佐久平
佐久平
佐久の里に戻ってきた二人は、佐久平に新たな米作の集落が増えているのに驚いた。
洪水の後、移動するグループの親分になり、外を駆け振れ回っていて、気が付かなかったのだ。
歩いて見回していると、諏訪湖の辺りで見かけたものがいた。
「やぁ、久しぶりだな、何時からここに来てるんだ。」
諏訪湖で見かけた男は何者っと顔を上げた。移動するグループの親分で、安心して答えた。
「洪水でこの辺もすっかり水がいっぱいだったが引いたので、小屋を移したんだ。」
親分は、ずいぶん前から来てたんだなぁと改めて感心した。
「暮らしはどうだ。」
諏訪湖から来た男は、ここは米の育ちがよい、安心して暮らしてる
と、思いがけない平和な暮らしをみた思いがした。
我は、浅間山の方面のと、言いかけたら、知ってる、知ってると笑いかけてきた。
いま、大巫女、、、何処とは言わず、大巫女のところから帰ってきたんだ。ほら、と銅鏡の破片を見せると、
「凄いな、輝いておる。譲ってくれないか」
と言われ、大巫女の使いはこの後、しないだろうと考え、
「よいぞ、」
と、気前よく渡した。
銅鏡の破片をもらった男は大事そうに持って、彼らの巫女様の所へ行ってしまった。
弓使いも、良いんじゃないかという感じだったので、二人は佐久の里へ戻っていった。
山梨から降りてきた者たち、碓氷峠から来た者たち、弥生集落の動きが、広がっることを実感した。
佐久の里の神殿で巫女と長を呼んで話し始めた。
詳しく話しても理解してもらえんかもと感じていた。
弓使いが、急に話し始めた。
「伊勢の大巫女様はすごい方だった。俺は、緊張して何もできなかったよ」
弓使いの言葉に、その程度の話で良いのだなと感じた親分は、
「巫女、長、我らは、我らじゃ」
纏まって無かった新しい理屈の数々、ここで伝えても動きが取れないと思った。
暫く沈黙が続いたが、巫女が気がついたように答えた。
「親分、随分と大変だったご様子。私も無事のお帰り、安堵しています」
親分には、巫女が何かを理解したことが分かった。
近畿圏の動き、九州勢力の動き、この里からは、遥かに遠い。
我らが考えても、仕方がない。
佐久平に戻ってきて、新たな集落を見て、ここは平和だ、このままで良いと確信した。
新たな動きは確かに動いている。
大巫女的に言えば、よいよいだ。
我らは淡々と暮らせばよいのだ。
年が明けて、また夏が来た。
弓使いがやって来て、大巫女様の所へ行こうと言う。
「茅が、大きくなったろう。奉納、奉納しなきゃ。」
何だと思ったが、弓使いには逆らえない。
浅間山の噴煙はあくまでも白く高く、青空に吸い込まれていた。




