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異世界Baby  作者: 本屋
63/112

63、王女たちの策謀


 王城の修練場には近衛聖騎士しかいないこともあって、いかにも貴族の子弟という感じの身綺麗な騎士達が修練を積んでいた。そこにトライセルとコーネリアが訪れれば軽い騒ぎにはなる。

 聖騎士たちの修練を中断させて双子との手合わせという形になったのだが、双子が日常的に修練を積んでいた場所ということもあって、手合わせの場は完全なアウェーだった。

 トライセルが妹のコーネリアの身近にいる事を許しているのだから、この双子はそれなりの実力者なのだろう。どこまでやっていいのかわからないのが、今回の一番の不安である。


「立会は私が引き受ける。マジクよ、二人の真骨頂はその連携にあるんだ。見てみたいだろ?」

「それは少し興味がありますが」

「トライセル殿下!この者一人相手に、我ら二人で戦えと申すのですか!?」

「そうだ、胸を借りて来い」


 トライセルが双子を焚きつけているのは確定した。双子としてはコーネリアの前で近衛聖騎士として恥ずかしくない戦いを見せたいのだろう。一対一の対等な正々堂々とした立会を見せるのが、双子の望みなのにトライセルが認めなかった。その怒りの全部が僕に集中する流れだ。

 トライセルは僕に何をさせたいのか。双子の鼻をへし折ることか。トライセルのことだそれだけではない気がする。それがわからないと双子への対応も迷ってしまう。トライセルが変な企みを持っていたらと思うと双子に対してどういった結末に持っていくかで、自分に降りかかる面倒ごとが変わってくるのだ。


「立会をする上で、武器は真剣とする、マジクはこれを使え」


 トライセルが剣を投げて寄越した。王城の修練場に常設されている剣のようで、無駄な飾りも何もないシンプルな剣だった。対して双子は帯剣している自らの獲物を使うらしい。細身の剣姿からスピード重視のスタイルで攻めてくるのを連想する。


「はじめ!」

 

基本的には受けに徹する。双子は正面に並んで対峙してきた。一人を相手にするなら正面と背後から挟み込むのが常套手段だが、そうはして来ないようだ。


 騎士のプライドかな………


 まだ二人で戦うことに納得していないようで、一人だけが撃ち込んでくる。名前を紹介をしてもらったが瓜二つの双子だけあって見分けがつかないので双子のAとBとした。双子Aは基本通りの真っ直ぐな剣で躱すのも楽だが、取り敢えず受けて見る。様子見のようで軽い剣撃。双子Aは余裕を持って受けられたことに驚いているようだ。驚き具合からしてトライセルの僕に対しての評価を疑っていたのだろう。トライセルが側に置いているからにはかなり有望なのだろうし、トライセルとコーネリアとの距離感を見ても、王族兄妹に忠実に見える。それでも僕のことに関する情報を疑っているのは、双子から見る僕の印象が、よっぽど悪いのかもしれない。

 双子Aのギアが一つ上がり、剣速と重さが先程とは別物になる。それでも楽々と受けられたことに、驚愕の顔をした。次第に激しい連撃となってきて、受ければ受けるほどに双子Aの表情が焦りのものとなる。激しくても素直な実直の剣に単調になってきた。双子A越しに、スカーレットに抱かれた楓が布剣を振り回して興奮しているのが見える。


「よそ見するというのか!舐めた真似を!カルロ!!」

 

 双子Aの呼びかけに応じて双子Bが加わる。双子による剣撃になった途端戦い方も別物になった。変則的に受けた瞬間の隙を狙ってくるようになる。トライセルが見せたかった双子の力はこれかと納得がいく。受け流しながら躱していると、何を仕掛けて来そうな雰囲気を感じ取った。双子のアイコンタクトが活発になり、二人の姿が寸分たがわずに重なった。一人を完全に見失う。一人を見失ったまま繰り出された攻撃に対応することになった。気が取られたことで生まれた隙を的確に突いてくる攻撃をギリギリで躱すと、双子Aが横に倒した頭の場所から、別の突きが飛び出してきた。予想出来なかった攻撃に思わず力が入ってしまった。条件反射的に突きを払う剣に力が伝わり、払った双子Bの剣を払うだけに留まらず切断してしまう。続けて一閃してきた双子Aの剣も、開き直って勢いに任せて切断して対処した。双子は二人の共、切断された剣を見つめて呆然とする。

 修練場が沈黙に支配された。


「そこまで!」


 トライセルが思い出したように終了の声を出す。


「初見であれに対処するか、予想以上に凄まじいな。それも剣を剣で切ったのか?とんでもない技だな」

「へぇ~、そんなに凄いの?お兄様?」

「馬鹿な!切れるはずがない!それも修練場の剣で我らの剣が!何か仕掛けがある筈だ!」


 双子が二人して、睨み付けてくる。


「マジク、どうなんだ?」


 トライセルが聞いてきた。


「言えぬと言うわけか………」


 何を言っても反感を買いそうだったので黙っていたが、トライセルは僕が双子の剣を斬った仕掛けを教えたくない勘違いしたようだ。本当は種も仕掛けもないのだが、このまま勘違いさせてしまおうと開き直る。 

 そのまま沈黙を貫くと、勘違いしてたはずのトライセルが疑うような目線を向けて来る。どうも僕は顔に出ていたらしい。怪しむのも当然だが、ここら辺で勘弁して欲しかった。


「まあ良い。お前達もこれでわかっただろう?マジクはお前達よりも強い。これが剣王ガルドーも認めたという腕の持ち主だ」


「二人が簡単に(・・・)負けると思わなかったわ。マジクというのね。覚えたわ」


 コーネリアの言葉に双子が悔しそうに歯を食いしばっている。コーネリアの反応を見てからのトライセルの満足気な表情と双子の反応に、嫌な予感を感じない方がおかしい。


 トライセルとコーネリア、双子と共に修練場を後にする。

 スカーレットから楓を受け取り、連れて来られたのは先ほどよりも幾分か狭いサロンだった。


「ここは、母上と私と妹の専用サロンだ。コーネリア、私はマジクと話がある」

「………わかりましたわ。スカーレットにバーナデット、私達もお話をしましょう」


 コーネリアが一番手前のテーブルへ座るようにスカーレットとバーナデッを促す。それを見てトライセルは一番奥のテーブルまで歩み僕に座るように言った。僕は薦められるままに背負っていた楓を下ろして席に着くと膝の上楓を座らせた。楓はまだ少し興奮しているようで、布剣を僕の胸の辺りにペシペシして来る。


「ダンジョンの神の神子は楓といったか、見た所は普通の赤ん坊と変わらないな」

「そうですね、僕との距離を保ちたいという所以外は変わらないようです」

「今朝、ダンジョンの神の巫女姫と一悶着あったそうだね?」


 メイって姫とか呼ばれる立場の子だったのか


「その巫女姫と呼ばれる方がメイと呼ばれる少女ならば、間違いないです」

「そうだ、メイ様だ」


 王族でも、巫女姫と呼ばれるような人物は様付けになるのか………


「報告はオリヴァー様からですか?」

「そうだ。至急と言うことで昼前に報告された。巫女姫様のことはまず置いておこう」


 トライセルの目線が僕の額の辺りに向けられる。


「本当にそこに、神に認められたのは印があるのかい?」

「僕にも見えないので実感はないです。なにせ王都に来てメイ様に見つかるまで忘れていたくらいですから」

「神々の塔の試練を乗り越えし者に与えられし紋様か………私が訪問中のピークトリクトで、君がそのようなものを手にしていたとは」

「僕自身が自覚がないのもありますが、これに関しては報告をしなかったのは、神々の塔への関心を持って欲しくなかったことにあります」

「その意図は、どこに有るのだね?」

「神々の塔の存在が知られた今、王国は神々の塔への調査をしたいと思わずにいられますか?」

「確かに調査をするべきだという意見が上がることだろう」

「通る道は竜族の領域、それも神々の塔への道を守り、向かうものを試すために竜族はあの地に番人として神々に託されているのです。そこに向かうことがどういった意味を持つかは、トライセル殿下にも分かると思います」

「君は神々の塔に辿り着くだけでも多くの犠牲を払っうと言いたいのだな?」

「そして、多くの犠牲とは人だけでは収まりません」

「悪戯に竜族を刺激して、今までの共存関係を捨てさることにも繋がるか」

「勘違いしてもらいたくないのは、今までの共存関係というそれは人間側の勝手な思い込みで、竜族にとって人間は下等な生物で、いつどのような事で竜族の気が変わってもおかしくないという事です」

「そうか君は、これだけの危険があるにも関わらず、馬鹿な行為をするかも知れない者たちが現れる可能性を危惧しているのだな?」

「一つ忠告をしておきますが、竜族への刺激を最小限に止めようと、少数精鋭の調査隊を組めば良いという意見が出るかも知れませんが、それは正解でもあり不正解でもあります。今回の僕は竜族の助けもあって裏ルートで塔に辿り着きました。実際竜族が神々の塔に挑む者に向ける試練がどれほどのものかは知らないのです。僕がもたらした結果は二度と真似の出来ない参考にしてはならないものであることは周知して貰いたいのです。これらの事実が報告で上がり、多くの人の目と耳に届くことは避けられないでしょう。ですが、くれぐれも無謀な挑戦はしないように注意喚起は怠らないようお願いします」

「君の伝えたいことは分かった。今後のことに関しては、私が責任を持って対処しよう」


 トライセルは顎に手をあてて、今後の対応などの思案をしているのだろう。少し時間を空けようと、お茶に口を付けて楓をかまうことにする。暫くしてトライセルもお茶に手をつけて、視線を向けて来た。


「まだ君は何か言いたそうだな?」

「先ほどの手合わせは何を企んでおいでですか?」

「なぜそう思う?」

「あれだけ誘導しておいてよく言います」

「そんなに分かりやすかったか?」

「そもそも隠す気はなかっのでは?」

「そのとおりだ。妹が君を気に入れば、君には話すつもりだったからな」

「それでコーネリア殿下に僕を気に入れさせて、何をさせるつもりですか?」

「私が直接何かをさせる訳じゃない。妹が君を選んである命令を下すだろう」

「それは何ですか?」

「他の王女との賭けの対決に、 コーネリアが選んだ者として挑むことだ」

「何ですかそれ?」

「ことは他の王女からの出た申し出を妹が受けてしまったのが発端だ。それぞれの王女が選んだ強者を戦わせて、勝った王女が選ぶ王子の陣営に協力するというものだ」

「継承権争いの一端ですか………コーネリア殿下が僕を指名して来た場合は………」

「無論、王女の命令に君には断ることが出来ない」

「だと思いました………」

「君も知っていると思うが王女には継承権がない。だが味方にすることで継承権の争いには有利になることも多い。それを踏まえた第二妃の王女が企てたのが今回の賭けの対決だ。よほど自信のあるのだろう。三人の王女を一つにまとめにして、継承権四位の兄に協力させようという腹だ。見事に妹は第二妃の王女の企てに乗ってしまった訳さ。今回表向きでは王女同士内だけの賭けの対決で、王子側は知らないことになっている。だから君という強者を妹の目に止まるように、私が裏で動いた」

「コーネリア殿下が元々選んでいたのは、先ほど僕が相手をしたお二方のどちらかという事ですか」

「そうだ。妹はこちら方面は、まるっきし疎い。身近な近衛を戦わせようとしたくらいだ。今回のことも、遊びの感覚程度で軽く受けてしまったようだ」

「それで、第二妃の王女が出してくる自信の強者とは?」

「それがね、君と同じ竜殺しの英雄様さ」


 王国に竜殺しの栄誉を手にした者は現在百人近くいるらい。その半分は一線から退いており、更にその半分は、竜殺しの栄誉と引き換えに負った怪我でリタイアしている。残った二十五人ほどの中には、リリアやバーナデットのように竜を倒すにあたってサポートメンバーだった者もおり、実質竜と正面から対峙した現役の竜殺しは十人もいないとのことだ。その中の一人が第二妃の王女が出してくる強者となるようで、もしかしたら優雨美のレーダーに引っかかった何人かの内の一人かも知れない。


「予想では、両断のダンバルガ、神速のピュール、白騎士サルバあたりが出て来ると読んでいる」


 なんか恥ずかしい二つ名付きの名前が出てきた。


「もう一人の王女様がいらっしゃるのですよね?」

「第一妃王女の方は情報不足でまだ誰を用意しているかは分からない」

「そうですか………肝心の日時と対決方法は?」

「二日後の午後となる。ルールは敗北宣言ありの実践方式と思われ、君の予定の方は私の方で調整しよう」

「ということは、真剣と魔法の使用もありですか………」

「そうなるだろう。何でもありなら、君の独壇場と見ているが?」

「そんなに簡単な話ではないと思いますが…」

「君はそれだけの力を持ちながら慎重派なようだね。私も巻き込んでおいて何だが、協力は全力を持って約束する」

「では僕の方から一つお願いがあります」

「何でも言ってくれ」

「剣を一振り都合して頂けませんか?」

「それは使わないのかい?」


 トライセルが僕の腕輪を差してくる。このこともトライセルには話が伝わっているようだ。


「これは、出来るだけ対人戦では使いたくありません」

「それは楽しみにしていたのに残念だ」

「対決の場は見れないのでは?」

「そこは何とかするつもりさ」


 ここまで情報を把握しているトライセルならば、対決の状況も気になるのは当然だろう。


「見つかった時のリスクが高い気がしますが」

「知らぬは我が妹ぐらいで、第一妃の王女も第二妃の王女も、裏では兄達が動いてるものさ。元々第二妃の王子と王女による策謀なのだからね」

「そうなると第一妃の王子様と王女様は、知っていて今回の話に乗ってきたという訳ですか?」

「そういうことだ。だから第一妃の王女陣営が用意してくる強者もそれなりの者を用意してくることが予想出来る」

「もしかして、トライセル殿下の留守中に巡らされた策謀ですか?」

「そうだ、だが彼等の甘い所は私の留守中に全てを終わらせていなかったことだね。彼等にしてみれば、私が戻ったどころで日時もないから何も出来ないと踏んでいたんだろう。まさか私が竜殺しを連れて来るとは思ってもみなかっただろう」

「先ほどの謁見では、他の王子様方も全員あの場におられたのですよね?」

「勿論いたとも。そして君を見て油断したはずさ。君の凄いところは、その力を感じさせない所だからね」


 まあ、ある一定の方々には、わかるみたいですが。


「それにしても二日後ですか。出来れば相手の情報を出来るだけ詳細に知りたいですね」

「本当に君は慎重だね。それともそこが君の強さの根本にあるのかな?」


 いえ思い掛けないことされると、どうしても加減が出来なくなる時があるんです


「なんにせよ、協力すると言った以上は相手方の調査は進めさせてもらうよ」

「よろしくお願いします。それにしてもコーネリア殿下は、よくこの話に乗りましたね?怪しいなんてものではないですよね?」

「そこが、あの二人の王女のしたたかな所さ。今日に至るまで王女三人の中の良さは、王都で誰もが知る話しでね。本当に仲が良いと思ってるのは妹ぐらいで後の二人は狡猾な女狐なのだよ」

「トライセル殿下はそれをコーネリア王殿下に伝えていなかったのですか?」

「あの二人が、妹に害することがなければと放置をしていた。妹は二人を慕ってるしね。継承権争いで本性を出してきたが、今回はやり過ぎている。今回の結末次第で妹は傷つくことだろう。そうなった場合に私は妹の為にもなりふり構わなくなりそうだよ」


 トライセルから怒りのオーラが漂って来そうなほどの、負の感情を感じ取れた。




次話 「報告書」

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