怖い話を見てみたい
僕は友達と2人で廃墟に肝試しに行った。もう何年も人は入ってなく、人もそう簡単には入れないような場所だ。僕が生まれた時には既にその廃墟はあった。友達のお父さんの友達が、そこの廃墟の土地権利を持っているらしく、許可はすんなりおりた。ただ、怪我には気をつけろよとの事だった。入ってみると、もう空気が澱んでいて居心地が悪かった。更に奥へと進むと、空き缶や瓦礫がそこらに散らかっていた。僕は昔から窮地に立たされると頭が切れる方で、受験の時もよくそう言う能力的なもので助かっていた。僕は気づいてしまった。ここには人がいる。明らかに意図のある空き缶の置き方。それも廃棄の入口から離れた奥の方。それに空き缶がエナジードリンク。つい最近発売されたばかりの新商品。瓦礫で逃げ道を塞がれている。空き缶は蹴ったり当たったりすると、音が響き渡るから、人が来たということが分かりやすい。それに罠だとも悟られにくいから、人は無意識に蹴ってしまう。僕の友達もその1人だった。僕は慌てて制止した。声を出さず、全力で、静かに、友達の足を掴んだ。友達が喋る前にその口を塞ぎ、耳元でその仮説を伝えた。ゆっくりと入口へと戻る。幸い、無事戻ることができ、急いで近くの交番へと駆け込んだ。事情を伝え、警察官二人に着いてきてもらう。廃棄周辺を探索してもらった。そこには人が居た。しかし、ホームレスだった。危ないものや、刃物は一切所持しておらず、突然警察官が来たことに対して驚いてるようだった。友達は「な〜んだホームレスだったのかよ〜」と安堵している。警察官も、そのホームレスを建造物侵入罪で交番へ連行されていった。友達はヘラヘラしていて、そんな大袈裟な事じゃなかったなと笑っていた。が、僕は違う。居る。この廃墟には、
"ホームレス以外の何者か"が。そう結論付れる理由は1つ。さっきの空き缶だ。今の時代、物価高の中、あれだけのエナジードリンク。もちろん全てがそうではなかったが、一目見た時エナジードリンクだらけだなって思うくらいにはエナジードリンクがあった。ホームレスにそんなのを買う財力は限りなくゼロと言えるだろう。だから居る。この廃墟にはホームレスよりも、幽霊なんかよりもっと恐ろしいのが。僕は気づいてしまった。点と点が線で繋がり、その恐ろしい現実が現在進行形で起こっていることに。僕は交番へ一目散へ逃げ、気づいた事実を警察官へ伝えた。5人ほどの警察官を連れ、再び訪れる。僕は気づいてしまった。なぜあんなにエナジードリンクの空き缶があったのか、他の缶のジュースとかじゃダメだったのか。その疑問が自分の中で生まれた。エナジードリンクにはカフェインが多く含まれていて、眠気を覚ますのにベストだ。僕も受験勉強の時にお世話になった。眠気を覚ますためだとして、ではなぜ眠気を覚ます必要があるのか、ということだった。そんなの簡単なことだった。1人の人間が、獲物を待つ時に、眠ってしまっては元も子もないからだ。つまり、何本も、何本も、飲みまくって、そろそろ限界な時に僕たちが来たんだ。絶好のチャンスだし、このチャンスを逃す訳にはいかないだろう。僕は今から"その人"が来てもおかしくないと思い、急いで交番へ逃げたわけだ。1人の人間が1人の警察官と入口で待っていると、1発の銃声が廃墟と僕の耳に響き渡る。一緒に待っていた人がトランシーバーのようなもので応援を呼んでいた。奥から一人の人間と2人の警察官が共に歩いてきた。手錠をされているのか、その人間は後ろに手を組んでいた。
その人はお父さんの友達だったようだ。僕は、納得した。この廃墟の管理人だ。どこが隠れやすいだとか、どこが奇襲を仕掛けやすいだとか、全て手に取るように分かるんだから。許可がすんなりおりた理由も、「怪我には気をつけろよ」の言葉の意味も。最初は単に廃墟は足場が悪いから怪我をするなよということだと思っていたが、その意味を知って気味が悪くなった。その人間がパトカーへ押し込まれると同時に、救急車が来た。どうやらさっきの銃声の正体は、警察官がその男へ奇襲を仕掛けられた時に反射で撃ってしまったようだった。警察官は二人行動をしており、相方が襲われているのを見て、「やめろ!」と叫んだらしい。その声を聞いた男は一瞬ビクッとし、その一瞬の隙を利用し、襲われていた警察官は男を退け、手錠をしたらしい。襲われた警察官は、全治3週間の大怪我だったそうだ。男の供述曰く、僕が受験で合格したのが許せなかったみたいだ。どうやら男の息子は僕と同じ高校を受験したが、その息子は受からず、僕が受かったのが許せなかったらしい。その男の言葉は止まらず、ずっと僕への不満を抱いていたらしい。話を聞き進めていくにつれて、あのホームレスも男による手先だったことが判明した。
皆さんも、廃墟に入る時は忘れてはいけません。本当に怖いのは、幽霊ではなく、何をするかわからない生きた人間だということを。
僕が今1番怖いのは、その男はいずれ出所していてまた僕を殺ろうとしてるんじゃないかということです。この話にはまだ続きがあるはずです。現在進行形で起こっています。
(この話は1部フィクションを含むノンフィクションです)