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何処か、空が見えるところで。  作者: ニャン叉
3/4

真実

週が明けた火曜日、彼の職場に行く。明後日の最終調整があるそうだ。

「へぇ、この子が…」

「そ、隆一さんの娘さん。」

「じゃあ知ってるの?お父さんのこと。」

「あの時のことは、僕から話した。」

「そうか…あ、そーいえば、何がトラウマだよ。調べたらあの後お前、共和国の特殊部隊チーム一つ皆殺しにしてるじゃねーか。」

彼は頭を掻く。

「いや、あれはタマが欲しくて、つい。回収しておいた弾丸が切れかけてて…」

「じゃあその前に20本近く集めたやつは何に使ったんだよ。」

「ここ辞めた後すぐに兵隊が5人くらいで家に押し込んできたからぶっ殺すのに使っちゃった。」

「嬉々としてぶっ殺してるじゃん。」

「いやいや大変だったから。」

話についていけない。いったいソウタは何をしてきたんだ。怖くなる。彼等が笑って話していることが余計に恐怖を増大させる。この前感じたものとは全く違う恐怖。いったい何人殺したんだろう。

「あ、ソウ!おひさー。元気だった?」

「おー!ケン!元気だよー、そっちは?」

「もう最高!義勇兵の中でウチの隊が一番強いんだぜ!」

「だろうな。お前が指揮してんだもん。」

見覚えのある顔が加わった。中学のクラスメイトだ。確か苗字はサダだったハズ。彼がこっちに来る。

「鈴原ちゃんもおひさー。やっぱりソウが持ってったか。」

「え?あ、はい。サダ君は彼女さんとまだうまくいってるの?」

「うーん…ミカちゃん本州いっちゃってさ。」

「あ…ごめんなさい。」

「気にしないでよ、俺が騙して無理やり船に乗せたんだ。ソウと同じで戦うつもりだったから、あの子がいると危ないからね。」

と言って彼はソウタを見る。

「知ってる?アイツが共和国の軍人になんて呼ばれてるか。」

「知らない、そんな有名人なの?」

「まぁ、今この場にいる人らは大体そうだけどね、さっき総隊長が話してたソウが部隊

を皆殺しにしたってのがあったじゃん?あれ実は離れたところに目撃者がいたんだ。もちろん敵の人だったけど。そんでなんかの拍子に『義勇軍に金華猫がいる』って話がこっちにも入ったんだ。総隊長は昨日その話を知ったらしいんだけど…あ、知ってる?金華猫。」

「うん、中国の妖怪で異性を惑わすっていう。」

「そうそう。凄かったらしいよ、敵はまるで何かに惑わされてるかのように一発も撃てずに…」

「だから、しょうがなかったんだよ。撃たなきゃこっちが殺されちゃうし。」

ソウタがもどってきた。

「で?部隊長サン。人の彼女に手ぇ出さないでくれる?」

「うっわーお前がそんなこというとはね…」

「ねぇ、ソウタ…なんでそんなに人殺したの?」

聞いてみる。怒られるだろうと思った。

「…憎しみ、かな?奴らを見るとどうしても許せなくて、つい。」

「ほんと変わったね、ソウ。前は『絶対に憎しみを戦場に持ち込むな』って言ってたのに。」

「…ケンなら知ってるだろ。今北海道にいるクラスメイトで生きてるのが3人しか居ないって。」

耳を疑った。私達だけ?嘘、そんなはずは…

「守れなかったってワケ。みんなを…どうしてもそれが許せなかったんだよ。でもまぁ、ようやく、守るものができたからね、もう大丈夫。ごめんね、怖がらせちゃって。」


帰り道、もう暗くなっていた。まばらにある街灯が寂しい。

「ごめん…」

「え?どうしたの?」

「嫌だったでしょ?俺がそういうことしてて、しかも今まで黙ってたなんて。いつかは言おうと思ってたんだけど、どうしても言い出せなくてさ…」

「……」

何も言えない。本当に悪いのは私だ。綺麗事ばかりで…

彼の手を引く。そのまあ路地裏へ。胸ぐらをつかんで引き寄せる。そして唇を重ねる。そのまま二人で倒れ込む。「こんなところじゃ風邪ひくよ」と彼は言う。「いいよ。襲われなさい。」


「さっむい…」

「だから言ったじゃん。お風呂はいってきな。」

「一緒に入ろ。」

「第2ラウンド?」

「なっそんなわけないでしょ!」






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