(2)思い出した自分の最期
7歳の頃だったか、既視感だらけの感覚以外のものを感じるようになった。
それは俺の未来。
断片的に、未来の自分の記憶や意識が幼い俺の中に湧き出る。
最期の時の記憶も。
――いつものように兵団の仲間と魔獣討伐を終え、街へ戻る途中、兵団の1人が話しかけてきた。
「なあ、クロノ! おまえまた動きが良くなったんじゃないか?」
話しかけてきたのは上司で、褒められたことに俺は喜んだ。
「本当ですか隊長! 実は鍛錬していた剣技のレベルが上がったんです」
「おまえは真面目だからなあ、遊びもせずに努力している成果だな」
ありがとうございます!と立ち止まり、隊長に最敬礼をする。
顔を上げた瞬間、隊長の首が、飛んだ。
何が起きたのか理解できずに反応が遅れたせいだろう、俺の腹に風穴が空いた。息ができない。肺が思うように動かない。
遅れて周りの兵団仲間の悲鳴が聞こえた。その場に崩れ落ちながら兵団仲間が魔獣に食われている。
……ああ、本当は俺だって鍛錬以外のこともしたかった。それを捨ててまで剣技を磨いても、所詮兵団の1兵士でしかない、脆弱さが悔しい。近くで空気の漏れる音がする。俺か。
仲間も助けられず、ただ魔獣の餌になる無力さを感じながら意識がなくなっていった。
それが、俺の最期。
自分のことじゃなかったら7歳児のトラウマになりかねないと思う。
魔獣に食われながら絶望の中で死んでいくとか、冗談じゃない。
1人分の生涯の記憶のおかげで7歳児は達観していた。
「今度は笑って死ねる人生にしよう」