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頼み事

頼み事



伊勢の大巫女は、難しい顔をして考えていた。

いつも居る焚き火の前でなく、机の様な平たい台の上に白いペラペラな紙のようなものを置いて筆を走らせていた。

紙に文字、日本では、この時代に、存在しないものであった。

顔を上げて、侍女を呼び出し、何かを告げた。


親分と弓使いは、長く海に浮かび、揺れていた船を見つめていた。

そして、竹林に埋もれるような祠の入り口を見あげた。


そこに侍女が出てきて招き入れた。

爽やかな風が、吹き込んでいた。


侍女は、二人を祠にいる大巫女のもとに連れていった。


「先ほどは、ようやってくれた。礼をいう。二人は、強いのぉ。あの兵は、九州のもので、いたのは兵だけだった。あの船には、命令しているものが乗っているのだろう。」


親分が、見てきたことを報告する。


「兵たちは、大人しく、船に戻りましたが、一部は、浜に残り見張りについたようです。」


大巫女は、分かっているはずだが、親分の報告を熱心に聞いて、優しく、ねぎらったのである。


弓使いは、そんな事は良いから戦う命令があれば、戦うぞ。と、怒りを露わにした。

親分は焦ったが、大巫女は、慰めるように釘を差した。


「弓使いは、優しいのぉ。婆様の教えか、、、まぁあの者共と争っても益はないぞ。それよりも親分。」


え、俺か?と、親分はビックリして、顔を大巫女に向けた。


「親分と弓使いには、近畿圏のものに届けて欲しい物があるのじゃが、どうじゃ」


近畿圏の出てこないだろうと思っていた言葉が出てきた。やはり大巫女と、近畿圏は、つながっていた。


親分は、弓使いを見つめた。

弓使いは、大巫女の力になりたいという気運が、盛り上がっているように見えた。

親分は、諦めたよう呟いた。


「大巫女、我らはお役に立つのであれば、その役目、我々にお任せください」


大巫女は、顔を歪めて感謝を伝えた。

そこで、机の上に、畳まれた紙を取り上げ、親分に渡した。さらに穴に紐が括り付けられた銅鏡の破片を手渡した。


「この白いものの中に、分かるものを書いてある。これを近畿圏の櫓に持っていき、櫓の中の大将に渡して欲しい。この銅鏡の破片は、相手にお主らが私の使いであることの証明として、渡しておく」


伊勢路を、登り櫛田川に沿って登り国見の山の峠を抜け、3日、4日で近畿圏の広い平野が見える。その先の大きな建物が櫓じゃと、道順を教え、渡したら、またこちらに戻ってきて欲しい。


大巫女は二人を祠から送り出した。


外に出ると、伊勢路を登り、櫛田川を目指した。


浜辺では、大きな船が揺れている。

太陽が頭の上に昇っていた。暑い夏の日の午後が始まっていた。


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