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異世界Baby  作者: 本屋
77/112

77、レクスタ家のダンジョン探求依頼


「プリスタ殿に会っていたようだな?」

「他領の貴族様で老齢のご婦人の方が、プリスタ様であるならば会っています」


 ライオネスは力を抜くように椅子の背もたれに背を預ける。何か探っているようだ。ライオネスを始めピークトリクトの上層部は、僕をレクスタ家所縁(ゆかり)の者ではないかと疑っているので無理もない。そのレクスタ家がピークトリクトにまで出向いてきて僕と接触したのだ。何かの意図を感じてもおかしくはないが、僕からは何かを言うつもりはない。勘違いはさせておいてもいいとさえ思っている。


「少し面倒なことになった。昨日そのプリスタ殿と会ったのだがダンジョンの探索を頼まれてのう。本来断る案件だったのだが事情が変わった」

「もしかして一昨日のことが関係していますか?ですがあれはお互い水に流すということで決着が付いているはずです。それを持ち出してくることはないと思うのですが」

「ああ、その事を持ち出して来たのではない。メイ様のことで探りを入れて来た。プリスタ殿はユースモア領で代々剣術の神を信仰して来た宗家レクスタ家の当主夫人じゃ」

「うわぁ~」

「なんじゃその声は?」


 思わず声が出てしまった、それはそうだ母の嫁ぎ先と言われている家だ。未だに何があって母は身重のまま実家に戻って僕達を生んだのか知らないが、そのことに無関係でない家の大奥様がピークトリクトに来ているということだ。もしかしたらプリスタは僕のお祖母様という事もあるのではないかということにもなる。


 コンコン


「ガルドー様がお越しになられました」

「入れ」

「待たせたな。なんの相談だ?バーナデットのダンジョン探求の件か?それとも、お前さん。また何かしたのか?」

「人聞きが悪いですね。僕は何もしていないんですが…無関係でもないです」

「お前さんが関係するかしないかで気の持ちようが変わるからな、人聞きも悪くなるのも当然じゃ。そろそろ自覚を持て」

「そんな自覚持ちたくないですね」

「それで、なんの話になるのじゃ?」


 ガルドーはライオネスと話すときは、いつもこんな感じだった。紅剣バナードの使用権で子供の教育係を勤めさせられて、軽い口の聞き方は長い付き合いを簡単に想像させる。


「レクスタ家の当主婦人のプリスタ殿が直にお越しになって、ユースモア領でのダンジョンの探求を願い出て来た」

「ふむ直接来たのか………それは厄介よのう」

「直接来ただけで厄介になるのですか?」

「普通はペラム家へのダンジョンの探求願いは文面だけの間接的な願いで、直接会ってまでは行わない。一々会っていたら儂はダンジョンの探求出れないからな。基本的な情報と理由などで選ぶことになるが他領になるのでな、領主同士の兼ね合いも発生するし、バランスも鑑みることとなっている。どこかの領が贔屓にされてるとかないように慎重に前後の探求も考えての判断となるのだ。だから選ぶ役割を持つ儂とオリヴァーは慎重になる。貴族達の中での暗黙なのだが、押しつけがましく直接願い出るのは、良しとされていないのだ」


 ペラム家では古くからペラム家の力への嫉妬を膨らませないように、他の貴族からの代理となるダンジョン探求を請け負っていた。その能力で王国中のダンジョンの宝を独占しているとやっかむ貴族を黙らせる為に、当時の国王から命令された生業だった。ペラム家としても王国中のダンジョンに探求に入れる口実が出来たので当時の当主も国王からの命令は二つ返事で飲んだそうだ。代理で手にした宝は代理を申し出た貴族家のものとなり、ペラム家は出来高でそれに見合った報酬を手にするのだ。ここでペラム家には絶対的な信用が必要になる。決して宝を見逃さないという実績による信用だ。この実績が裏付けとなる信用があるからこそ、探求にて大した成果がなくとも文句を言わせない結果に繋がる。<秘宝狂い>が反応したら必ず手に入れるという実績だ。ここでペラム家が目の前の宝に背を向けない大きな意味と繋がるのだ。バーナデットの探求で試練部屋に出くわしても無視するという提案をライオネスが、直ぐに受け入れない理由がここにあった。


「レクスタ家当主の奥方というのが、また面倒でな。本来貴族家の当主は他の家の当主に会うこと自体それなりの訪問理由がないと、周囲に要らぬ疑惑を持たれるので自重するのだが、武神十四信仰宗家の当主は家の血を守る為に他領など長期の留守はせぬのだ。外で女の罠にかからせないように外での付き合いごとは全て当主婦人が行う仕来(しきた)りがあるのじゃ。血を外に出さないことで家の格を上げ続けている閉鎖的な家が集まるのがユースモアだからのう。当主ではないが外での付き合いでは当主と同じ権限を持つのが武神十四信仰宗家の奥方となるのじゃ」

「そのプリスタ殿がメイ様を持ち出して来た。そしてついでのようにタンドーラ家の事を持ち出して来たぞ」

「なんじゃ?ダンジョン探求受け入られねばと、脅されたか?」

「直接脅して来たわけではない。匂わせて来ただけじゃ。詮索されたくなければ、ダンジョン探求の話を飲めということだろう」

「全て調べ上げて約束を取り付けて来たのだ。あの女狐は」

「もしかして、プリスタ様はメイがいてびっくりしていた態度でしたが、知っていて接触してきていたということですか?」

「だから女狐と言っておる。お主のことも知っておったぞ。竜殺しマジク。タンドーラ家でマイリオリーヌに力を貸す最高位の<剣術能力>者とな」

「……それは確かに女狐ですね。僕のことそこまで調べていて、あの態度ですか。すっかり騙されました」

「そんな人物が直接交渉にまでくるダンジョンの探求願いじゃ。ただの探求ではないだろうな。返事はまだなのだろう?」

「ああ、この後オリヴァーと会うことになっているが、トライセル殿下も大事な時期じゃからな。武神十四信仰宗家の纏め役レイモンド卿とは話が付いていても、次に力を持つと言われるレクスタ家が反旗したら大きな痛手となる。そこも含めて政治的な時期と我々のタイミングを突いてきているところも女狐らしい。ここは当然請け負うことになるだろうな。バーナデットの探求を後回しにこちらの準備となる事を言っておく」

「分かりました。僕はバーナデットの探求が延びるならその分、のんびり出来るだけなので嬉しい限りです」


 ガルドーとライオネスが目を丸くしてお互いを見合わせた。


「何を言っておる?お前さんが行くに決まっておろう?」

「なぜ、お前を今日呼んだと思っておるのだ?プリスタ殿がお前を指名して来たからに決まっておるだろう」

「はい?何で僕が指名されるんですか?ペラム家への依頼なんでしょう?」

「王都であれだけ派手な事をして来て、お前の名前は王国に知れ渡っておる。お前がバーナデットの遣い役ということもあってペラム家を通しているだけの話だ」

「だから自覚を持てと言っておるのじゃ」

「あの婆さんは初めから僕目的だったと言うことですか?」

「お前は聡いようで自分のこととなると鈍いな」

「レクスタ家の思惑がどこにあるにせよ、お前さんを指名して来たことで厄介ごとは確実と言うことじゃな。もちろんワシも行くが良いな?」


 ガルドーがライオネスに睨みを利かす。


「そう言う約束だ。好きにしろ。だがいつも言っていることだが自重しろよ?」

「それはマジクに言え」

「えーっと、僕の参加は既に決定の上で話を進めていますよね?」

「当たり前だろう。元はと言えば、お前自身が王都で大暴れしたのが原因じゃ。自分の後始末は自分で着けろ」

「ユースモア領って、領を一つ跨ぎますよね」

「跨ぐな。だが王都よりは近いぞ?指定されておるダンジョンがバルジニア領寄りじゃからな。ダンジョンまでは馬車で三日かからんじゃろうな」

「それでも遠いですよ。いつも言ってますけど、そんなに砦を留守に出来ませんて」

「だが今回は王都のように全員連れて行くことは出来ぬぞ。あれは王国から予算が出たから出来た力技に近いからな?」


 ライオネスからあの馬車の貸切使用料を聞いて驚愕した。


「では、どうしろと言うのです?」

「何とかしろ。それも含めて準備の時間を与えるためにお前を先に呼んだのだ。因みにスカーレットも忙しいから行けぬぞ」

「そんな無茶苦茶な~!」

「留守は責任を持って守る。警備の増員も約束しよう。カウタ様が残って頂けるならそれに越した事はないがな」


 どうにかしろと言われても出来ることと出来ない事がある。母とアキちゃんは今回連れていけないし、確かにそう言った面でもカウタほど母達の身を守れるものも居ない。ユースモア領のダンジョン探求も不安だが、母達を何日も放って置く方が断然心配だ。なのでカウタには残ってもらうこととして、今回は優雨美も連れて行かない。無駄な寄り道をする気はないのだ。観光も食べ歩きもする予定を入れない。

 後はメイをどうするかということになってくる。楓を連れて行くのだからメイは当然付いてくると言うだろう。メイは楓の事をよく気に掛けてるし、赤ん坊の扱いにも慣れている。だがいざと言う状況で楓ごとメイを責任持って守れるかと言うと、そう簡単には頷くことは出来ない。今回のように得体の知れない思惑が絡み付いているダンジョンでどんな事にも対処して見せると言うほど過信はしていなかった。


「楓を抱えて明らかに裏があるダンジョン探求をして来いと言うんですか?鬼としか言いようがないですよ!?」

「人が起こす裏ぐらいなら、お前なら平気で食い破るだろう?神が相手というわけではないのだから」

「そうは言ってますが、結果的に神様が関わってくる可能性があるじゃないですか」

「自分が動くと神様が関わってくるとは、言ってることが大物じゃのう」

「ガルドーさんは僕が望んでないことよくご存知じゃないですか!」

「ワシは望むところだから大歓迎だそ?」

「ガルドーもこう言っていることだし、神子なのだから神も無下なことはすまい」

「そんなことを言っていたとバーナデットに伝えますよ?」

「キサマ!バーナデットは関係ないだろう!?」

「なら我が子に誇れないようなことしないで下さい」

「お前さん容赦ないのう」

「僕も楓も命は惜しいので」

「何をして欲しいのだ?」

「どうにかして断ってもらうのが一番なのですが、無理ならばやはり情報でしょう。プリスタ様の思惑を探って下さい。思惑が分かれば要らぬ心配が減ります。連れて行かねばならない者達の安全が僕には一番の悩みの種なのですから」

「可能な限り善処するとしか言えぬぞ?」

「オリヴァー様を焚きつけることが出来るのはライオネス様が一番だと聞いております」

「そんな煽てには乗らぬが、やるだけのことはしよう」

「準備には入るとはして出発はいつになりそうじゃ?」

「三日後には立って貰わねばならない。日にちも指定なのだ」

「指定されている日付も含めて調査の方お願いしますよ?」

「わかっておる。お主結構しつこいな」

「かかっているものがものですから、そりゃしつこくもなりますよ」


 急に忙しくなった事と、母達への説明や反応を考えると気が重くなる一方だった。



次話 「お菓子禁止令」

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