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今日と言われた瞬間俺の中に困惑の色が広がった。
全く予想だにしなかった発言だった。俺は早くて3日とかだろうと思っていたからだ。
何せ、遅れての入学ということはいろいろと手続きがあるはずなのだ。それがあるはずのことを考慮しての3日だった。
だが、彼が発した日にちは現在だった。冗談だったらまだいいのだが、完全にマジの目だった。
「......今日ですか」
「うん。実際に今日行くかもしれないと声を掛けておいたからね」
俺が思っていたよりウォンは用意周到だった。
流石ギルドマスターなだけある。
試験が今日だと言われたところで、俺に不満があるかと言われれば、そんなもの1ミリもなかった。
正直願ってもない申し出である。ただ、突発的な話だったので困惑していただけなのだ。
「先ほども言った通り、早めが良いので別に俺は構いません」
「よし、それじゃあそういうことで......だけど一つだけ注意しておくことがあるんだ」
「......なんですか?」
「それはね......ラレウス君の口調の話だよ」
「......はい?」
今日は驚くことが多いと思いながらウォンの話に耳を傾ける。
「変な意味じゃなくてね、冒険者学校は実技だけではなく、生活面などにも厳しいんだ。特に口調はね」
「俺何かおかしいですかね......」
「......自覚がないのかい?それはまた重傷だなぁ......簡単に言うと、言葉が男勝りすぎるんだよ」
「......あ」
俺は思い出すかのように言葉を漏らした。
昨日風呂場で見た、自身の姿が脳裏にしっかりと蘇った。
そうだ、今はあれが俺なんだ。あんなかわいい女が俺なんて言ってたら確かにおかしい。
しかし、自身が私なんて言うのはむずがゆくて仕方がない。
「まぁ、沁みついてしまった癖は治らないと思うし、徐々に改善すればいいと思うよ」
「はい......」
無駄にプレッシャーが掛けられた俺は少し嫌悪感を抱いた。
「じゃあ、早いけど学校へ行こうか。試験内容は筆記2割、実技8割だと思って大丈夫だよ」
「実技って何を......」
「あぁ、魔法を撃ったり剣を使ったりだね。すべての実技を見た上で科を決めるんだ。あと、ステータスの件に関しては何もこちらとしては調べてないことにしてるから。そう言う生徒も珍しくないしね」
「そうなんですか......何だかいろいろとありがとうございます」
「礼には及ばないよ」
ウォンは俺にはにかみながら部屋のドアノブに手を掛けた。
試験と考えると無性に緊張してくる俺だった。
*
ウォンの案内により、俺は無事国立冒険者学校につくことができた。
当たり前か、試験中はウォンと話すことも近づくこともできないので、ギルドに戻って待っているとのことだった。
俺は案内された位置に立ち尽くしていたが、しばらくするとそこに一人の中年の髭を生やした男がやってきた。
「お前がラレウスか?」
「は、はい!」
突然の問いかけにきょどりつつも俺は返事を返した。
彼は俺を見定めるように眺めていたが、少ししたらスイッチが入ったのか俺を校内に案内してくれた。
校内に入って少し歩いたところで大きなグラウンドに出た。どうやらここで実技試験をするらしい。
なんだかとても急すぎて、心の準備がまだ終わっていなかった。
「ここが実技試験場だ。お前の各科の適性を図る」
「はい」
「直ぐに始めるが構わないな?」
「大丈夫です」
試験管で有ろう髭の男性に、試験の可能を伝えると彼は少し距離をとり、事務的な声をあげた。
「これより、実技適性試験を行います。試験者は初めに、剣を握り、相手となる検査官と打ち合いをして下さい」
髭親父がそう言うと、自分で剣を持った。
まさかの自作自演だった。
俺の剣はどこだと探していると、髭親父がもう一本剣を渡してくれた。
剣は実際には切れないよう、きちんと刃が潰してあり、叩かれても切られてもけがはしないようになっていた。
「それでは始めます。スタート!」
髭親父の宣言とともに打ち合いが始まった......
はずだった。
だがおかしなことに、俺の目には再びあの光景が映った。
そう、相手がスローモーションなのだ。
これは豆腐ぐまの時と同じ現象であり、よくよく見てみれば、豆腐ぐまよりも圧倒的に遅かった。
俺は不思議に思ったが、ステータスの件を思い出す。
俺の素早さの値を思い出してみよう。
素早さ 569
もしかしなくてもこれが原因の可能性が高かった。
何せ私の知ってるアルヌの素早さでさえ100も超えていないのだ。
そもそも100を超えている者がいるのだろうか。
そんな考えから熊の件を思い出す。
なら最悪、あの熊へ振るった攻撃を検査官にしてしまえば、俺は殺人を起こしてしまうかもしれないと。
今現在、相手がこちらに向かってきているが、それでも動画を20分の1再生したくらいの遅さだ。
だからといってこちらも遅いのかと言われれば普通に動ける。
圧倒的戦力差だった。
俺は万が一を考え、最小限の、猫じゃらしを振るかの如く、剣を振った。
俺の振るった剣が、検査官の剣に接触した瞬間。
検査官の剣が切れた。
「......なに!?」
検査官が驚きの声をあげた。
勿論俺も驚きで声が出なかった。
葉がつぶれた剣で打ち合っていたはずであり、検査官に至ってはまず1回目の切るモーションに入っただけだった。
それだけの行動を起こしただけの検査官の剣が、何の動作も見せていないラレウスによって切られたのだ。
驚き以外の何物でもない。実際ここまでの威力が出ると思わなかった俺も、途轍もない驚きが自分を支配している。
あまり今言うことではないと思うが、相手との試合が終わった瞬間世界が等速に戻った。
これが何を意味しているのかは追々考えたい。
「......お前、今動いたか?」
少し睨みを利かせるように、俺にそう言い放つ髭親父は、先程とは全く違った表情をしていた。
畏怖、いや恐怖といった感情だろう。
なんだか......そう言う目で見つめられると、とても悲しく思えてくる。
「動いたって言うか......はい、動きました......」
俺がそう言うと、髭親父はこれ以上聞いてくるのをやめた。
切れた剣を拾い上げた髭親父は、俺の剣を回収し、また事務的な言葉をつぶやいた。
「次は魔法の実技だ。自分の得意な魔法を見せよ」
魔法だった。
正直無理臭い。何でも、今までそんなもの使ったことがなかったからだ。
だが、そう思っていた俺は現実を見ることとなった。
魔法といえば炎。
そう思っていた俺が念じてみた魔法は__
__グラウンドを炎の地獄へと変えてしまったのだった。
魔法発動の瞬間に髭親父は目を見開いて小さく呟いた。
「無詠唱......だと!?」
俺には目の前の炎の爆音の所為で、聞きとることができなかった。
炎を目の前にして呆然と立ち尽くす俺たち。
アブなく思ったので炎を消そうとした俺は、何となく念じたら消すことができた。
その光景を再び目にした試験官は頭を抑え何やら唸り始めるのだった。
花粉症がつらくて更新が遅れました(言い訳)




