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謎の合格を受け、内心安堵した気持ちと総合科に合格してしまったという不安を胸に、俺はアルヌの家へと帰りその日を終えた。
どうやら一日の内容が濃かったせいか、激しい眠気に襲われ俺は簡単にもその意識を手放した。
眠ったと思った瞬間、目の前がなぜか明るくなった。あまりにも突拍子のない事態に困惑しながらも、俺は目を開け乍ら周りを見渡した。
周りを見渡すと、場所は先ほどまで自分がいた寝床ではなく、俺が初めてこの世界に着いた時の神殿だった。
謎の転移に目を白黒させながらも、状況をより把握するために立ち上がった。
すると、視界の端に白い少女が映る。俺はその少女を自然と目で追った。何も考えず本当に無意識だった。
そして、視界の中心が少女にあった、そう思った瞬間に俺の目の前から少女の姿が消えた。
消えたと同時に俺の脳内に一つの声が聞こえる。
(咲間静......それが其方の名前か)
まるで赤子を落ち着かせるかのような柔らかな声色が俺の脳内に響き渡る。
どこかで聞いたことのあるその声を、思い出そうとするがどこか引っかかって全てが出てこない。
何かしらの力によって強制的に、封じられているかのようだった。
脳内に聞こえた声に応答しようと試みるも、俺の努力は虚しくも失敗に終わる。
(すまない、こちらからしか用件は伝えられぬ。今回は聴くことに尽力してほしい)
謎の声の主は俺にそう言い放った。
喋ることができないのなら自分にできることは何もないので、おとなしく聞くことに専念する。
(今回この場に召還んだのは、其方との調和を図るためだ。今、其方と我は同化しているようで噛みあっておらぬ)
【同化している】この言葉で俺は、声の主がエウトロラレウスなのだと実感した。
ここで先程の記憶の鍵が外れるかのように、声の違和感が解けた。
(今、其方の中で記憶が一つ解放された。それが我との調和を意味するのだ。我の記憶を思い出すことにより、我と其方は本当の意味で一身となる)
どうやらこの鍵が外れたかのような感覚が、調和の感覚らしい。
割と急展開なのに、落ち着いているのは調和のおかげなのだろうか。
少しだが、エウトロラレウスの記憶が自身に流れ込んできている感覚が分かる。
(其方に我が宿った理由は他でもなく、魂色が一致したからだ。これからより我に近くなっていくだろう......だがそれは必然で有り、逃げられぬ未来だ。どのよう
な形で有れ、自我を保ち続けるように努力をしろ)
難解な説明に首を傾げるも、いやというほど正確に理解できるよう脳内に直接情報が入ってくる。
自分の脳を無理やり書き換えられるのは、到底気持ちのいいものではない。
言いしれぬ気分の悪さに顔を青くしながら俺は再び意識を手放した。
(其方の人格と、自我の強さに幸あれ)
その言葉と同時に我の目の前は真っ白になった。
*
小鳥の囀りが耳に入ってくる。窓から差し込む朝日がラレウスの顔を照らし出す。
その顔はどこか安眠しているようで、なにやら苦しんでいるようにも見えた。
そしてその目が開かれると同時に、彼の体は跳ね上がった。
「!?......なんじゃ......夢............か?」
声を出し率直な感想を述べようとした瞬間に、謎の違和感を感じる。
いや、違和感の正体はわかっているので謎ではないだろう。
「我の口調がおかしい......!?」
まるで昨晩見た夢にでた、ラレウスの口調にそっくりだった。
だが、おかしいのは口調だけではなかった。
気付いたのは、体を起こそうとベットから降り、立ち上がったとき......
体が軽かったのだ。足から上には何もないかのような軽さだった。
「これが調和......ステータス自体も底上げされるのか......」
恐らく筋力値が格段に上がっているのだろう。慣れてないせいか違和感しか感じない。
ふとここで、昨晩の記憶を引っ張り出す。
確かラレウスは、調和は完全ではないと言った。なら、もしかしなくてもこれ以上のステータス成長があるのではないか。そう考えてしまった。
ただでさえ、化け物じみたステータスで身近の人々を騒ぎ立てている我が、これ以上の成長をしてしまった場合、非常にまずいのではないだろうか。
朝から非常に難解な問題に頭を悩ませていると、部屋にノックがかかる。
アルヌだ。
「ラレウスー?起きてるー?」
我はここで拙いことを思い出す。そうだ、我は口調が変わってしまっているのだった。
非常にまずかった。何せ、昨日までオレオレ口調だった奴が、ふと目を覚ませば我だの其方だの言っているのだ。
我から見ても相当なやばい奴だった。
「聞こえてないの?それとも寝てるの?」
ノックの音が次第に大きくなり、返事のなさにアルヌが違和感を感じ始めていた。
返事を素直にするか、頑張ってごまかすかの二択が我に迫られるが、正直後者は対応のしようがなかった。
今現在も訂正したい気は満々だが、全くといっていいほど直らない。
恐らく、長い年月この口調で喋っていた我自身の癖なのだろう。
グジグジ考え込んでいても時間が過ぎるだけなので、我は仕方なく返事をすることにした。
「いや、起きとるぞ」
「おきと......え?」
「いや、何でもない......先に降りておいてくれ」
「う......うん?」
アルヌは恐らく、我の口調に違和感を感じたのだろう。終始語尾にはてなを付けながらしゃべっていた。
正直仕方なき。これから何とかしてこの理由を考えなければならない。
我は朝から、硬い頭を何とか回し、この奇妙な口調の言い訳を考えることにするのだった......
来週辺りから更新速度を速めます。
遅れてすいません。




