1.文化祭委員
初めまして!
お久しぶりです。久しぶりの投稿となりました。文化祭編開始です!
静かな図書室に、本が棚に収まっていく音だけが響く。
この棚のここ一列は、全て読んだ本ばかりだ。シリーズものだから一列読むことになったのだが、この本には第二シリーズがあり、もう一列読まなくてはならない。
「その本、面白かった?」
振り返ると、立っていたのは見知らぬ男子生徒で、思わず後ずさってしまった。
見たところ、真面目そうで好青年ではあるが、苦手なものは苦手だ。顔を俯かせ、さらに後ずさる。知らない人に話しかけられると、つい逃げてしまうのは癖だ。
しかし、次の瞬間、男子生徒が発した言葉に、水面は思わず顔を上げた。
「東さん……だよね?」
「え……?」
☆★ ★☆
「当校の文化祭は、各クラス一人の代表者を出し――」
4月はそれほどでもなかったが、7月ともなると皆総合の時間は好き勝手に友人等との会話を楽しんでいた。特にそれが教師のいない、生徒だけの話し合いの場だと、静かに話を聞いている生徒はいないに等しかった。
「クラスで一つ出し物を、学校全体でのイベント――」
「ここの文化祭って結構派手なんだよねぇ」
「あ、あたしそれ目当てで入学した!」
「てかさ、この文化祭委員って結構大変なんだろ?」
「あぁ、それって結構この辺りでは有名な話だよな」
大抵の高校受験生が、先輩から聞く話だ。あそこの文化祭は楽しい。でもその委員は、自由な時間をすべて奪ってしまう、悪魔のような役職だ。
「えぇ〜それでは、今年の文化委員ですが」
がやがやと騒がしかった教室が、少しだけ静かになる。誰もが目立たないように、少し身を屈めた。ある者は、机にへばり付いて寝た振りをし、ある者は窓の外へと視線を逸らした。どれもこれも、下手に目立って当てられては困るからだ。委員会に準備、放課後が潰れてしまう文化委員なんて、誰もやりたくないに決まっている。
「ま、あたしは免除だから別にいいけど。だから水面も同じ部活に入ろって誘ったのに。運動部に入れば委員会免除よって」
委員会が免除になる何人かの生徒は、和歌のように自由に過ごしている。面倒臭い委員の仕事は誰かがするので、所詮他人事だ。
「いませんか?」
返事はない。手も上がらない。
「……それじゃぁ、僕が――」
誰も手を上げず、今回もまた委員長がすることになるかと思ったときだった。
「……はぃ」
小さな声と共に手が上がった。途端、教室は静まりかえり、その主に視線が集まる。
「嘘でしょ……」
和歌の唖然とした声が漏れた。
「えっと……いいの?」
注目され、つい俯いてしまう。顔に熱が集まるのが分かった。
「……それでは、今年の委員は東さんにお願いしようと思います」
有り難う御座いました。