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王子の悩み ※カイザー視点

カイザー視点です。

初めてリリアンと会った時、俺は一目見て心を奪われた。

パッチリとした二重でアメジストのような瞳の目、ロングストレートで毛先だけ巻いてある艶やかな赤い髪、くびれていて手足が細く、華奢な身体をしながらも完璧なプロポーション。

どこを取っても美少女としか見えなかった。

俺も最初は、美少女が婚約者ということを喜んだ。

淡い恋心でさえも既にあった。

しかしリリアンは、美しい容姿を台無しにするほどに性格が悪かった。

俺をジッと見てきたかと思えば、「この人が私の婚約者?……まぁまぁね。」なんて言ってきた。

俺は一瞬固まってしまったが、彼女から発せられた言葉だと分かった時、激しい怒りを感じると同時に淡い恋心も跡形もなく消え去った。

しかしリリアンはそれ以来、常に俺に対してベタベタと接して来るようになった。

相変わらずの傲慢っぷりで、一国の王子である俺に対してまさかの下僕扱い。

俺が無下にしているにも関わらず、気にせずにくっついて来るリリアンが面倒で、嫌いだった。


だからリリアンが高熱を出して三日間寝込んだことも、頭を打ったことも、今までの傲慢な態度に対する天罰が下ったんだと考えて心配なんてしてやらなかった。


そういえば明日、リリアンが王宮へと来るらしい。

面倒だけど、一応婚約者として接しなければいけない。

……あぁ。憂鬱だなぁ。





いま、目の前にはリリアンが座っている。

先程父上とリリアンの父親が話しているのを聞いたが、彼女はどうやら記憶喪失になったらしい。

……ふざけるな。

俺が、それを聞かされた時に思ったのはそれだけだった。

二人が出ていった部屋には、沈黙が流れていた。

いつまでこの状態が続くんだ……。

いい加減痺れを切らして出ていこうかと思ったら、リリアンは突然立ち上がり、こちらに頭を下げてきた。

普段の彼女からは信じられない行動を見て、少しだけ記憶喪失だということを信じられた。しかし、すぐに許すことなど出来なかった。


「いえ、記憶喪失というのは本当なんです……信じていただけませんか?」

涙目で上目遣いのリリアンは、可愛かった。

元はと言えば容姿がどストライクだったので、いまの彼女は庇護欲をそそる様子なのも相まって、俺の理想そのものであった。

顔に熱が集まるのが分かったが、どうにかして平静を保った。既に以前のリリアンとは違うと分かってはいたが、それでも記憶喪失だと認めたくなかった。

自分の考えを押し付けてこないで、判断は俺に任せると言ってきたときも、俺の嫌味な返答に対して笑顔を向けて来るリリアンに、今度こそ顔が真っ赤になるのが分かった。

リリアンが真っ赤になった俺を微笑ましく見ていたことに気がつくと、恥ずかしくなって咄嗟に、帰れと怒鳴ってしまった。

それでも次に会った時に気まずくならないようにと、最後にまた声をかけてくれてから部屋を出ていった。

俺はすぐに顔を逸らしてしまったので、彼女が口元を抑えて楽しげに出ていく姿を見ることはなかった。



リリアンが部屋を出ていった後も、度々リリアンを思い出しては、顔を赤くしていた。

……いったい俺はどうしてしまったのだ。

椅子に座り項垂れていると、父上がノックも無しに部屋に入ってきた。

「カイザー!! お前リリアン嬢に対して帰れと怒鳴ったのか!?」

部屋に入ってくるなり、父上は慌てた様子で俺に詰め寄ってきた。

しかし、俺は突然リリアンの名前が出てきたことに驚き、引いてきていた顔の熱がまた集まってきていた。

父上は俺の様子を見て、あぁ、なるほど。と納得した様な表情をしたかと思えば、呆れた顔でとんでもない事を言ってきた。

「お前……リリアン嬢に惚れたな?」

「……はい?」

一瞬、父上の言ってる意味が分からなかった。

俺が? リリアンに? 惚れている?

ようやく理解すると、今度は俺が父上へと詰め寄った。

「そんな訳ないじゃないですか!! 俺はリリアンのことなど好きではありません!」

精一杯否定するも、父上はニヤニヤとしているだけで全く聞いていない。

「まぁ、リリアン嬢を惚れさせるのは難しいだろうが頑張れよ。ちゃんと素直になるんだぞ。お前は捻くれているからな。」

父上はそれだけ言い残すと、俺を残してさっさと部屋を出ていってしまった。



自室へと戻り、ベッドへと倒れ込む。

瞼を閉じると自然と浮かんできたのは、リリアンの笑顔だった。

……だから、俺はリリアンなんか好きじゃないって!!


その日の夜は結局、一睡も出来なかった。

……これも全部リリアンのせいだっ!

リリアンの髪型変えました

二つに結ってある→ロングストレートで毛先だけ巻いてある

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