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第1話 出会い

はじめまして、こちらに小説を投稿するのは初めてです。

勇者様とちっこいもふもふドラゴンの女の子(こっちがメインの主人公!)のお話です。


変身あり、恋愛要素あり、重い話もあり…?の予定なので、なんでも許せる方向けです。


至らぬ点も多々あるかと思いますが、その際は教えていただけると幸いです。

 ちいさな体に、真っ白でふわふわの被毛。大きな耳と尻尾、虹色に輝く瞳の光彩。


 いかにも非力で人畜無害そうな小動物の見た目を持つ私が、実はドラゴンの血を引いている魔物――毛皮を持つ竜、ファードラゴンだなんて言っても、すぐには信じてもらえないだろう。


 それでも、額の一際毛足が長くなっている部分を掻き分けてみると、そこには竜族の証とも言える竜魔石が、赤々と輝いている。


 物心ついた頃から一人ぼっちだった私。時折出逢う他のドラゴン達からも、竜族としてはあまりにもちっぽけなその姿から、出来損ないだの、紛い物だのと散々罵られ、時には縄張りから追い立てられたりすることも珍しくなかった。


 そんなわけで、私はこの秘境域と言われる山深い地域に流れ着き、崖にある小さな横穴でひっそりと暮らしいていた。


 一日の大半を薄暗い巣穴で過ごし、時に空腹を覚えれば、他のドラゴンが食べ散らかした鉱脈の石屑から、小さな質の悪い水晶の欠片などを探して食べた。ただし、含まれている魔力が極めて少ないため、空腹はあまり満たされない。



 そんな私のたった唯一の楽しみは、時折巣穴の入り口に羽を休めに来る、魔カラスの独り言。人間の街の出来事や、人間世界のおとぎ話や歌。


 日が暮れて夜空に星々が輝き始めると、今日もまたいつの間にやら飛んできた彼が唄い始める。


『カ、カァー、カァカァ…むかしむかーし、そのむかし。天ける星の精霊、枯れた大地に星降らし、大いなる実りもたらさん…カァァ…』


 ぼんやりと歌を聴きながら、私は巣穴の入口から見える夜空の星を見ていた。そして、いつの間にか私は眠りについていた。


――そんなある日。


「うわぁぁぁぁぁぁ!!」


 巣穴のある崖の下から、どうやら人間のものと思しき悲鳴が聞こえた。 


 巣穴で休んでいた私はビクッ、と大きな耳を立てる。岩の隙間から恐る恐る覗いてみれば、一人の若い男性が緑色の翼竜…ウィンドワイバーンの群れに襲われている。


 この秘境域に人間が踏み込んでくる目的と言えば、大半がドラゴン狩りの連中だ。


 ドラゴンと人間は古来より自然に存在する魔力源や宝石等の資源を巡って争っている。

 また、ドラゴンの鱗や爪、額や体内に生成される竜魔石は、魔力を秘めた素材として重宝されているらしい。

 

 人間には決して関わってはいけない…この血に刻まれた忌々しい記憶が、物心付く前からそう語っていた。

 私は翼竜と人間の戦いを尻目に、巣穴の奥に戻ろうとした。

 

――その時。


「ゴガァァァァァァ!!」


 上空から一匹のウィンドワイバーンが、巣穴の入口にいた私目掛けて急降下攻撃を仕掛けてきた。 

 

「きゅ、きゅきゅうーー!?」


 私は心底驚いて飛び上がった。この辺りに棲むウインドワイバーンはドラゴンの中でも比較的下位の存在で、普段は自分から襲ってくるようなことは無かったからだ。


 そんなわけで、完全な不意打ちを喰らってた私は、吹き飛ばされ崖から下へ真っ逆さまに落ちてしまった。


「きゅぃぁぁぁぁーーー!!」


 情けない悲鳴を上げながら落下する私。

ーーああ、思えばつまらない竜生だったなぁ、と私はそれまでの自分の生きてきた時間を振り返った。


 なまじ高い知能を持った種族に生まれてしまった故、日陰で怯え、じっとしているだけの生活は苦痛だった。


 今度生まれてくるとしたら、もう野生の魔物になんか生まれないで、そう…人間にでもなってーー美味しいものや、暖かいお家、きれいな音楽、魔カラスが時々歌ってくれていた、きらきらした人間界を楽しんでみたいなぁ…

 私がそんなことを考える間も、岩肌の地面は刻々と迫ってくる。


「―――っ!??あぶない!!!」


突然人間の声が響く。


どんっ!! 


――身体が痛い。でも痛いということはまだ私は生きているということなのだろう。


「きゅ…きゅぅ…」


 私の体の下には、先程ウインドワイバーンに襲われていた人間。彼はピクリとも動かない。 


「ギャア、ギャア!!」


 まだ視界がチカチカしてよく見えないが、上空からワイバーンの気配を感じる。私はしばし彼の上で死んだふりをしていた。


 そのうちに、私と人間が絶命したと認識したらしいワイバーン達は、この場を去ることにしたらしく、声がだんだんと遠のいていった。


 私は倒れている彼の胸にそっと耳を当ててみた。


トク……トク……


体こそ全身傷だらけだが、まだ彼の心臓は動いている。

 本来であれば私は一目散にその場を離れるべきなのだろうけれども、私はふと思い立って彼の胸に手を当てた。


「…きゅーる!(ヒール!)」


 私の使える唯一の魔法、初級回復魔法のヒールを唱える。彼の体の主だった傷が塞がり、意識こそまだ戻らないが、その顔色は血の気を取り戻した。


 それに安堵した瞬間、私の意識はふわりと遠のく。

 キーンと耳鳴りがして、視界が白い光の粒子に呑まれる。


 いつの間にか降り出した雨が頬を打つ感覚の中で、私は気を失っていった。


――ピチョン、ピチョン…


 水滴の音で目が覚める。

――暖かくて、なぜだか懐かしい。私を包んでいるこれは、人間の…腕…?


 見回してみれば、私は先程の人間の腕の中に抱かれていた。


「きゃーーーー!!」


 絶叫と共に飛び起きる私。私を包んでいた布がバサリ、と音を立て地面に落ちる。


「…ああ、よかった…気がついたみたいだな」


 目の前にいる金髪蒼眼のその男性は、ばつの悪そうな顔で私から視線を外しながら言う。


 その時、私はパニックになりながらも、何故か自分が人間の言葉を理解できていることに気が付き、ハッとした。


「あっ、えっと、その…わ、わたし…あ…え…!?」


 やっとの思いで私は口を開いてみたが、次いで出てくるのは人間の言葉。


 吃驚してバッ、と自分の口元を手で抑えたが、それは魔物のものではない。人間の手。足元の水溜りに映るのは、白銀の髪を持つ人間の少女の姿。


「えぇ、ええええ〜〜〜!?」


 事態が飲み込めず、私は両手で顔を覆ってその場にうずくまる。


「おい、大丈夫か…?気がついたらお前、俺の横で倒れていたんだ。とりあえずこの洞窟に運んで、休んでいたというわけさ」


 膝を抱えて伏し目がちに彼の方を見る私に、彼は言葉を続ける。 


「いや…勘違いしてくれるなよ…?雨の中裸で倒れていたお前は、あのままだと低体温にでもなって死んでいただろう。…とりあえずホラ、マントでも羽織ってろ」


 勘違い、という言葉の意味は何のことなのかよくわからなかったが、毛皮を持たない姿で全裸だった私は、彼から渡された布を体に身に着けた。


「あ…ありがとうございますぅ…」 


 消え入りそうな声で、私は人間の言葉で感謝の意を述べる。

 私が布を纏ったところで、彼はしっかりと私を直視してくれるようになった。


「ところで…余計な詮索はしないつもりだが、こんな山奥でお前みたいな女が服も身に着けず…っていうのは少々物騒すぎやしないかい?」


 彼は怪訝そうな顔で私に問いかける。


「あの…その…」


 私が言葉に詰まるのを見て、彼は悪い、と一言つぶやく。そして言葉を続けた。


「俺の名はシグ。王都センティアールから来た冒険者だ。君は?」


「ひぇっ、えと…!」


 私は困った顔で彼ーーシグを見つめた。


 気付いた時には既にひとりぼっちだった私には、名前なんてものは無い。時折出くわす同族や魔カラスからは白いの、だとか、チビ、と呼ばれていたけれども。


「あ、あ…私…名前?なんてものは、無いのです…!えと、私…。昔からこの山に住む者でして…」


 しどろもどろになりつつも、なんとか絞り出した自己紹介にシグはさらに訝しげな顔つきになる。


「…名前も付けられず、こんな危険な山奥に住んでいる少女がいるなんて、よっぽどの事情があるんだろうな…」


 自分が本当は魔物だなんて言ったら、何をされるか分かったものではない。私はなんとかこの場を凌いで、隙を見て逃げよう…そう思っていた。ところが…


シュウウウゥゥゥ…!


 ふいに私の体が光りに包まれ、元の魔物、小さな白いファードラゴンの姿に戻っていく。


「ひぇっ…!?」

「なっ…何だ!?」 


 突然の出来事にシグも驚き、そして抜刀して身構える。 


「……。きゅ…!」


 すっかりちっぽけな魔物の姿に元に戻った私の身体を見て、唖然としながらも剣を構えたままのシグ。ああ、殺されるーー

 直感的にそう感じ、尻尾を内股に巻き込み、前足で頭を覆った。


ぎゅぅぅぅぅーーーーーっ!!


 私の体が、ふいに強く抱きしめられる。 


「ぴゅぃーーーーーッ!?」


 驚きのあまり心底情けない悲鳴を上げて、私は目を開けた。見れば、なんとシグが私を思い切り抱きしめている。


「……ああ…!!あああ…!!君はッ、あの時崖から落ちてきた魔物…!!なんだ!?このふわふわはぁ!?反則だろぉ!!…おい!!ああ、なんて可愛いんだよぉぉぉぉ!!お前!!」


 どういうわけか、シグは先程までの冷静な様子とは打って変わって興奮し、相当取り乱している。

 しかしそれは殺意や敵意からではなさそうな為、私は体を強張らせつつも、されるがままに彼に身を預けていた。


「…ハッ!……すまん。その……あまりにお前がふわふわもふもふしてるからに…ッ!」


 しばらくして、我に返ったシグは腕から私を解放した。彼は真っ赤になって横を向き片手で口元を押さえながら恥ずかしそうにそう言う。


 私はブルブルブルッ、と体を振ってボサボサになった毛並みを整えた。


「きゅ…?」


 小首を傾げて唖然とシグを見つめる私に、彼は少しもじもじとした態度で黙っていたが、ふいに口を開く。


「お前は何か目的があってこの山に住んでいるのか?」


 私は大きな耳ごと、首をふるふると横に振る。


「そうか…じゃあ、お前さえ良ければ、なんだが…俺と契約して従魔…いや、俺のパートナーにならないか?」


 私は言葉の意味を考えて三秒、驚いて跳び上がり、先程整えたばかりの毛並みが再び尻尾の先までボッサボサになる。


「きゅーーーー!!!!?」


「ふわふわでもふもふなのをを差し引いても、お前みたいに人間に変身できる魔物なんて見たことがない。…正直、俺はお前のことを気に入ったんだ…!どうだ?」


 突然重大な契約を迫られ、私は頭が真っ白になった。


 ――今まで生きてきて、他の者から抱きしめれられることはおろか、興味や好意を持たれたことなど一度も無かった。


 そんな私に初めて歩み寄ってきた存在。


 そんな目の前にいる人間ーーシグに、私もまた興味、いや、正直もしかしたらそれ以上のよくわからない感情を今は抱いてしまっている。


 しかしながら、見た目こそは小動物だけれども、私は歴史的にも人間から忌み嫌われている竜族の血を引いている存在。


 それを知った時、人間である彼はーー私を殺すのではないだろうか?


 恐怖と希望と、そして未知なる感情が、頭の中でグルグルと渦を巻く。 


「きゅ…きゅうぅ…!」


 視界がチカチカと白くなっていき、聞こえる音が遠のいていく。体力も精神力も限界を迎えた為か、私の小さな体はパタリ、と冷たい地面に倒れ込んだ。


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読んでくださって本当にありがとうございます。


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