ナイフ
1-10
ナイフ
帰りは逆の旅程になる。
伊勢路から愛知に入り、伊那を抜け諏訪湖で1泊して、考えた。
「弓使い悪い、立科で、俺はオヤジの保倉川に向かう。先に巫女やチビに報告しておいてくれ、すまん。」
伊勢の大巫女の強烈な感覚に押されて、後の事を考えて、さらに確認をすべきだと気が付いたのだ。
戸隠、直江津王国、の様子を伺い、オヤジと話してから佐久の里に結結論を持って行くべきだと思った。
立科まで出ると、弓使いと別れた。
まず、戸隠に顔を出したが、大岩の近くにあった小屋には人が居なくなっていた。奥に入ったんだと感じた。そして直江津王国に入った。
王の執務室にオヤジと共に何度か入っていたのですんなりと通された。
王と宰相が待っていた。頭を下げ挨拶をして話し始めた。
「この度、オヤジに代わり私が移動するグループの親分となりました。今後ともよろしくお願いします。」
と、宰相が答えた。
「若が親分。分かったぞ。何様じゃ」
「はい、南の国の動きは、如何でしょうか?保倉川にオヤジと待ち合わせていますので、確認のために寄りました。」
「我らにも、警備の兵を立てるようになった。南の国からは何もない。こちらも人を送って確認したが、動きはないようだ」
「左様でしたか。分かりました。安心いたしました。オヤジにも報告出来ます」
親分は、伊勢の大巫女などの事は言わず、頭を下げ、執務室を出た。
保倉川に向かい小屋に入った。
母が迎え、妹と焚き火の前にいた。
「オヤジは?」
オヤジは、弟と海で漁をして、戻ってきた。小屋はオヤジの家族小屋になっていた。
オヤジは魚を捌き、串刺しにして食べさせてくれた。海の魚は味が濃いな。粥も煮てくれて、温かい。母の味だなと感じていた。
「伊勢の大巫女にあったのか?」
「はい、オヤジの言う通りだった。あれは、すごい威圧だった。浅間山の婆様の何倍もの迫力があった」
笑う親分を見て、安心した顔に、オヤジがなった。
「弓使いを連れて行った。南の国の事を教えてもらった。もう直江津王国には来ないと言っていたが、直江津王国には、何か問題があるのかな、そこは曖昧だった。」
「直江津王国は、近畿圏とは離れてるようだ。兵は居るだけで、近畿圏の共闘には参加しないらしい」
「王に聞いたのか?」
「いや、直江津王国にいる奴の話じゃ」
弓使いが気に入られた。これからは、茅を持って、何度か通うと思うと話した。
オヤジは、懐からナイフを取り出し、親分に渡した。
「このナイフは、祖先が、大陸から持って来たものだ。これからはお前が使え」
オヤジはお前に任せると宣言した。
親分は、手に持つナイフの重さに、感動した。
佐久の里の責任が大きく身にしみてきた。
オヤジの前で様々な事を確認し、佐久の里に持ち帰ることを誓った。
親分は、その後、佐久の里に戻ると、棒を使いチャンバラのような稽古をするようになった。
世間の強さに、守る方法もなければならんと感じた。
強くあるための方法を模索するようになった。
また年が過ぎ去っていった。




