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パンダ豚 くろ助の冒険  作者: Eisei3


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第六章 種雄豚としての選抜 1

 僕がこの育成豚舎に戻ってから、早くも三ヶ月が経とうとしています。僕は生後六ヶ月を過ぎ、体重も、もう九十キログラムになりました。

 餌も育成用から、種豚用の飼料に替わっています。いよいよ雄豚として種雄豚の仲間入りをする日も近づいて来ました。


 右側の豚房にいるF1母豚の候補豚たちが、いよいよ種雌豚としての最後の選抜を受けようとしています。

 「ようし、次はこの豚だ」

 小父さんが豚房の中に入って、兄ちゃんに指示を出しています。

 「耳標番号は …。乳器はどうだ? よし、陰部もしっかりしているな」

 個体識別の台帳と豚を見比べながら、種雌豚として適格かどうかを見ていきます。

 「体型は …、ちょっと細いか? …。まぁ、合格だな」

 合格した豚は背中にスプレーでマル印がされ、右の耳に青い耳標が入れられます。

 ( パチン! )

 と、兄ちゃんがパンチで耳標を耳に打ち込み、小父さんがその番号を台帳に記録していきます。

 

 「今度はこの豚だ。乳器は七、七か。どうだ?、確かめて見ろ」

 小父さんの声に、兄ちゃんが豚のお腹を覗き込みます。

 「そうですね。左が七 …。そして右が …。七。だけれども、右側の一番後ろが盲乳っぽいですが?」

 兄ちゃんのその答えを聞いて、小父さんもお腹を覗き込みます。

 「どれ。ああ、これは盲乳だな。惜しいな …、だけれども失格にするか。体の伸びもいまいちだし、尻周りも寂しいしな」

 小父さんは台帳の、その豚の所に×印を書き込みます。

 そして兄ちゃんも、その豚の背中に大きく赤いスプレーで×印を書きました。


 そうして次々と、F1母豚として残される豚が決められていきます。

 これらの合格した豚は、右の耳に入れられた青い耳標の番号を基にF1証明の申請がされ、血筋が明らかな由緒正しいF1種雌豚としてデュロック種の種雄豚が交配され、肉豚としての三元肉豚を分娩していく事になります。

 間もなくこのF1母豚たちは繁殖のため、種雌豚用の豚舎に移されて行くことでしょう。また、中には、種豚の市場に出すために出荷される豚もいる事でしょうね。

 

 そして、背中に赤く×印を書き込まれた豚たちですが、もうF1母豚として繁殖に使われる望みは完全に絶たれてしまいました。

 この不合格の豚たちは、そのまま肉豚として食肉市場に出荷されるか、もう少し太らして、いずれは食肉用の肉豚として食肉市場に出荷される運命にあります。

 体付きがちょっと悪いとか変だとか、乳器が少し悪いというだけの事で、F1母豚として子供を産み、少なくともこれから三年間は生きられるという運命が脆くも消え去り、肉豚として生後わずか六ヶ月ほどで殺され食肉にされてしまうのです。

 残酷とも取れますが、それは食肉として優れた肉豚を生産するために、血統が良くて、より能力が高い母豚を残そうとするためなのです。

 これも、養豚経営で、産業動物や経済動物と呼ばれる家畜として生れた宿命なのでしょうか。

 でも、僕らはそれを、ただ黙って受入れるしかないのですから。

 ですが最近は、家畜も命ある動物として、愛玩動物のペットの様に、飢えや苦痛などから解放するための動物福祉の考え(アニマルウエルフェア)が、畜産業にも積極的に取り入れられて来ています。

 僕たちも、定められた短い一生を、苦痛なく過ごすことができれば … 幸せなんでしょうね、きっと …。


 僕は、F1母豚たちの選抜の光景を、複雑な心境で見守っていました。いずれは僕の身の上にもやって来る事ですから。

 

 

 やがて、僕のいる部屋を含めて、育成豚舎の左側半分の豚房に入れられている純粋豚たちが、種豚として選抜するための審査を受ける日がやって来ました。

 純粋種は、F1母豚に比べて発育が遅いため、彼女らより更に日を置いて種豚としての適格性が調べられるのです。

 ですが、僕の様なバークシャー種は、純粋種たちの中でも一番発育が遅いため、僕の検査はまだしばらく先のようですが。


 ランドレース種や大ヨーク種、それにデュロック種の雄や雌が、種豚としての適正検査を受ける事になりました。

 小父さんと兄ちゃんが、豚房の中に入って来ました。小父さんは手に台帳を、兄ちゃんは赤いスプレー缶を持っています。

 

 「この豚に印を付けろ」

 小父さんが兄ちゃんに、そう指示します。

 ( シュー … )

 兄ちゃんがその豚の背中に、スプレーでチェックを入れていきます。

 「このデュロックの雌だが、体型は良いな。肩幅もあるし、体高もある。乳器はどうだ? 台帳では六、七となっているが」

 小父さんの言葉に、兄ちゃんがその豚のお腹を覗き込んで、乳頭の数を数えます。

 「えーと …、左が六に …。右が七です。どの乳頭も正常ですね」

 兄ちゃんがそう答えます。

 「そうか。六、七ねえ …。左側が気にくわねえが、体型も良いし、陰部も大丈夫だ。うーん …。登録を取っておくか。よし! 残しだ」

 小父さんはそう言うと、台帳のその豚の所にマル印を付けました。

 兄ちゃんは、スプレーでその豚の背中に赤くマル印を付けます。そして、左の耳に耳標を打ち込みます。

 ( パッチン! )

 小父さんは、その耳標の番号を台帳に記入していきます。


 

 こうして、純粋種豚として認められた豚たちは、それぞれの品種ごとに種豚登録の申請がされます。

 種豚登録は、優れた三元肉豚やF1母豚を生産するための基礎豚となる純粋種豚が、血統が正しく、また能力の高い豚であるという証明の役割をします。

 そして、より能力が高くその能力が実証された優秀な種豚が繁殖に使われるよう、これを担保する役目をも持っています。

 だから、純粋種豚で種豚登録された豚は、その能力のお墨付きをもらったも同然なのです。

 

 「あーあ。僕も早くお墨付きをもらって、種雄豚舎に行きたいなぁ」

 思わず、本音が出ちゃいました。「ブヒ、ブヒㇶ …」と、ですが。


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