表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/7

第1章 海月精霊は誘う。⑥

 アル=アインは交易が盛んで、その建国の始めから国外から多様な人々が流れ込んできた。

 その結果、髪や肌の色、顔立ちもバリエーション豊かだ。

 それでも、日差しの強い気候によるものか、髪や目、肌の色が濃い者が多い。


 少女の連れである、“ナジュム”と“ユスフ”も黒髪と浅黒い肌をしている。

 ナーディル自身も似たようなものだ。


 だが、決定的に彼らと自分を分けているのは、その紫の眼だった。


 それは何代か前、遠い北方の国から迎えられた花嫁がもたらしたものだという。


「――あらためて、ご挨拶を申し上げます。

 わたしはアル=ナシーム家当主の次女、ピラールと申します。どうぞ、お見知りおきを」


 紫の眼を伏せた少女は、すっと顔を上げた。

 そのまなざしが、まっすぐナーディルに向けられた。


 一瞬、息を呑み、ナーディルは言葉を探した。


 すると、ピラールは不思議な笑みを浮かべて、囁いた。


「……魔石灯の吊り天燭台(シャンデリア)は、まだ王宮にしか納品しておりません。

 七色の変化の披露も、たった一度だけ、王家の方々の前でだけだと聞いておりますわ。


 ――殿下」


 ナーディルは自分の失態に気づいた。

 隠すことをあきらめた。

 判断は、はやいのだ。


「我はアル=アイン国王カーミルが嫡孫、ナーディル・アル=アイン。

 微行ゆえ、気遣いは無用に願う。


 ――というか、戻った後のじいからのお説教が決まってしまった。

 これ以上は、ごめんこうむる。ゆえに、此度のことは内密に――」


 後半を秘密めかして囁き返したナーディルに、ピラールの目がきらめいた。


「では、わたしのお願いもお聞きくださいますか――?」


 ナーディルは、じっとその目を見つめた。


「願い――とは?」


 ピラールは、かすかに身を起こした。


「殿下を近々催される不夜祭にお招きしたいのです。


 当日、迷宮書楼に設えた舞台においでいただけないでしょうか。」


 ナーディルは聞きなれない単語に、目を瞬かせた。

「めいきゅうしょろう――とは?」


 ピラールは小首をかしげた。さらりと髪が華奢な肩を滑る。

「かつての王立書楼、と申し上げましょうか。今は、誰もそう呼びませんが。」


 不思議そうなピラールの袖をゆすって、ユスフが囁いた。普通の声の大きさで。

「姉さま、おもてなしが先!

 あと、座って!足、もう限界でしょ!?プルプルしてる!」


「…今、それを言う……?」

 囁き返したピラールの頬がほのかに朱かった。


 ナーディルは咳払いで、吹き出すのをこらえた。


 ――どうやら喉の調子が悪くなったのは、ナーディルだけではないらしかったが。


 やれやれ、とばかりにユスフが首を振る。ぼそりとぼやく。

「自分がしびれてちゃ、しょうがないじゃん……くらげのくせに」


 ナーディルはとうとう決壊した。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ