象徴詩『臙脂』
大きく鐘が鳴り
もう全員が支配されていると思った
剥き出した脚
ざわめく草群に走り
捕らえた双頭の八匹
カナヘビを削った枝に刺し
火炙りの煙を吸う
パラチオン陛下の姿が浮かび上がり
命令され
転ばせる小さな子供
膝に滲む嗚咽
白い胸
泉に泳ぎ
捕らえた八匹の双魚
根塊で打ち 飛び散り
蒸発する魂を吸う
フラジール主教の姿が浮かび上がり
責められて
泥を吐く自我
夕映えに溶ける記憶
釘を踏み
右足に錆を通す
間に合わないことが口の中にある
手遅れのことが血の中にある
熱く湿った奥に
指を伸ばす先
変温動物のヌメリ
ゼラチン質の空想
腫風の流れが
小削ぎ取り
小綺麗な皮を剥ぐ
橡の実が丸く墜ちて
誘う非常階段
手摺に
臙脂の手形が這い回っている
空の底は堅くて
誰も戻って来れないと思った