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ウィーク・クリエイター  作者: 二本狐
第一章 カスティリア王国編
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第七話 高まる不信

「ふぅ……」

 長ったらしい廊下をカツカツと音を響かせながら歩く。少しばかり入り組んでいる、というわけでもなく、ただお城の広さがかなりあるのが実情だ。

 この世界で早速やらなくちゃいけないことがたくさん出てきた。知識欲。その欲求がこの世界に来て渇きにも似た飢えとなって僕を侵食し続けている。真っ先に調べたいことは、ヒノキの棒の勇者が過去にいないか、だね。

 それと、この国でのヒノキの棒の立場。それが一番知りたい。

 情報を知るためにインターネットに次ぐものは、本。つまり、図書館。

 長い廊下に飽きて、さっきまで繰り広げていた思考回路をまた引っ張りだす。

 あの後、これから鍛えてくれる騎士団長やら魔法使いとやらの紹介があったけど、覚えていない。というより全然聞いてなかった。

 最後に聞いたのは、今日はもうゆっくり休んで欲しいという言葉で、部屋を一人一部屋与えられたということ。その時案内してくれたメイドさんに図書館はあるか聞いたら、窓から見えるゴシック様式のような建物がそうだと教えてくれた。

 そこに、向こうから持ってきたカバンも持って向かっているのが現状。

 勇者であることは王以外にも全員に対して黙っていることにした。

 てか、弱いし。

 まあひのきの棒という時点で弱いのに勇者だって名乗りでても、信用されないだろうね。

 それに、変にあの王に警戒されたくなかった。そもそもあの王の女子を見る目、特に桜さんの見る視線はかなり粘ついていた。なんだろう、他の人は気づいていないのかな? 異世界に来たせいで気付かなかったとか? まあ、僕は男だし、実害を(こうむ)りそうだったらそれとなく最低限の人に警告しておけば良いか。

 曲がり角で右を向くと、目の前に教えてもらったゴシック様式の図書館が現れた。近くで見るとかなりでかく感じる。

 中に入って軽く司書さんに頭を下げると怪訝そうな顔をされた。……ああ、まだ学ランだからかな。着替えは調達してもらえているのかな。

 どんどん奥に入って本棚をすれ違いざまに覗いていくと、色々な本があった。

 歩を遅めて一冊ずつ背表紙を確認していく。魔物図鑑、世界地図、暗黒時代の正体、というものから、神はいるのか? という論文傾向があるものまである。

 僕が探しているのは伝説の武器にまつわるお話。童話かおとぎ話ぐらいの話だとは思うのだけど。

 それらを探す過程で、この世界の常識に関わりそうなものがあったから一冊抜き取ってパラパラと捲ってみる。

 それは明らかに子供向けだったけど、僕には今とてもありがたい情報だった。

 まずこの世界の名前は《ラズワディリア》。

 そして世界には大陸が四つと島国が点在している。

 この国の種族というのもあった。

 人族、つまり僕たちはヒューマ。

 獣人族はディヴィム。

 魔族はマヴィラス。

 四つの大陸のうち三大陸にそれぞれの種族が住んでいるらしい。

 ……すごい! さすが異世界だけあって獣人族(ディヴィム)魔族(マヴィラス)がいるなんて……!

「あ、でも魔族ってよく人族と問題があるみたいだからなぁ。とりあえず獣人族(ディヴィム)には会いたいなぁ」

 少しテンションが上がりつつも、もう少しペラペラと捲って読んでいくと、この世界の通貨についても書いてあった。

 通貨は『エルド』といって、この世界共通らしい。ということは、ここカスティリア王国で手に入れたお金を隣国はもちろん、獣人族(ディヴィム)の国や魔族(マヴィラス)の国に行っても使えるということだね。一々地球のように換金しなくても良いから嬉しい。物価はその地方で違いそうだけど。

 お金はこの世界特有の金属物質で、鋳造(ちゅうぞう)したのかなり昔らしい。このお金を使わないと宣言したところは天罰が下ると……。どこか探したら、『一節には神が作ったと言われている』という文章が見つかりそうだね。

 他のところにも目を通したけど、あまり有益な情報ではなかったので本を閉じ、本棚に戻してまた本探しへと戻った。

 そうして探すこと三十分。やっと見つけた。この図書館、外からの見た目以上に相当でかくて移動だけでも相当時間がかかる。

 …………愚痴を言ってもしょうがない、か。

 とりあえず数冊取って座れる場所まで移動し、本を読み始めた。



 ◆



 ………うーんと。結果からいって、ヒノキの棒の勇者がいたという記述はなかった。

 やはり聖剣・槍・本・杖だけしか見当たらない。どういうことなんだろう?

 それぞれ本を戻しながら考えていると、ふと目に入る本があった。


『聖武器五つの伝説』


 五つ。つまり、桜さんたち四人にだけじゃなくて、僕も合わせた五人、ということなのかな。

 本を戻した後すぐにこの本を取って読み始めると、聖武器の一つ一つの特性について書いてある本だということにすぐに気づいた。




 聖剣は、あらゆるものを切り開き、希望を照らす〈希望の剣〉。


 籠手は、あらゆる物を壊し、あらゆる人を守る〈堅牢なる盾〉


 魔杖は、あらゆる魔法を築き怒涛の勢いで攻める〈大魔道〉


 聖本は、あらゆる傷を治し、時には大地をも潤す〈女神の微笑み〉



 そして…………



 …………



 ………………………………あれ?



 ここで文章は終わっていた。

 眉間を摘んで軽く首を揺する。

 最後のところでページが千切られたような跡があったからだ。

 しかも、まるまる最後の部分だけが。

 これは、なにかある。この国に関わる何かが。

 王様もヒノキの棒の勇者のことは何も触れなかった。これも、王様がやったんだとみていい。

 僕の称号には一体何があるんだろ……王様に突き詰めたい。

 ……でも、今はあまり触れたらだめだ。

 僕はまだ国を相手取って戦うほど力があるわけじゃない。そもそも、回避できるならその方法を第一にとって行動するからね。

 とにかく、国が隠蔽(いんぺい)するなら違うところで探すことにしよう。

 時間を見ると時計の長針が七時を指していた。

 それにしても、時計が地球と同じでよかった。

 異世界で時計って珍しいな。異世界系小説は鐘の音で判断するのが多かったからね。それか、時間の経過は朝以外知る方法がなかった。鶏がコケコッコーって鳴く、もしくは太陽の位置で知るしかなかったはず。

 そういえばその鐘の音ってどうやって正確に鳴らすんだろ? 日の出も日の入りも毎日違うのに正確に鳴らすから。

 大体空の色が同じになったら鳴らすとか? いやでも、それだと一日の感覚がぐちゃぐちゃに……。

 っと、そろそろ戻らないと。

 僕は急いで本を片付けて図書館を少し小走りで後にした。


お読みいただきありがとうございます。


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