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(8)従魔召喚

 イレーネ先輩たちは古代魔法の大きな魔法陣を広げ魔法陣の外側に置いたろうそくに火を灯す。


「まずは魔法陣の中央の台座に卵を置いて、古代の呪文を唱え魔力を卵に注ぎます。クロノ君は……そうね、『世界の理よ、その貌を我の前に現し給え』と唱えてくださいね」


 イレーネ先輩がにっこりと告げる。これって、詠唱不要スキルは隠しておけってことなのかな。

 ……会長に知られたら面倒くさくなるかも?

 おとなしく先輩の指示に従うことにしよう。

 首をぶんぶんと縦に振る俺に満足したのかイレーネ先輩が離れた。その直後ワルドがつぶやく。


「……イレーネ先輩って、笑顔なのになんか迫力あるよな」


 ほんと、俺もそう思う。

 こっそり苦笑していると魔導研究会のメンバーが準備を終え、呪文を唱え始めた。


「『大いなる叡智よ、我にその力を与え給え』」


 一番手は会長か。卵の周囲に魔力が集まり、卵にヒビが入る。カタカタと揺れる卵から殻が剥がれた。


 ピイィィィッ!!


 生まれたのは炎のような魔力を纏った赤い鳥だった。ラビットバードの卵なのに生まれるものは全く違う魔物だったことに驚いた。


「卵はどんな魔物のものでも、孵る魔物は召喚したモノに依存するのよ」


 にっこりと微笑んでイレーネ先輩は卵を手に魔法陣へ向かう。


「『天の御使いよ、その力を示し給え』」


 先輩は会長とはまた違う呪文を歌うように唱える。

 詠唱不要で魔法を使う俺には少し気恥ずかしい気もするけど、仕方ないので先輩の言うとおりにしよう。


 トトッ!トトトトッ!!


 そんなことを考えているうちに先輩の卵から蜥蜴のような魔物が孵り鳴き声をあげる。

 蜥蜴は勢いよくイレーネ先輩の肩に飛び乗り頰ずりをし始めた。・・・すごい絵面だけど、先輩は満足そうだ。


「さあ、次はクロノ君の番だよ」


 会長に促され俺は卵を魔法陣の台座に置く。

 ええと、呪文を唱えて魔力を注ぐんだよな。どのくらい注ぐんだ?よくわからないけど、現代の省エネ魔法と違って古代の魔法はやたら魔力消費が高いというし、魔力は多目が良さそうだ。


「『世界の理よ、その貌を我の前に現し給え』」


 魔力が卵に集まり、ヒビが入る。

 さあ世界の理とやらがどんな姿で俺の従魔になるのか・・・。

 期待して見ていると卵から青と金のオッドアイの猫が現れた。

 ニャンとか鳴くかと思ったが鳴きもせず俺を凝視している。

 猫は俺から視線を外すと台座から飛び降り走り出してしまう。追いかけようとしたが猫のほうが早く姿を見失ってしまった。


「え……どうしよ。逃げちゃったけど」

「従魔が逃げるとは考えられない。クロノ君のところに戻ってくるだろう」


 呆然とする俺に会長が冷静に返す。


「うーん、でも一応洞窟の外探しに行ってみます」

「俺も手伝う。早く見つけてやらないとあの綺麗な毛並みが汚れるかもしれないし、肉球が傷ついてもいけないし」


 え。ワルド、猫派?初耳なんだけど。

 まさかのワルドの猫好き発言に若干ひいてしまう。

 とりあえず洞窟の外に向かう。


「……従魔に逃げられるなんて、不適格なんじゃないか」


 去り際にぼそりと誰かが言った。魔導研究会に正式加入していないのに一大イベントに参加した俺を面白く思わないメンバーもいるのだろう。

 もやもやした気持ちが燻るが今はまず猫だ。


 洞窟を出たところで魔力の気配を魔法で追う。丘の上にやたらと大きな魔力を感じて空間転移してみる。


「来たかクロノ・エンデ」


 猫が流暢な人の言葉を発した。

 思わず絶句しているとお構いなしに猫は続けた。


「我が(あるじ)、クロノ・エンデ。我は世界の理を統べる者だ。この身朽ちるまで主の力になろう」

「な……」

「なにこの猫ちゃんんんんん喋ったあああああああ」


 ワルドの絶叫が耳を劈く。猫も嫌そうに片側のヒゲをピクリと動かした。


「猫のような貌であって、我は猫ではない」

「ワルド、落ち着け」

「クロ!従魔が白もふの猫ちゃんとか大当たりだな!かわいいいいいっっっ」


 ワルドが悶えてうざ・・・騒がしいので放置しておくことにしよう。


「えっと、名前とかあるの?」

「我に名はない。(あるじ)の好きなように呼ぶといい」


 猫の毛長の尻尾がゆったりと揺れる。


「じゃあ今から君の名前はハトゥールだ。よろしく」


 古代魔法で生まれた猫もどきに古代語で「猫」と名付けるのは安直だろうか。

 ハトゥールは尻尾の付け根をピクピクさせたかと思うと宝石のように輝く目を細めてゴロゴロと小さく喉を鳴らした。どうやら嬉しいらしい。


「ハーちゃん!俺ワルド!ワルドっていうから!よろしくねっっっ」


 テンションの高いワルドにハトゥールはイラついたのか尻尾をパシパシと地面に叩きつけた。

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