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88.王太子夫妻1

 マーシー王太子妃。

 王太子殿下の二歳年上で、二年前に嫁いできた大国・サン王国の王女殿下。

 今年、二十七歳になるとは思えない愛らしい美貌で王太子殿下を虜にしている、とか。

 性格もおっとりしていて、お優しい方、だとか。


 まあ、噂ですが。


 そう、噂です。


 王太子妃殿下とは直にお話しする機会はなく、全てが噂の範囲。

 それというのも王太子妃殿下と言葉を交わせる相手は限られているからなのですが。

 

 公務に出席されることも稀で、出席されても王族席で、にこやかに微笑んでいらっしゃるだけ。

 噂では王太子殿下が愛する妃殿下を他者に見せたくないから、だとか。

 ええ、あくまでも噂ですが。

 

 パーティー会場でも、王太子殿下は王太子妃殿下の側を片時も離れず、ぴったりと寄り添っておられ、ご夫妻の仲睦まじさは国外でも評判だとか。

 一見、順風満帆に見える王太子夫妻の結婚生活。

 ところが最近、それに翳りが見え始めたらしく……。



「聞いたか?王太子妃殿下のことを」


「ああ。例のことだろう?社交界でも噂になっているらしいぞ」


「こればかりは仕方ないだろうな」


「だが、結婚してまだ二年だろう?」


「ご老人達にとっては“もう二年”、なんだろうさ」


「王太子殿下もお気の毒に」


 ヒソヒソと、声を潜めて噂話に勤しむ紳士達。

 今、社交界では一つの話題で持ち切りです。

 社交界デビューを終えたばかりの私も勿論、知っております。嫌でも聞こえてきますしね。


 スパエラ王国に嫁いできて二年。

 王太子夫妻には子宝に恵まれません。

 そのせいで年配の貴族達は「結婚して二年も経つのに懐妊さえないのは問題だ」と、騒ぎ始めているのです。

 王族の数が少なくなってしまったせいでしょう。

 老い先短い方々にとっては心配の種なのかもしれません。

 私などは騒ぐのは早すぎでは?と思ってしまいますもの。

 まだ結婚して二年です。

 とはいえ、三年経っても出来ない、となれば自ずと側妃の話が出てくるのは想像に難くありません。

 王太子夫妻にとって、この一年が勝負でしょうね。


 この時はまだ他人事でした。

 たとえ、三年後に子供ができなくとも、そう簡単に側妃を娶ることはないという確信があったからです。

 王太子殿下がご自分の妻を愛し過ぎているとかではなく、現実的な問題として。

 王太子妃殿下のお国のことを考えれば。

 大国の思惑もあるでしょうし。

 我が国としても、お世継ぎは王太子妃殿下から産んで頂きたい。

 色々な意味で。




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