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異世界Baby  作者: 本屋
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4、大事に選ぼう初期設定

 目の前に浮かんでいた透明なウインドウの正体がはっきりとした。

 まごう事なき初期設定画面そのもの。

 十四個並ぶ小ウインドウの中の一番上に書かれていたのは「以下を選択して下さい」の一文。

 そして予想通り初めから灰色に染まった小ウインドウは設定済みの枠で、選択されていたのは<前世の記憶を引き継ぐ>だった。

 これで僕は生まれ変わり、前世の記憶を有したのだと、一つもやもやしていたものがハッキリとした。

 そして見事にウインドウ内の全ての表記を日本語にしてくれた立役者<自動翻訳>も灰色の枠の中で選択されており、三つ目の決定設定として選ばれている。

 だが嬉しさ反面、ピンクの悪魔にしてやられた二つ目の設定選択に表示された<???????>に僕は頭を悩ませる。


 人生を左右するかも知れない大事な選択肢なのに、何だよこれ。


 <自動翻訳>といえども全てを翻訳してくれるとは限らないのかもしれないもしれない。それとも自動で翻訳されているはずにも関わらず<???????>の表示という事は意図的に隠されているということも考えられる。

 だが、いまは深く考えている暇はない。読めるようになった残り十一個の他の選択肢から、最善な能力をを得てピンクの悪魔より優位に立つのが、最優先事項だった。

 取り敢えず、先ほど先送りにした小ウインドウのスクロールを確認してみる。

 一番上にあるのが<力持ち>だった。

 ふと、すやすや眠るピンクの悪魔に目線がいってしまう。

 一番上にあることもあって、そのまま選択決定してしまう可能性は高いだろう。人のことより、今は自分のことだと上から順に確認していく。


 <力持ち>

 <手先が器用>

 <結構足が速い>

 <力持ち>

 <ちょとS>

 <頭の回転が少し速い>

 <ちょっと我慢強い>

 <力持ち>

 <力持ち>

 <視力がよい>

 <ちょとS>

 <表現力豊か>


 曖昧で方向性もバラバラな選択肢が並んでいた。

 幾つか同じものが被っていたりしているので選択肢の数が多くなるのも頷ける。

 曖昧なのはニュアンスではわかるのだか、言葉通り素直に受け取って良いのか勘ぐってしまう。考える時間が欲しかったが、時間惜しい。またも、この選択枠を先送りにすることにした。

 残る小ウインドウは十個。

 何か一つ、今の現状を打開できるだけの何かを見つけられれば良いのだ。

 次の小ウインドウに手をかけてスクロールを出現させる。

 この小ウインドウもスクロールバーから見ると、結構な数の選択肢が用意されることを確認する。そして何の選択項目が判断する材料となる一番上の選択肢<剣術能力1>が、この小ウインドウの中身を物語る。


 戦闘能力を選ぶ小ウインドウ?


 <剣術能力1>

 <剣術能力1>

 <剣術能力1>

 <棍術能力1>

 <剣術能力1>

 <槍術能力1>

 <剣術能力1>

 <短剣術能力1>

 <投擲能力1>


 ………これは戦うための能力?

 

 ならば、僕の生まれたこの世界は………


 戦闘能力が求められるような世界。それも意味も分からない赤ん坊が選ぶ可能性の高い上部の表示には、低い能力が並ぶ無慈悲な世界。僕は、そんな世界に生まれ変わったのかと、新たな不安に(さいな)まれる。

生まれ変わったことで、新しい人生を横臥出来るのではと期待に胸を躍らせていたが、思った以上に血生臭いものになりそうだと思いつつも、スクロールを進めた。


 <剣術能力1>

 <剣術能力4>

 <弓術能力2>

 <斧術能力3>

 <剣術能力5>

 <剣術能力2>

 <格闘術能力2>

 <剣術能力1>

 <刀術能力1>


 それにしても剣術の能力率高い。剣術能力を取らせたい意図的なものを感じてしまう。

スクロールを下げ続けていると次第に数字の高い能力が混ざってきた。高い能力はスクロール下の方にあるのは間違い無いようだ。


 <剣術能力9>

 <剣術能力2>

 <格闘術能力4>

 <剣術能力1>

 <体術能力1>

 <剣術能力1+α>

 <刀術能力3>


 ………【+α】?………意味のわからないものが出てきた


 スクロールを最下まで確認したが数字の最大は【9】で、【+】付きは【+α】【+β】【+Ω】の三つを見つけた。【+】ということで、能力に何かしらの付加がされているのかも知れないが、何が付加されているかまでは分からない。

 この小ウインドウの戦闘能力は、非力な赤ん坊である僕が決めるには、まだ早いと他の小ウインドウに移ることにする。


 次の選択肢は何かな?


 <なし>

 <なし>

 <なし>

 <なし>

 <なし>

 <なし>


 スクロールし続けても<なし>しか表示されない


「あひょかっ!」


 思わず感情的になってしまい声が出てしまった。僕は慌てて口を塞ぐ。

 舌足らずで可愛らしい幼い声だが言葉が僕の口から発せられた。


 そうか!<自動翻訳>か!


 <???????>を翻訳できていないことで、<自動翻訳>の効果は、大したことがないものと捉えてしまったが、声に出す赤ん坊の言葉まで自動で翻訳されるのなら、考えを改めなければならない。便利な反面、意図せぬところで自動に翻訳されてしまっている弊害が生まれていることにも、留意しなければならなくなったからだ。

 適齢になるまで、喋れないフリをする必要が出たことに肩を落とす。人前で喋ってしまった時の事を考えると恐怖でしかない。化け物扱いされかねない失態を犯した自分を想定した最悪のシミレーションをして置く必要性にまで迫られてしまった。

 生き抜く道を広げるどころか、この先の生き方を狭めている可能性に思い当たり、招いた結果に恐怖する。追い詰められているとはいっても、選んだ能力の想定していなかった効果の高さに、強大な何かに窘められているような感覚を感じに血の気が引いていく。怖気づきそうな気持ちに泣きたくなるのを必死に堪えて、不安の元凶になる考えを一切頭の中から追い出した。今行動するのに必要なのは、ネガティブな思考でなくポジティブな思考である。自らを無理やり奮い立だして、連想してしまった考えは後回にした。いまの優先事項はこれではない。

 思わず声を出してしまった事を思い出し、チラリと眠れるピンクの悪魔を見たが、変化は無く天使の寝顔である。

 ほっと胸をなで下ろすと、<なし>だらけで面倒臭いが一応確認しないわけも行かないので、スクロールを見て行く。


 <なし>

 <なし>

 <なし>

 <なし>

 <なし>

 <なし>

 <なし>

 <なし>

 <浮遊能力>

 <なし>


 ………何か出た………これは特殊能力?


 酷い仕様だった。

 意味もわからない赤ん坊がスクロールを操作して<なし>の中に埋もれる特殊能力を引くのは奇跡に近い。<なし>の中から違うものに興味を持つ可能性もあるだろうが、文字も読めない赤ん坊に違いが分かるか見当もつかない。自分が<前世の記憶を引き継ぐ>を引き当てた事は取り敢えずの棚上げしても、この中から特殊能力を選択する可能性は、ほぼ無いほどの微々たるものではないだろうか。

 能力の奇跡的な選択の可能性に一瞬放心してしまいそうになるが、この<浮遊能力>に意識を戻す。<浮遊能力>なら、ピンクの悪魔からも逃げれそうだけど、寝ている間に捕まったら終わりなのではと考えが及び取り敢えずの保留とした。


 <なし>

 <なし>

 <なし>

 <なし>

 <なし>

 <なし>

 <変身能力>

 <なし>

 <なし>


 変身しても意味が無い。そもそも変身とかアバウト過ぎて解釈の幅が広く、不安過ぎだ。


 <なし>

 <なし>

 <なし>

 <なし>

 <なし>

 <なし>

 <軟化能力>


 タコとかスライムを思い浮かべる。人目を忍んで使わないと、化物扱いされそうで怖い。


 <なし>

 <なし>

 <なし>

 <なし>

 <なし>

 <なし>

 <神化能力>

 <なし>


 能力名だけみると、神様になれる能力かもしれない。だが身にあまる能力は身を滅ぼすと言うので、<神化能力>だけは絶対選択しない方向でいくことにする。


 この後も、<不老不死><透過能力><吸血能力><超回復><千里眼><座標認識><操作能力><絶対鑑定>などの強力な能力のラインナップが見られたが、どれもいまの現状を打開できる、これというものがない。不老不死や超回復ならば、ピンクの悪魔に殺られずに生き残ることは出来そうだが、痛みや苦しさは付いて回ると思うので取り敢えず却下だ。既に選んだものと、これから選ぶものの相性や組み合わせも本来検討した方が良いと思われるが、とにかく今は眠れるピンクが悪魔化する前に、自衛の手段を得なければならないのだ。


 そして………

 <なし>

 <毒耐性1>

 <なし>

 <なし>

 <なし>

 <なし>


 ん?これは?常時発動タイプの能力枠か?


 <睡眠耐性1><麻痺耐性1><石化耐性1><暗闇耐性1><腐耐性1><即死耐性1><危機察知1><混乱耐性1>などを半ばまでスクロールして確認する。<危機察知1>が常時発動している能力ならば、寝ている間も危険を知らせてくれるのではないか。

 一番下まで確認すると途中で<危機察知3>を見つけたので、第一候補とする。他にも<即死耐性4>や<ウイルス耐性5>などが下の方にあり、本来ならば魅力的な能力だが、後ろ髪を引かれながらも諦める。寝込みさえ襲われなければ、後は力で上回るものを探せば良い。

 取り敢えず選択はせずに他の項目は無いかと確認を続けることにした。




次話 「必要に迫られて」

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