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ウィーク・クリエイター  作者: 二本狐
第一章 カスティリア王国編
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第十二話 一方その頃 3

 ――――メイド。



 清掃・家事・炊事の三つを難なくこなす女性使用人を指す。

 ここ、カスティリア王国におけるメイドは、それに加えて戦闘面でも優れていないければいけない。

 ……桜には関係ないが。

 また、メイドにはたくさんのメイドの極意がある。

 “主に忠実あれ”

 極意書の第一条にきている(ぶん)だ。

 これは体験メイドとして数時間働くことになった桜も例外なくこの第一条は教え込まれた。

「いいですか? 今回は私がついていますし人がいる場所には行きませんが、これだけは覚えておいてくださいね?」

「はい師匠!」

 元気に返事をする桜だが、それがかえってミニスタシアに一抹の不安を与えた。

 が、もうメイド服に着替えさせてしまったので後戻りはできない。だから気持ちを切り替え、安全に仕事を終わらせることを決意した。

「それでは、城内の案内も含めますので、まずは一階から参りましょう」

「ねね、ミニスタシアさん」

「なんでしょう?」

「ここ、何階?」

「………………四階、ですが」

 ほぇーっと間の抜けた声を出した。

 ミニスタシアは意識が遠のきそうになるのを気合いで踏ん張り、長い戦いになる予感がして既に疲れたような顔をした。


 兎にも角にも、数時間だがここに『ふわふわメイドサクラ』が誕生した!











 サクラの朝………ではなく最初の仕事は、一階でベッドメイキングすることから始まった。

 簡単にここでは言ってはいるが、一部屋ごとに一つから三つ。

 それがかなりあるというのだから目が回る。

 しかし、客人が泊まる場所として常に清潔、常に新品同様でなくてはいけない、いわばメイドの品評が試される場なのだ!

「……それで枕カバーはこう二つ折りにして片手で持つと、枕が入れやすくなります。シーツはこうやってまず足元の布をこの中に入れて、次に頭側のシーツを入れます。そうしたら引っ張ってシワを伸ばしてからサイドの垂れている布を入れれば……これでベッドメイキングが完成です」

 見事、としか言えない手際を見せたミニスタシア。

 サクラは思わず感嘆の声と拍手を送る。

「では、今の手順でベッドメイキングをお願いします。私は隣の部屋をしてきますので」

 そういって部屋から出て行くと必然とサクラは一人になった。

 若干不安になっているサクラ。

「よ、よーし! やっちゃうよ~! 異世界だけどメイ道極めちゃうよ~!」

 数時間で極められたら見習いメイドというものはなくなるのだが。

 えいえいおー、とやる気を出して早速ベッドメイキングを始めた。

 先ほど実演されたものをテキパキとこなしていく。

 枕カバーを外し新しい枕カバーをセット。シーツを()いて、爽やかな匂いのするシーツを足側・頭側・側面とそつなくこなしていく。

「ふぅ……!」

 三分ほどで全行程が完了した。

 すると先ほど出て行ったミニスタシアがタイミングを見計らったかのように戻ってきたので、ドヤ顔をして「どうでしょう? 完璧ですよね!」と出来栄えを聞いた。

 ミニスタシアもこれには目を見開き驚いた。もちろんドヤ顔の方ではない。

 ベッドメイキングのほうに、だ。

 一度しか教えていないのにこれほど完璧にやり遂げたのだ。舌を巻かざるを得ない。

 しかし、これほどできるというのに、なぜ城で迷い、現在の階数も把握できていなかったのか。ミニスタシア首を捻った。

 しかし考えても全くわからないので考えるのを放棄した。

 それでは次行きましょう、とミニスタシアはサクラにいって二人で移動し始める。

 トコトコと二階に上がる前に、ふわふわメイドサクラは疑問に思ったことをミニスタシアにぶつけてみた。

「師匠、一階ってもうちょっと部屋ありませんでしたか?」

 師匠、というところで一瞬渋い顔をしたが、すぐに表情を戻したのでサクラは気づかなかった。

「それなら大丈夫です。さっき終わらせてきました」

「へっ? いつ?」

「先ほどサクラ様が仕事をなさっている時です」

「……あれ? あの時三分しか経ってなかったよね? 何部屋行ったのかな?」

「ええっと……だいたい十部屋で二十二台分ですか」

「ええっ!? ……こ、これが……これがメイ道を極めた者なのか……」

 ブツブツと独り言をつぶやいていた。





 次に着いた場所は謁見の間。

 かなりの広さがあり、高価で華美な装飾品がたくさんある。そういったものは特殊な洗い方があり、まだまだ見習いふわふわメイドサクラには任せることができない。

 またここ謁見の間は王がいろいろな人を出迎える玄関の役割も果たしているので常に清潔感を持続させることが必要だ。

 そのため、メイドは『城の顔』とまで言われる謁見の間を丹念に掃除しなくてはいけないのだ!

「では、サクラ様は床をまずこの道具で綺麗にし、その後モップで奥から擦ってください。私はその間に金属類をやっておきます」

「はい師匠!」

 今度は先ほどのベッドメイキングから、ミニスタシアは安心して仕事を任せることができた。





 三十分。

 たった三十分で床掃除がが終わった。

 サクラはあまりの床の輝きようにポカーンとしている。

 そして自身が掃除した十メートル四方の(・・・・・・・・)場所と見比べて、その場で手をついた。

「サ、サクラ様?」

「うぅ……わたしは、できない子だったんだ…………」

 涙こそないが、明らかに仄暗い雰囲気を発し始めていた。ここで明るい雰囲気を発し始めたらサクラはMだと思っても良い。

「だ、大丈夫です! ここまでできるのは私しかおりませんので!」

 それはフォローと言わず自画自賛という。

「そ、そうなの?」

 しかしそのことに気づかないサクラは、少し元気が出る。

「はい。むしろ先ほどの動きは中級ぐらいありました」

「う、うーん? ありがとう?」

 それすごいのかな? と疑問に思いつつ立て直した。

 しかして、この謁見の間に輝き、わかりきったことであるが、犯人はミニスタシアだったりする。

 スピーディかつ丁寧に装飾品を掃除したあと|(ここまで五分)、すぐさま箒を持ち五分でゴミ掃除を済ませると、二十分でここまで磨き上げたのだ。

 その動きをみたサクラは「忍者!?」と叫んだという。

 時刻は六時半を指している。

 あれから三階、四階と上がっていきどんどん仕事をこなしていった。

 そのことによって『ふわふわメイドサクラ』はどんどん技術を身につけていき、あっという間に上位のメイドレベルへと変貌する。

 ――――しかし、それはただの付け焼き刃でしかない。

 この動作がいつも無意識にできるようになって、やっと一人前のメイドと言える。

 また、カスティリア王国のメイドは戦闘もできなくてはいけないことを忘れてはいけない。

 技術があっても闘うことができないメイドはやはり見習いメイド。

 そこから抜け出すことはできないのだ。

 これからサクラがやらなくてはいけないことはまだまだたくさんある。

 早朝から夜遅くまでメイドとしての極意、技術、戦闘を身に付け、こなして続けていかなくてはいけない。

 それはきっとかなり厳しい道のりとなるだろう。

 なんども挫折を味わうだろう。

 しかし、ゴールの先には栄光がある。未来がある!

 そう、『ふわふわメイドサクラ』の成り上がりメイ道はここから――――――







「ではサクラ様。メイドはここまでにして夕食の席へと参りましょう」

「はーい!お疲れ様でしたミニスタシアさん!」












 ………………………………始まらなかった。


 お読みいただきありがとうございます。


 おさらい:桜はメイ道を少しだけ極めました。

      一応、見習いメイド以上中級メイド未満ほどの技術です。


 ミニスタシアさん、何者……?

 という回でもありました。

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