3.クラス会議
訪問有り難う御座います。
水面が少し成長しました!
さっそく午後の授業から、文化祭についての話し合いの時間が取られた。今年は例年よりも時間がないらしく、どこのクラスも今の時間は文化祭のクラスの出し物を何にするか、話し合っているらしい。
さっそく委員の仕事ということで、水面はてんぱっていた。
「クラスで出し物をするらしいのですが、何か希望はありますか」
何とかそれだけ言うも、中々答えは出ない。
和歌も、こういった案を出すのは苦手なのか、目があって早々に×印を出された。
「何か意見は……」
やはり自分は向いてなかったのか。そう思って顔を俯けたときだった――
「失礼します」
教室の扉を開け、一人の男子生徒が入ってきた。
「隣のクラスの文化委員の者ですけど」
「早瀬君……」
それは、水面を委員に誘ってくれた張本人だった。
「ちょっといい?」
「ど、どうぞ」
「あっれ、早瀬じゃん」
「お前、委員になったの」
「はい、そこ、静かにね」
水面のクラス内にも知り合いが結構いるらしい。早瀬が入ってきた途端、少し騒がしくなった。しかし、それも少しの間で、注意が飛ぶと静かになる。人望も厚いようだ。
「え〜、今、他のクラスにも掛け合っている途中なんですが、学年全体で何か一つの出し物をしませんか」
一つの出し物?
「まだ案はまとまっていないけど、喫茶でも出し物でも展示でも、本当に何でも良いらしいから。スタンプラリーにするとか、ね」
「……楽しそう」
それだけで、頭の中には沢山のアイデアが湧いてきた。
「どうかな、東さん。東さんなら、今のだけで何か案が浮かんだんじゃない?」
「全体でお化け屋敷をするとか……喫茶店を何か一つの事にまとめるとか」
「どうかな、みんな」
早瀬がそう問いかけただけで、今まで黙っていたのが嘘みたいに、
「いいね、それ」
「賛成!」
「楽しそう」
皆、賛成の意を唱えた。
「東さんのさっきの意見、何か楽しそうだね」
「え?」
「そうそう、私もそれ思った」
まさか、水面のさっきの案にまで好意見を貰えるとは思ってなかったので、一気に顔が熱くなった。
「細かな案は各クラスで決めて、代表委員で話し合うって事で。それじゃぁ、東さん頼むね」
それだけ言うと、早瀬は教室から出て行った。遠くで、他のクラスの戸の開く音する。
「水面ぉ、さっきの案は?」
少しの間固まっていると、和歌に声をかけられた。
こうしてぼうっとしているわけにはいかない。折角、早瀬がいい案を持ってきてくれたのだから、何とかクラスの案をまとめなくてはいけない。
「えっと……私の意見を言ってもいいの?」
「何で? 他に意見出てないんだし、出せばいいじゃん」
クラスから不平の声は聞こえてこない。緊張はするが、何故かこの案は良い案に思えてならなかった。
「……まず、一年全員で喫茶店をします」
何だかおかしな話し方になったが、皆笑わずに真剣に聞いてくれた。
「どんなものを出すかは、クラスで話し合って、例えば一組はクッキーメインのお店とかにする」
昼ご飯を食べれるランチ専門や、持ち帰り可能なお土産系など、飲食ブースを作れば面白いと思ったのだ。
「それで、教室やスタッフの服を物語に沿わせるのはどうかな?」
「というと?」
クラスの誰かの声がした。
「私が考えたのは、童話の世界。赤ずきんがいたり、シンデレラの世界だったり」
そうすればスタッフの服も色々なものが出来、楽しいと思うのだ。教室の飾り付けも、どれだけでも考えられる。
「……それ、いい」
「え?」
「最高!」
「いいよねぇ、そしたら服とかも可愛いの着れそう」
「一体感あるし」
一気に教室は盛り上がった。
まさか、ここまでいい反応が貰えるとは思っていなかったので驚きだ。
「絶対この案通るって」
「後で一年委員で話し合うんでしょ? この案通してきてね」
思いがけない言葉に、思わず笑みがこぼれた。
「はい、頑張ります」
有り難う御座いました。
今回の話で、皆成長できるといいな。