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パンダ豚 くろ助の冒険  作者: Eisei3


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終章 種雄豚としての選抜 3(種付け①)

 僕も、もう生後九ヶ月を過ぎました。いよいよ種雄豚として、種雄豚舎に移動する時が来ました。そう、僕が豚房を脱走した時に、僕のお父さんを訪ねた、あの豚舎にです。

 

 小父さんと兄ちゃんが豚舎にやって来ると、僕を見て何か話をしています。

 「いよいよこのバークも、雄として使う時が来たな。体格も良いし、性格も温和そうだしな。きっと使いやすい雄になるだろう」

 「そうですね。種雄豚舎にいた雄のバークも活力が無くなって、先日出荷してしまったですしね。このバークが使い物になってもらわないと困りますものね」

 「そうだな。そうなると、バークの種雄豚が一頭もいなくなってしまう。それでは困るからな」

 小父さんは手拭いを巻いた頭を振りながら、そう言っています。

 二人の会話から、どうやら僕のお父さんは、既に出荷されてしまった様です。やっぱり、あの時に会ったのが最後になってしまったのでした。

 お父さんも可愛そうに …。もう肉になってしまったのです。

 だからお父さんに替わって、僕に、黒豚の種雄豚としての期待が掛かっているようです。種雄豚として使ってもらえるのは嬉しいのですが、何かもの凄く緊張して来ます。


 小父さんと兄ちゃんは、僕のいる豚房に追い板を持って入って来ると、僕を板で追って豚房の外に出しました。

 「それ、それ。出るんだ」

 小父さんが、そう僕に声を掛けます。

 僕は、板でお尻を押されながら、豚房の外に出ました。別に抵抗する様な嫌な事も無いので、僕はおとなしく二人に従いました。

 

 「まったく、こいつはおとなしい豚だ。普通は嫌がって出るのに抵抗するものを。この前逃げた時も、おとなしく捕まったしな」

 「後は、種雄豚として良い仕事をしてくれれば助かるんですがね。雌豚の前では活力のある所を見せてもらいたいですよね」

 「なに、明日は種付けがあるし、すぐに種雄豚としての本性が分かるさ。その時に、これから種雄豚として使って行けるかどうかを見極めるさ」

 小父さんはそう言います。

 

 どうやら明日が、僕の種雄豚としての適性の最終見極めのようです。でも、種付けって? 一体何なのでしょうか。雌の前で活力のある所を見せる? …。

 良くは分かりませんが、何れにせよ、明日は頑張らなければならないのでしょう。

 


 小父さんと兄ちゃんは、僕を種雄豚舎に追って歩いて行きます。

 僕の体重が増えて、体が重くなったからでしょうか、慣れない砂利の敷き詰められた通路を歩くのに、足の裏が砂利に当たって、とても痛く感じます。

 

 夏も、もうその後半に差し掛かっています。お日様の高さは大分低くなって来ました。私たちの歩く姿を映す地面の影も、少し長くなっています。

 でも、日射しはまだまだ強くて、射す様な光が体を照りつけます。通路沿いの梢ではセミたちが、シャー、シャー、シャーと、盛んに鳴いています。


 いよいよ、種雄豚舎に着きました。

 小父さんたちは僕を、豚舎の一番奥の豚房へと追って行きます。

 そこは、僕のお父さんが先日まで入っていた豚房でした。豚房も、運動場の床も綺麗に水洗されていて、床には新しいワラが厚く撒かれています。

 部屋にはまだ、お父さんの臭いが残っている様に感じられますが、ここが、これから僕の新しい住みかとなる場所です。

 豚舎の上には、送風機から延びる送風ダクトが取り付けられ、ダクトの丸い穴から涼しい風が吹き下ろしています。

 

 「それじゃあ、行くか。奥の放飼場の種付けをしなけりゃならないからな」

 「そうですね。今日は、種付け予定の発情の豚がたくさんいますしね」

 「それじゃあな。…あした頑張れよ」

 小父さんはそう僕に声を掛けると、頭に巻いた手拭いで顔の汗を拭きながら、兄ちゃんを従えて豚舎を出て行きました。

 

 「そうか。いよいよ明日か …」

 僕はそう、独り言を呟きました。

 いよいよ明日が、僕の種雄豚としてのデビューの日です。格好良い所を小父さんたちに見せて、僕の事をアピールしなければなりません。

 

 

 夕方には、ガランガランという音とともに、自動給餌器から飼曹に、決められた分だけの餌が落とし込まれます。

 今までの様に、餌箱から食べたい時に食べたいだけ、餌を食べることができたのとは訳が違います。種雄豚は、体に余計な脂が付いてしまわないように、餌を食べる量が制限されます。

 

 ですが、やっぱり慣れるまでは、最初はお腹が空きますね。

 でも、立派な種雄豚になるためですから、それはしょうがない事ですがね。



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