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13.空色傘


学園祭の準備を始めた頃から、何故かクラスの女子がよく話しかけてくるようになった。仕事で忙しい水面を待つ、時間つぶしに手伝っていただけなのだが、最近は逆に水面を待たせている方が多い気がする。途中で抜け出そうとするも、そうすると女子達がまとわりついてくるのだ。鬱陶しい。香水が身につくようで嫌だった。

そのこともあって、最近はよくカッターを脱いで作業をしていた。

「よし、完成! じゃ、俺はこれで」

片づけまで手伝わせては堪らないと、急いで荷物をまとめる。

「お疲れ様!!」

「東君のお陰で、早く終わったよ。有り難う」

「本当! すっごく器用なのね」

するりと絡まった腕は熱っぽくて気持ちが悪かった。ふりほどこうにも、がっちりと絡まっている。本当に、どうしてこうも面倒くさいのか。

「もう付き合ってって感じ」

それはあまりにも突然のことだった。ふりほどこうにも、がっちりと絡まっている。

「ねぇ、彼女と別れて、私と付き合わない?」

それはあまりにも突然なことで、油断していたのだ。

赤い唇が頬に触れる。

[あ、ずる〜い]

[うふふ]

何がおかしいのか、にこにこ笑っている。

[何?]

[うふふふ]

水面以外にされることがこんなにも不愉快だとは思わなかった。後で絶対に消毒しよう。

心の中で溜息を吐き、手の甲で乱暴に拭うと、さらに笑い声が大きくなった。

[え〜、そんなにする]

[あははは、あんた嫌われてるのよ]

そこまで分かっていて、何故まだ笑ってまとわりつくのか。

[離れろよ]

[え〜?]

[触んなって言ってんの]

触れられた箇所をたたき、脱いでいたカッターを着ると少し匂いが和らいだ。

[香水つけすぎ。あんた臭いよ]

[はぁ!? ひ、ひっどい]

[臭いって]

そこまで言ってようやく皆離れてくれた。

そのまま無視して外へと向かう。鬱陶しい話に耳を傾ける気はさらさらない。

[東、これ東さんから]

[水面が?]

体育館入り口に立っていた早瀬かシンプルな淡い水色の傘が差し出された。

[え、水面は]

[それを置いて帰ったよ]

傘だけ置いて先に帰るなんて珍しい。

何か言付けがあるのかと思ったが、早瀬からそれ以上何かを言われることはなかった。

[それじゃ、雨に濡れなくてよかったな]

[あ?]

早瀬が和斗の頬を手の甲で二度叩いた。

そこはさっきキスされたところで――さっと血の気が引いた。

[おい、議長!]

それだけ言うと、早瀬は雨の中をかけていった。

いつ、水面はここに来たのか。いつからここにいたのか。

和斗は残された傘を片手に、ただ呆然と立ち尽くしていた。




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