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2.お昼

訪問有り難う御座います。


「まさか、水面が手を挙げるとは思わなかったわぁ」

「私も少し驚いてる」

「自分で挙げて、普通驚く?」

あはは、と軽快な笑い声が響く。

ホームルームが終わるとすぐに委員長は委員の決定を担任に伝えに出て行った。もう取り消しは出来ない。

教室は委員決めから逃れられた開放感と昼休みで、普段通り騒がしくなっていた。

「……止めた方がよかったかも」

「もう無理よ」

思わず溜め息がこぼれてしまう。後悔は無いと言えば、嘘になる。それでも委員の仕事を楽しみにしている自分がいるのも事実だ。

「水面、本当に委員になったんだ」

「和斗さん!」

声のした方を向くと、廊下の窓から和斗が顔を覗かせていた。お昼のお誘いだろう。片手にはパンの入った袋を持っている。

「水面がなったんなら、俺もなりゃよかったな」

「和斗には無理だろう」

ひょいと明が和斗の肩越しに、現れた。

「お前、さっきのホームルームにもいなかったし」

「あぁ……」

「何、サボリ?」

「うるせぇな」

よく見ると、明の手にも昼ご飯が提げられていた。

「明さんもお昼ですか?」

「そ、今日は四人で食べようかと思って。水面ちゃんの話も聞きたいし」

そんなに自分は端から見ても珍しい行動をとったのだろうか。

なんだか恥ずかしくなり、取り敢えず水面は急いで弁当を取りに行った。


☆★ ★☆


少し日差しが強くなってきたが、まだ木陰なら十分外で食べられる暖かさだった。

「はい、和斗さん」

「ありがと」

さすがにご飯まで準備して貰うのは悪いと、和斗は主食だけは自分で持ってきていた。だから水面が渡すのは、おかずの入った弁当だげだ。

「「へぇ〜」」

「何だよ……」

「「べっつにぃ」」

和歌と明の意味深な言葉に、険を露わにしながら、和斗は弁当を開けていた。

三人は仲がいいのだろうが、たまによく分からなくなる。何が「へ〜」で、何が「べっつにぃ」なのだろう。

「それにしても、何で急に委員をやろうって決めたのよ」

唐突に、和歌が教室での話に戻した。

「それは……」

「それは?」

あまりにも不純な動機すぎて、呆れられないか、今更になって不安に思えてくる。

「友達に……誘われたの」

「友達!?」

動機は簡単。つい先日、図書館で知り合い友人になった生徒に誘われたのだ。一緒にやろう、と。ただそれだけだ。

新たに友達が出来たのも嬉しかったし、この機会に挑戦してみたいとも思ったのだ。

呆れられただろうか。

「……うん」

「よかったじゃない!」

「え?」

「引っ込み思案で、友達なんかあたし以外出来ないんじゃないかと思ってたのよ。よかったぁ」

「委員ってことは、放課後遅いのか?」

「あ、そうです。事後報告で申し訳ないんですけど……」

そうだ。委員になれば、放課後は遅くなり、和斗と図書館に行ったり、帰ったり出来なくなるのだ。

「いいよ、別に。帰りは待つし」

「でも、遅くなりますよ?」

「いいって。俺が一緒に帰りたいだけだし」

「……有り難う御座います」

心苦しく思う反面、嬉しいと思う自分もいた。委員もできて、さらに帰りは一緒なのだ。本は別に家にもあるので困らない。

「あぁ、あぁ、お熱いねぇ」

「お二人さん、今日はあたし達もいるんですけど」

「「っ!?」」

すっかり忘れていた。

慌てて無意識のうちに近づいていた体を離し、水面は弁当を口に運んだ。

出てすぐは少し暖かいぐらいだと思っていたが、今はとても暑く感じられた。




有り難う御座いました。亀更新ですが、どうぞおつきあい下さい。

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