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(15)神官

「待て。そのペットを連れてこっちへ来い」


 入国審査を簡単に通過……したと思ったのに呼び止められた。何故!?


「ただの猫ではないな。体内を高い魔力が巡っている」

「神官殿をお連れしろ。危険がないか見てもらわねば」

「おまえたち、しばらくここでおとなしくしているように」


 兵士に取り囲まれ応接室のような部屋に入れられた。扉には鍵をかけられている。どうやら閉じ込められたようだ。しばらくっていつまでだよ・・・


「……うーん、閉じ込められたけど、あんまり意味はないんだよね」

(あるじ)は空間転移できるからな」

「でも閉じ込めたはずの俺たちがいなくなってたら大騒ぎになるだろうな」

「そうなったら不要に警戒されるだろうし、おとなしくここにいるのが無難か」


 亜空間収納から果実をいくつか取り出し、かじりながらハトゥールに魔力水を与える。


 カチャ


 扉が開いた。予想していたより早く神官が来たようだ。


「初めまして、中央教会テ・ネリエ帝都支部の神官でクウォーレと申します」


 部屋に入ってきて穏やかに微笑んだのは獣人ではなくヒトの女性だった。


「では鑑定を行いますので兵士の皆さんはご退室ください」

「では神官殿、施錠しますから終わられたらこの笛を吹いてください。神官殿には聞こえないでしょうが我らに聞こえる音が出ます」


 神官に笛を渡し兵士が退室する。神官は振り返るとハトゥールに向かって深々と頭を下げた。


「先日西より神獣様が現れるとの預言があり、帝都支部よりこの街へ参りました。兵士の無礼をお許しください」

「ほう、我の出現を預言する者がいたか。我を神獣と断定して良いのか?」


 思わず俺は目を見開いた。ハトゥールは基本的に俺とワルド以外の人間がいるところで喋らない。隣を見るとワルドが同じように驚いている。


「御身の体中を巡る魔力が何よりの証でございます。私が教会で研究しております歴史書にも過去の神獣様出現についての記録がございます。いずれの記録も地上の生物には存在し得ない魔力量を宿し、遥かなる叡智で我らの言葉を用いられると記されております。神獣様がこの街へおいでになった目的をお尋ねしてもよろしいでしょうか」

「我はそこにいる我が(あるじ)クロノ・エンデの従魔として貌を成した。(あるじ)のレベルを上げるためテ・ネリエ帝国に存在する無数のダンジョンへ向かう途中だ」


 ハトゥールの言葉に神官がこちらに顔を向ける。神官は俺と目が合うなりもともと白い顔色を更にうしなった。


「神獣様を従魔にするなんて……あ、貴方何者ですか?ただのヒトじゃないですよね!?」

「ハトゥールは俺の従魔ですよ。あと俺はただのヒトです」


 いきなりヒトじゃないとは失礼な発言だと思うが、教会が信仰対象のひとつにとらえている神獣が従魔なんて聞いたら神官としては驚くのも仕方ないのかもしれない。


「ハトゥール、とは……」

(あるじ)が名付けた我の名だ」

「俺はハーちゃんって呼んでるけど」

「ハーちゃん!?」


 神官はフラフラと頭を抱える。大丈夫かこの人。


「貴方、クロノ・エンデさん!神獣様を召喚するほどの魔力を持つ人間なんて何年も聞いたことありませんよ!どちらからいらしたんですか!?」


 顔色悪くしたまま神官が俺に詰め寄ってくる。どちらからって、ファムタール王国の冒険者ギルド付属学舎からですけど。そう答えても納得がいかない顔で神官は思案した後、何かを決意したようにハトゥールに向き直った。


「神獣様」

「我が名はハトゥールだ」

「ハーちゃんはクロにつけてもらった名前気に入ってるんだよねー」

「ハーちゃん様」

「何故そのような呼び方になるのか甚だ疑問だが、何だ」


 神官がハトゥールをハーちゃん様と呼んで嬉しそうに頷くワルド。ワルドに片頰をピクリと歪ませてため息をつくハトゥール。緊張感のない俺たちとは対照的に緊張した面持ちで神官が口を開いた。


「私は中央教会よりハーちゃん様のお世話をするよう言いつかりました!どうか同行させてくださいっ」

閲覧ありがとうございます。未熟な点が多く恐縮ですが、これからも読んでいただけたら幸いです。

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