君の為に・・・
1月5日天気は曇り
誰もいない古びた駅の休憩所の中
私は冷たいベンチに腰を据え
備え付けの古びた時計に目を向ける
時計の針は午後9時40分を指し示す
私は小さく白い息を吐いたあと
ここは寒いな…そうつぶやくと
両手をコートに付いている
ポケットに入れ 家から持ってきた
封を切ったばかりのカイロを
少し強く握り カイロが暖まるまでの間
下を向き寒さに耐えながらじっと待つ
暫らくすると手の中のカイロが
少しづつ暖まるのを感じたが
すっかり冷えきってしまった私は
手の中にあるカイロを急かすように
ポケットの中で強く揉む
するとカイロはさっきよりも
少しだけ強く熱を発して
手を温める 程よく手を温めたところで
休憩所にある備え付けの時計見て
時間を確認する 時刻は午後9時56分
そろそろか…
午後10時に着く彼女の乗っている
電車を心と身体を震わせながら待つ
午後10時
駅のホームに電車が着いた音が聞こえた
それを聞き、私は名残惜しくも
座っていた場所が暖まったベンチから
腰を上げ
もう一度ポケットのカイロを握り手を温める
電車の扉が開き
手をこすり合わせ手を温める彼女を笑顔で
迎え入れ、
カイロで温めておいた手を差し出す
すると彼女は照れくさそうに私の手を握り
暖かい…
そう呟くと彼女は冷えた手を温めるように
さっきよりも強く私の手を握った
私は顔を赤くしながら
君の為に温めておいたんだ
ふざけるようにそう言って手を離すと
これで手を温めてと
彼女にポケットの中のカイロを2つとも差し出す
すると彼女はカイロを1つだけ手に取りポケットに入れたのを見て
一つで良いのか?と
私が尋ねると彼女は
良いのよこれで
そう言うと彼女は片方の手で私の手を握り
顔を赤らめる
ん?あぁ…そう言う事か…
どうやら私は女心と言うのを全く理解出来ていなかったみたいだな…
心の中で反省しつつ
私は彼女の差し出てくれた手を握ると
彼女は満足そうな顔をしたのが横目でわかった
この後私達はお互いの手を温め合いながら
デートに繰り出しました