第一話 あなたの知識を、
どうも、るろです。お元気ですか?最近はいきなり寒くなってきましたね。今まで学園物を描いてきた私ですが、一回休憩して、異世界系を書きたいと思います。初めての試みなのでよろしくお願いします。
百三歳。
それが、白崎透の寿命だった。
彼は大学の言語学教授として半世紀を生き、
世界の言葉を研究し続けた“言葉の旅人”だった。
白崎はその日、いつものように机に向かっていた。
古びた万年筆の音が、病室の静寂に心地よく響く。
「言葉は世界を作る……か。結局、その証明は果たせなかったな。」
苦笑を浮かべ、ペンを置いた瞬間、
外の風がカーテンを揺らした。
春の陽射しが、ゆっくりと彼の顔を照らす。
まるで、別れを告げるように。
彼は穏やかに目を閉じた。
光。
それは、やわらかい金色の光だった。
「お疲れさまでした、白崎透さん。」
声が響いた。
目を開けると、そこにはひとりの美しい女性がいた。
透き通るような白い衣をまとい、瞳は虹色に揺らめいている。
「……君は、誰かな。」
「私は“言の葉の守り人”。この世界の言葉を見守る女神です。」
女神は静かに微笑み、手のひらを差し出した。
そこには、ゆらめく光の粒が浮かんでいる。
「あなたの知識を、貸してほしい世界があります。」
「知識、だと?」
「はい。
その世界では“言葉”が力を持ちます。
しかし、人々はその重みを恐れ、
短い言葉しか使えなくなってしまいました。」
「……長い言葉は、危険なのか。」
「覚えるほどに魔力を削り、
そして、発するほどに世界を動かすのです。」
白崎はしばらく沈黙した。
やがて、かすかに笑った。
「言葉の重みを、実際に測れる世界……。
面白いじゃないか。」
女神は微笑み、指先で空を撫でた。
「どうか、その世界を――救ってください。」
次の瞬間、風が吹き抜けた。
まぶたを開けると、そこは見知らぬ森だった。
空は群青、草は金色に輝き、空気はどこか粘り気がある。
足元には、倒れた少年と少女。
目の前には、黒い獣――。
「“火”!」
少年が叫ぶ。小さな火花が舞い、すぐに消えた。
「“炎”!」
少女の手から、わずかな光が灯る。
しかし、獣はびくともしない。
白崎は、ため息をついた。
「なるほど……“短い言葉”しか使えんのか。」
彼はゆっくりと前に出て、
小さく、かつはっきりと口を開いた。
「――Conflagration(業火)。」
轟音が走った。
地面が裂け、黒獣が一瞬で灰となる。
風が静まり返る。
少年と少女は、呆然としたまま動けない。
「な、なんだよ、今の……!?
そんな長い言葉、聞いたこともない……!」
白崎は苦笑した。
「覚えるだけで魔力が削れる世界、か。
ならば――この歳まで積み重ねた“知識”が、
多少は役に立ちそうだな。」
そう呟いたとき、 、遠くで、別の声が囁いた。
『言葉を、軽々しく使ってはなりません。
“言葉”は命。
憎しみの言葉を放てば、その憎しみは己を呪うでしょう。』
白崎は、その声の主を探すように空を見上げた。
そこには、女神の光が一瞬だけきらめき、そして消えた。
「……言葉の重み、か。」
一瞬後ろから押されるような風が吹いた
「さて、どんな世界が待っているのやら。」
白崎は森を歩き出した




