこめるイメージを持ってみることにした。大体こういうものは出せるしひっこめるのが定説だった。

 考えが当たったのか、人間にはないであろう翼や尻尾は、元からそこになかったかのように消えていた。思いの外簡単だったことにこの体の便利さに少し驚いた。


 難題を乗り越えた俺は、初めてついたその地を悠々と眺めながら街の方面へと進んでいくのであった。



 街の正面へ着いたのはよかったが、ここでまたもや問題が生じた。

 遠目では確認し切れなかったが、この町は壁で囲まれていたのだ。そのため入る手段が限られてしまったのだった。

 壁を見るに高さは軽く10mはあるだろう。登るのは怪しまれるうえにめんどくさい。


 なので誠に不本意ではあるが正面突破をするしかなかった。物理的な意味では無くて...


 俺は壁をたどり、この町へ入るためであろう門へと立ち寄った。

 門は大きく、両側には何やら人が二人立っていた。

 俺は軽い感動を覚えた。この世界でやっと見つけた人だからだ。森の中を移動する際、軽くこの世界に人なんていないんじゃないか疑ったりもしていたが、そんな哀しい予感が当たらなくてよかった。本当に心からそう思った。

 門を通ろうと歩みを進めると近くにいた鎧を纏ったいかにも騎士ですと言った男に、声を掛けられた。


「ちょっとお嬢さん!待ってくれ!」


どうやら俺では無いようだった。


「君!君だよ!」


 俺が無視して街へ入ろうとすると、先ほどの男が俺の肩に手を掛けて引き留めてきた。

 あ、今俺女じゃないか。今更になって自分の容姿を思い出してしまい少し自己嫌悪にあった...


「すいません...俺のことじゃないと思っちゃって」

「いや、いいんだ。取りあえず身分証を見せてくれ」


 そう言い男は俺に向かって掌を見せてきた。

 まて、これは非常にまずいぞ。俺の第六感がそうつぶやいている。

 何故も何も俺は外で目を覚ました身であり、身分を証明であるものなど一つも持っていないのであった。

 更にである。この世界を一つも理解してない俺が適当な嘘をついたところで信じられるかさえも怪しいのであった...

 でもここを乗り切るのは嘘という方法以外はないのであった...

 うぅ...どうすればいいんだ...嘘なんてつけない…下手糞的な意味で...


「あぁ…っともしかして身分証もってなかったりするかな?」

「ひゃいっ!?」

「ああ!落ち着いて落ち着いて!別に身分証が無くっても怒ったりはしないよ。」


  男は落ち着けと言わんばかりにジェスチャーで俺を宥めた。

  なんだ、身分証がなくても平気なのか...早とちりしすぎてしまった...


「んーっとね、まぁでも身分証がないのは結構珍しいケースなんだけどね。」

「そ、そうなんですか?」

「あぁ、ある程度の町では生まれてすぐの子どもに身分証を発行するからね。この世界の9割は身分証を持ってるんだよ。」

「...成程ー」

「だけどね、小さい町や、認知されていない集落などでは身分証が発行されてないところもあるんだ。それが残り一割だね。君の成を見るに恐らく小さな町の出だろう。そう考えると身分証がなくても不思議じゃないのさ。」

「そ、そうなんです!俺田舎の出で、この町目指してきたんですけど...」


 俺のあからさまに適当な嘘に騎士の男は満面の笑みを浮かべた。

 なんだこいつ、ちょろいな。


「それなら、ちょっとした確認をとらせていただくね。こっちへおいで。」


 そう言いながら騎士の男は門の端へ行き、俺を手招きして呼んだ。

 騎士の男は何やらそこにあった扉に入り、直ぐに出てきた。その手には謎の道具があった。


「これはなんですか?」

「これはね、この町へ入るために軽く質問をする際の道具さ。この町へ敵意があるか無いかで色が変わるのさ。」


彼は俺に説明しながら、その水晶をこちらへと突き出した。


「…えと、どうすれば?」

「ごめんごめん、説明してなかったね。手を置くだけだよ。」


 男は俺を見てにっこりと笑った。こいつ絶対に女にもてそうだな、爆発しろ...俺は心の中で軽く悪態吐いた。

 しょうもない考えを持ちながらも俺は、言われるがままに水晶に手を置いた。

 すると、水晶は敵意を感じ取らなかったのか反応を示さなかった。


「蒼...ということは敵意なしだね。よし、街に入っても大丈夫だ。」

「有難うございます。」


 俺は疑い(?)が晴れ、見事街の中に入ることができたのだった。

 街に入れるようになったところで俺の目的は達成できたのだが...

 まだ...全然といっていいほどこの世界を把握していなかった。

 なので、この街の図書館を利用する。それが俺の一番の目的となった。


「すいません。この街って図書館があったりしますか...?」

「あぁ、図書館はこの道ををまっすぐ行ってから南へ進むとあるよ。大きく図書館って書いてあるから誰でもわかると思うよ。」

「なにからなにまで有難うございます。」


 親切な騎士の男に頭を下げつつ、ようやくこの場を去ろうとしたらまたもや騎士の男に声を掛けられた。


「ちょっと待って!図書館に行くんだったよね?」

「はい。」

「ごめんね...たしか図書館へ行くには身分証が必要なんだったよ。危うく忘れるところだった...」

「え...ならどうすれば...身分証はもらえますかね?」

「んーっと...手っ取り早いほうが良いんならギルドって言う方法があるね。ギルドは来るもの拒まずがもっとうだからよっぽどの犯罪歴がない限りは受け入れてくれるはずだよ。でもあんまりお勧めはしないかな...」

「どうしてですか?」

「ギルドはなんていうか...君みたいな女の子が行くような場所ではないんだよね...」

「...」


 俺は今更痛感した...この世界で俺の容姿は途轍もなく足を引っ張るバッドステータスなのだと...


「だ、大丈夫です!俺、ただ図書館利用するために身分証発行するだけですから!」

「そうかい?まぁ、気を付けるんだよ。あそこは本当に野蛮なやつが多いからね。」

「はい!気を付けます。本当にありがとうございました!」


 やっと終わった会話を切り上げ、足早に俺はその場所を後にした。



 そして俺の一番の目的がギルドへ向かうことに変わっていた...

他の方の小説を読むってことは、取り入れられそうな表現を見つけられ、面白い、の二段構成で楽しめます(*^-^*)

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