二組の誕生
二組の誕生
田植えも終わり、まだ梅雨になる前だった。
若は、神殿に入り、祈りの済んだ巫女と対峙していた。
「巫女様、貴方様も、色々経験して、立派な巫女様にお成りになりました。オヤジから指示があり、警護の仕事を若いのに任せ、移動するグループに戻れという話になった。」
「、、、」
「巫女様、これからも、移動するグループは、必要だ。私が前に立つ必要が、、、」
巫女は手を挙げて、若の言葉を制した。
「分かってる。若を移動するグループが必要なのは理解している。」
顔を下げて、声が詰まる。
「でも、私には、若がひつ、、、」
巫女として、里の事を考えると、若が移動するグループに専念する事の重要性は、理解できていた。若がいないと寂しい、なんて言えない。
大きくため息が出た。
「その話は、、、」
若は、里でも有能な若手だ。私が頑張るしかないんだ。巫女は必死に結論にしがみつこうと考えた。
若は、巫女が考えていることにたどり着かなかった。
「どうしたんだ。貴女らしくもない。歯切れが悪いぞ」
子供の頃から巫女の護衛として一緒に育った巫女だった。
侍女のチビが横で、巫女の気持ちに気が付き、若に返言った。
「若様、巫女様は、ここで暮らしてください、と思ってるんじゃないの?巫女様は若様贔屓だから、、、」
え、と若が今度は驚き、巫女にチビの手を伸ばして、
「何をいうの、、、」
チビは言いすぎたか、と頭に手を当てて、ごめんなさい。と頭を下げた。
「もう、チビったら、、、」
コホンと前を向き直し巫女が話し始める。
「若、あなたが神殿に暮らし、移動するグループに行くなら、許しましょう。」
今度は、ハッキリと言った。
若は、どうしてそうなるんだ。
ここで暮らす?連れ合いみたいじゃな、、、あー、そういう事か、理解できた。
「巫女様、私はあくまでも巫女様に従います。何卒、よろしくお願いいたします。」
ワーッとチビが大きな声で笑った。
巫女は、黙ったまま天井を見あげていた。
長と先代が祈りの部屋に入り、チビが小さな声で告げ口する。
長も先代も、さもありなんと言う感じで、大きく頷いた。
浅間山麓の縄文の森の前、弓使いが、新居を建てていた。岩陰を背中にして、縄文の簡易テントのような小屋だ。
彼は目の前に田んぼを耕し、川から水が流れてくるように工夫して、新たな生活が出来るよう準備していた。
オヤジがやって来た。
「おう、ここで暮らすんかい。」
弓使いが大きく頷いた。
平地に暮らす。でも、里の中には入り難い。
チビを通じて、巫女や若にも信頼があった。
オヤジが続けた。
「移動するグループには、入らんでも、お前には頼みたいことが、色々ある。若にも、云っておくから、これからもよろしく頼むぞ。」
弓使いは、へへへと笑い、大きく頷いた。
オヤジは平地に降りてきたこの男は、頼りになる。そう感じていた。
八ヶ岳の方向に日が沈みかけていた。




