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何処か、空が見えるところで。  作者: ニャン叉
4/4

夜が明け、空は蒼く広がっていた。

20:30。

数カ所の共和国施設をかなりの規模の武装集団が襲撃。共和国側は一気に混乱に陥った。


20:45

奇襲成功の報が入る。こちらも燃料を満タンにし離陸準備は整った。


21:00

エンジン始動。一発でかかった。機体が前進する。家の前の小径を進む。道路に出た。フラップダウン、今日は調子がいい。スロットルレバーを押し上げる。ゆっくりとスピードが増す。10数秒で機体は浮いた。


21:17

共和国の軍事施設を奪取した。ここの制圧のために他の三倍の人員が割かれている。こちらもかなりの犠牲が出たが、これで当面の武器弾薬は確保。装甲車や地対空ミサイル、戦車も手に入れた。ソウ達は無事だろうか。


21:40

レーダーに移らないように地面ギリギリを飛ぶ。ただでさえかなり危険な飛行なのに今は夜だ。ここまで来て運ゲーになるかもしれない。

戦闘が始まって一時間、アイツらは無事かな?


21:53

これまでにかなりの数の施設を制圧したが、やはり共産軍の航空隊が出てきてしまった。空爆されたらもうお手上げ。あぁジェット機のエンジン音が聞こえてきた。


21:55

日本国防軍の戦闘機だ。さっきから何機も飛んで来る。

「あれは?」

「味方だよ!日本の戦闘機だ!米軍機も混じってる!」

義勇軍の航空支援だろう。かなりの規模、東北の航空基地から全部飛ばしたんじゃないか?


22:00

「サップラーイズ!!!」

「ビビらせんな馬鹿野郎!!」

総隊長が航空支援を取り付けていたのだ。全部隊から同じ返事だったらしい。まったく、ふざけたお人だ。

南から日米の戦闘機が飛んでくる。頭の上で空戦が始まった。東側に空母がいるようで、2方向から航空機が殺到する。


22:06

海に出る。心配だった敵の追っ手も来ない。二機のイーグルが援護についてくれた。

「こちら201飛行隊、貴機を援護する。できれば三沢まで飛んで欲しいが余裕はあるか?」

「こちらJA26839貴隊の援護感謝する。なんとか三沢までは持ちそうだ。いや、もたせてみせよう。」

鈍足の小型レシプロ機を、世界最強と言われた戦闘機が援護する。奇妙な光景だ。羆のスコードロンマークが見えた。


22:08

空戦は始まってから数分で終わってしまった。見た所、国防軍、米軍ともに一機も堕ちてない。対して共和国の航空機は全滅。上空の彼らはそのまま北を目指して行った。千歳基地だ。あそこを奪還するつもりか。


22:15

ソウタは大きなジェット機のパイロットと楽しそうに話している。ふと見ると、ジェット機の後ろに座ってる人が手を振っていた。私もふり返す。前席ではソウタがからかわれていた。


22:36

空挺部隊が基地に降り立つ。そのまま地上戦が始まった。


22:40

断続的に敵兵が突っ込んでくるも損害もなく毎回、排除する。

千歳上空でも大規模な空戦が起こっているようだが、未だにこちらの損害はないという。

また、ついに上陸部隊が北海道に到達した。もちろん味方だ。米軍がかなりの数の弾道ミサイルを向けているため共和国の軍は本土に張り付けにされているようだ。


22:43

三沢基地に着いた。

実は初めての本州だったりする僕と鈴原。

イーグル達は僕らを先に降ろしてくれた。着陸してハンガーまで案内を受ける。彼等は燃料を入れたらまた北へ飛ぶらしい。

「援護ありがとうございました。無線機越しで申し訳ないです。」

飛行機を降りる。疲れた。僕はその場で倒れた。


22:47

燃料を補給してまた飛び立つ。

パイロットの青年が倒れるのが見えた。まぁ、素人がこんな長い距離を飛んできたんだ。疲れて当然だろう。しかし綺麗な着陸だった。彼は初めて飛行機を飛ばすのだといっていたが。


22:58

千歳基地を制圧、奪還に成功した。

空挺部隊も怪我人こそ出たが死者は無し。圧倒的だった。


23:16

敵ももう出てこなくなった。この施設を完全に奪取することに成功したらしい。ソウが無事三沢に着いたと連絡が入った。こちらも無事だと返す。


翌、05:47

「…ここは?」

周りを見る。まだ暗い窓の外に滑走路の光が見えた。あぁそうか。たどり着いたのだ。そういえば、飛行機の中に銃が置きっぱなしになっている。どのみち回収されるだろうが今まで一緒にいたから少しさみしい。鈴原を探す。目をこする。顔を洗いたいな。うろうろしていたらトイレに行き着いた。鏡の前で顔を洗う。外が騒がしい。ドアを開けて廊下に出る。「あ、いた。」イヤイヤ逃げませんて…部屋に連れ戻され、いろいろ質問された。名前、年齢、家族、一緒にいた女の子とどこまでヤったか、等。あぁそうだ。

「鈴原はどこですか?」

「まだ寝てるよ。」

「わかりました。二度寝していいですか?」

「一応10時から忙しくなるからそれまでに寝癖とか直しておいてね。」

「了解で…」

言い終わる前に意識が途切れた。


08:35

目が覚めると、昨日の質問攻めの続きが始まった。といっても義勇軍の人たちとはほとんど関わってないし、父もそのことを私には内緒にしていたから何も話せない。あとは彼氏とどこまでヤったかみたいなことを聞かれた。あ、ソウタの部屋行こう。部屋から出ようとすると、質問をしていた隊員に止められた。

「彼、二度寝してるらしいから起こしてきてもらえる?」

「はい。」


ドアの前に立つ。ノックをするが返事がない。寝てるかな。部屋に入る。

寝癖をほったらかしにして彼は窓の外を見ていた。

「あぁ、鈴原。おはよ。」

「おはよ。」

「似合う?貸してもらったんだ。」

そう言って彼は自分の着ている迷彩服を見せた。

「うん、似合ってる。」

「ありがと。」

「10時過ぎから記者会見だってさ。」

「聞いた。」

「ありがと。」

「なに?」

「信じてくれて。」


それから、部屋に戻って着替える。間に合わせだが、女性隊員が服を見繕ってくれた。

「あげるよ、サイズ合わないやつだから。」

そう言って彼女は去っていった。


10時前、会見場となる会議室に入る。彼は先についていたようだ。

一通り質問に答える。さっきよりは答えやすいものだった。


会見を終えると、ソウタの家族が基地に来ていた。あれがお姉さんか。アレ?あの人ってさっき…じゃあこの服は…気にしないようにしていたがやはり見てしまう。いや別に嫉妬してるわけじゃないけど。


しばらくして彼は戻ってきた。

「いいの?5年ぶりなのに。」

「いいよ、早苗と一緒にいたい。」

「!、名前で呼んでくれるの?」

「……。」

急に抱き締められる。

「ありがとう」といった声はジェット機の音でかき消された。

それでも彼は頷き、


「愛してるよ。」


蒼い空の下、二人は…





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