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パンダ豚 くろ助の冒険  作者: Eisei3


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第五章 探検 1(お母さんとの再会)

 ワラ庫の中に、朝日が眩しく射し込んでいます。

 僕は、ふかふかのワラの上で目を覚ましました。ワラの良い匂いが、僕の白い鼻先をクスッとくすぐります。

 

 (グー、ッ!)

 またお腹の虫が、そう大きく鳴きました。

 そう言えば、昨日の午後、豚房を逃げ出して来てから何も食べていませんでした。お腹の虫も我慢できないわけです。

 

 ワラ庫の入り口に駆け寄ると、首を少し伸ばして外の様子を窺ってみます。

 農場の奥にある駐車場を眺めても、停まっている車はありません。どうやら小父さんたちは、まだ農場には来ていないようです。


 「ブー! ブㇶ、ブㇶ ブー!」

 向こうに見える大きな豚舎の方から、豚たちの賑やかな鳴き声が聞こえて来ます。

 その豚舎は、建物の周りに広い土の運動場を備えた、種付けを済ませた雌たちがいる種雌豚の繋留豚舎のようです。

 

 「あそこに行けば、何か食べる物があるかもしれない…」

 僕はそう呟くと、小父さんたちが来ても見つからないように、側溝沿いに植えられている生け垣の植え込みの茂みや、通路の塀の影に隠れると、きょろきょろと周りを窺いながら繋留豚舎に向かって歩いて行きました。


 

 豚舎の入り口にたどり着きました。戸の影に隠れながら、そっと中を覗いてみます。

 そこでは大きな種雌豚たちが、広い部屋の床で寝転んだり、豚舎の外の運動場の土を鼻でほじくり返しては、掘ったその穴の中で寝ていたりと、それぞれが気の向くまま自由に過ごしています。

 

 「クン、クン、 …」

 通路の床に鼻先をくっつけ、匂いを嗅いでみます。すると豚舎の奥の方から、美味しそうな餌の匂いがして来ました。

 「クン、クン。 ブ、ブー」

 僕は鼻をくんくんさせながら、その匂いをたどって奥へと入って行きます。

 すると餌を積んだ緑色の一輪車が、通路の脇に置いてあるのを見つけました。その一輪車の舟の中一杯に、美味しそうな餌が山盛りに載せられていました。

 

 「よいしょっ、と!」

 もちろん「ブーッ!」とですが、僕はそう掛け声を掛けながら前足を一輪車の舟の横に引っ掛け乗り掛かると、全体重を一気にそこへ乗せ掛けました。

 一輪車は グラッ とすると、そのまま横倒しに倒れ掛かって来ます。僕は慌てて横っ飛びに逃げ退きました。

 (()()()‼ ガラッ、 ザーーッ…)

 ものすごい音が、豚舎の中に響き渡ります。

 豚房の中で寝ていた種雌豚たちが驚いて、「ブッ!、 フッ! ブッ! 、ブブブー!」と喚き声を上げながら、豚房の中を走り回っています。

 一輪車の上に山の様に載せられていた餌が全て、辺り一面の床の上にこぼれ、飛び散りました。それはもう、ものすごいあり様です。

 壁際に逃げていた僕は、恐る恐る横倒しになっている一輪車に近づくと、そのこぼれ散った餌の匂いを嗅いでみます。

 「クン クン…」

 床一面に飛び散っているその餌には、大きく砕かれたたくさんの黄色いトウモロコシの粒が見えます。たぶん、これは種豚用の配合飼料なのでしょう。僕が食べるには、まだかなり早いご飯なのですが。


 「クン クン クン 、ブー!」

 その餌は、とても美味しそうな匂いがします。気がつくと僕は、思わずその餌に飛びつき食べていました。

 「ガツ、ガツ、バク…、」

 久し振りに食べるご飯の、何て美味しい事。僕は、自分が逃亡の身という事も忘れて、夢中でガツガツと、餌を貪り食べていました。



 どのくらいそうしていたでしょう。お腹が一杯になった僕は、ゆっくりと顔を上げました。

 

 「 ()

 すると、僕の目の前にある豚房の鉄柵の向こうに、大きな黒い豚が立っていました。鼻の先と四本の足の先、そして丸まった短いしっぽの先端が白い毛で覆われた、黒豚です。

 そう、それは僕と同じバークシャー種の種雌豚でした。

 彼女は僕の方に顔を向けて、僕の臭いを嗅ぎ取ろうとその白い鼻先をピクピクとさせて、しきりにこちらの臭いを嗅いでいます。

 「お母さん!」

 思わず、僕はそう呼び掛けていました。「ブーウー!」と。

 僕には一目で分かりました。その黒豚が、僕のお母さんだと。僕は、彼女の方へ駆け寄りました。

 「お母さん。僕だよ!」


 しかし、彼女は僕が近づくと、

 「()! ()! ()!、ぶッ、ビー!」

 と、僕を威嚇し拒絶する叫び声を上げて、後ずさりし始めました。

 「お母さん! …」

 僕は更に、お母さんの方に身を乗り出して呼び掛けます。

 「()!、()!、()!、ビヒー」 

 「ビヒーッ!」

 でも、駄目です。お母さんは怯えた様に身体を震わせて、そう一声大きく鳴き声を上げると、外の運動場に走り出て行ってしまいました。

 

 「ふーッ、 …」

 僕は深くため息を吐くと、そこに座り込みました。

 「何ていう事だ。お母さんには、僕の事が分からないんだ」

 「ふー…」

 僕はとても悲しくなりました。お母さんに、久し振りに会えたというのに。


 

 僕はしばらくそこにへたり込んでいましたが、やがてよろよろと立ち上がると、豚舎の出口の戸の隙間から白い鼻先を突き出して、外の様子を窺いました。もうお日様が欅の梢の上に高く昇って、眩しい光が豚舎の中に射し込んでいます。

 そして、目の前に見える豚舎に目を凝らしました。

 

 その豚舎には豚房から続く少し細長い運動場があって、その運動場にそれは大きな豚がいて、陽の光を浴びているのが見えています。

 どうやらそこには、種雄豚たちが収容されているようです。


 

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