近畿圏へ
近畿圏へ
伊勢の大巫女の祠を出た。
遠くに見える浜辺には、大きな船が停泊していた。
九州勢力の有力な人物が乗っているはずだ。
弓使いが、睨見つけてる。
親分は、肩に手を当て、
「行くぞ」
とだけ言った。
まずは、松坂に向かう。歩いていると櫛田川にぶつかり、山へ入る。
川の流れる音だけが、ザーッと響き、
人の暮らしから拒絶するように感じた。
それから山の頂上を目指し獣道に入る。
弓使いが先導していた。
大きな木の休める場所を見つけ、火を起こし、弓使いが、小動物を探し、弓で仕留めてきた。
捌いた肉を木に挿し食べた。
「国見の山への道は、昔からの道だ。人の跡があるので大丈夫。」
弓使いが気を利かせて説明する。
親分が聞いた。
「こんな所まで来たことがあるのか?」
「ここも婆様から聞いていた」
弓使いは、寝ようと木に寄りかかり小さくなって、眠った。
次の朝は、日の出る前から起き出し、歩き出した。
岩や木の根がゴツゴツしていたが、平地を歩くよりも、岩場を歩く方が歩き安い。
親分も付いて行くが、弓使いの体力には、かなわなかった。
それでも、ようやく山頂に着いた。
青い空がいきなり広がった。
遠くに黄金色を敷き詰めたような輝きだった。
米作の田んぼが広がっていた。
「凄いな、これは、、、」
米作りをしている親分は、圧倒されていた。
親分も弓使いも声に出来ず、沈黙した。登ってきた方向から風が吹き上がってきた。
弓使いには、何が光っているのか理解できなかった。
暫く立ち尽くしていたが、親分が先行した。降り始めると、直ぐに森に入り、道が分からなくなる。
弓使いが先に出て、こっちと誘導する。森の住民は凄い、この速さで山を降りることに、親分でも、付いて行くのがやっとだった。
また大きな木の根元見つけ、ここで休んだら、明日は奈良盆地だ。
「お前といると、楽できる。」
「何言ってんだ。しっかりしろ」
食事を済ませ、弓使いは、サッと縮こまり、寝てしまった。
呆れたが、頼もしさに安心して親分も眠りについた。
翌朝、昼前に平地に入った。
黄金色の絨毯が平地いっぱいに広がっていた。風が吹くとゆらゆらと揺れる事で波が通り過ぎるように、錯覚した。
絨毯の先に櫓が見えた。
「あそこだな。」
親分は、黄金色の絨毯に興奮していた。
弓使いは、もっと興奮していたようだ。声がなかった。
圧倒される米作の現実は、こんな風になるんだと、改めて思い知らされた。
よく見るとあぜ道が櫓に向かって伸びていた。
土が良いのか、稲穂は、密集して伸びていた。
あぜ道を往くと櫓に着いた。警備の人間が立っていた。
「お主らは何者だ。見慣れない者だな」
親分は、丁寧に頭を下げ、銅鏡の破片を見せた。
「我々は、伊勢の大巫女の使いで、近畿圏の櫓の大将に伝言を持ってきた。」
この銅鏡の破片は、以前、大巫女が
身につけていたもので、警備は一目で理解した。
「分かった。よし、ちょっと待ってくれ」
警備の人間が、仲間に合図して、櫓の中に入って行った。
3階程の高さがある櫓の門前で2人は待つことになった。




