(1)決意
――コレ、知ってる。
物心ついた頃、何をしても既視感を感じていた。
間違いなく初めて出会う相手、もの、起きる出来事の何もかもが自分にとっては2回目だった。
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「未来が見えるって……何? クロ、未来予知ができるの?」
昼食で賑わう食堂の一角で友人と並んで食事をとる。
俺の名前はクロノ。16歳、学生だ。
パンを齧りながら俺に話しかけてくるのはワルド。
「すごいじゃん、王宮勤務できるんじゃね?」
ワルドの言葉を聞きながら俺は味わっていた野菜と肉を飲み込む。
「それがさ、自分とその周りのことしかわからないから就職の役には立たないんだよ・・・って、信じてないだろ」
驚く様子もない友人の反応は俺の想定内のものだった。
「そんなことないって! どんな未来が見えてるんだ?」
たいして興味があるようには見えないが、多少は気になったのか。
「このままこの冒険者ギルド付属学舎を卒業して兵団試験に合格後下級兵士になって、数年間魔獣討伐に明け暮れて、結婚の予定もないまま油断したところを魔獣に殺されて俺の短い人生終了」
「味気ねえな」
「だろ」
自分だって、そんな味気のない未来をトレースする気はさらさらない。
「そうならないよう、身を守れる力をつけて、就職も兵団試験は受けずに冒険者になる」
俺たちのような一般市民が学舎を卒業しても兵団に入るか、冒険者になるか、どこかの大店の見習いになるくらいしか就職先はない。この年齢の子どもを食わせる余裕は田舎にはないからだ。
「冒険者かあ。……なら俺とパーティ組んでバイト行かねえ?普通なら成人前のギルド登録はできないけど、俺たちは冒険者ギルド付属学舎の学生は例外で登録が許可されてるんだし」
「おお、今度の週末にでも登録に行こうと思ってたんだ。心強いよ」
ワルドとパーティを組んでバイトをする、またあらかじめ知っていた未来をトレースしてしまったがこのくらいの日常はあの最期につながるものでもないだろう。
俺は皿の残りを口に流し入れ講義に向かうべく席を立った。