7.関係性
訪問有り難う御座います。
夏休みの間に文化部、帰宅部で内装の準備は完成させることが出来た。一ヶ月もあっという間だ。気がつけばもう九月。本番まで残り一週間をきっていた。
「二組も昨日、完成させたそうなので、後は衣装、メニューの準備だけです」
「報告、有り難う」
一年の委員をまとめることになっていた早瀬に、報告を行う。
「後は、メニューの確認か」
「どこも被っていませんでしたよ」
「え?」
進度を確認するついでに、メニューの確認も行っておいたのだ。どうせ、後で早瀬が聞いて回るのだろうから、聞いておこうと思ったのだ。
「もう必要な材料を買いに行っているクラスもあると思います」
「東さん一人で? 大変だったでしょ」
「えっと、友達に手伝ってもらったので、大変じゃなかったですよ」
水面が一人で聞いて回っていると、途中から和歌も一緒に回ってくれたのだ。顔の広い和歌も一緒にいたので、すぐに各クラスの状況を聞くことが出来た。
「今週から、放課後も準備に当てれるんですよね?」
「あぁ、うん。運動部も参加出来るようになるしね。放課後は東さんに任せてばかりだったから、今週から僕も手伝えるよ」
「有り難う御座います」
報告が済んだ水面は、四組へと帰るため早瀬に一礼し、歩き始めた。
「あ、ちょっと」
早瀬の手が伸び、水面の腕をとった。
「え?」
「東さんと僕は……」
その時――
「み〜なも」
不意に、水面の体がさらわれた。
ふわりと浮遊感が全身を襲う。
「何してるの?」
「か、和斗さん!?」
後ろから来た和斗は、腕ごと水面の体を抱き締めていた。逃げ出そうにも、腕ごとなので、どうしようもない。
「東……」
「委員長、俺、水面と遊びたいんだけど」
和斗の吐く息が頬に当たる。
楽しそうな笑い声に、胸が苦しくなる。こんなに近くで笑うなんて、反則だ。どきどきが止まらない。
「東さん。君と僕は――」
「友達なんだろ?」
和斗の声が早瀬の言葉に被さる。
「水面」
低い囁き。
限界だった。
「わ、わわわ、和歌の所に行ってきます!」
そう叫ぶようにして言うと、水面はいつの間にか緩んでいた和斗の腕を抜け出し、逃げた。うまく足に力が入らず、走っているとは言い難いものだったが。
「東、僕は東さんと話してたんだけど」
「ん? 用件は終わったみたいだったけど?」
早瀬の目が細められる一方、和斗は笑っていた。
「……僕と彼女は――」
「友達だろ?」
さっきと同じように、和斗の言葉が被る。
「そして、俺と水面は恋人同士」
「……」
ズボンのポケットに手を突っ込み、ゆっくりと和斗が早瀬に近付く。一歩分空けて立ち止まった瞬間――
「ダンッ!!」
早瀬のほんの少し横を和斗の脚が通り、廊下に大きな音が響いた。
壁に足をつき、少し下の位置にある早瀬の頭を見下ろす。
「その辺……分かってくれるかなぁ?」
その顔からは、笑顔が消えていた。
「お前と水面は、友達、だ」
「委員長、何か大きな音がしたけど……っ!!」
「東くん……?」
廊下を曲がって、二人の生徒が現れた。
「んじゃ、そういうことで。俺は準備してくるわ」
再びにこっと笑うと、何事もなかったかのように、和斗は角を曲がっていった。
「委員長、何かあったの?」
「いや……」
「そういやあいつ、三組の東さんと付き合ってんだよな」
「え!? あの大人しい子と?」
早瀬もこの間教室で聞いたときは、驚いた。
ふと横を見ると、白い壁に、シューズの跡がくっきりと残っていた。
「あいつ、何か怖いよな〜。作業とかは、よく手伝ってくれるけど」
「そう? 女子からは結構人気だけど。遊んでくれそうって」
「ひっでぇ〜」
「何で付き合ってるんだろう?」
そんな和斗が何故、水面と付き合っているのか――
「何故……」
気づかれたでしょうか。 抱きしめたりとかはあるのに、まだ二人は手すら繋いでいないんです! 驚きました....




