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86.女医side ~研究対象1~

「それじゃあ、頼んだよ。フェリス」


 そう言うと、この国の王太子はさっさと診察室を出ていく。

 まったく、人使いの荒い人だこと。

 小鳥ちゃん(ポール・グラトニー)の診察にいつも通り付き添ってきたかと思えば、奇妙な依頼をしていくんだもの。


「やれやれ……」


 私は診察室のベッドに横たわる国王をこっそりと観察する。

 ぐっすりと眠っている。


「起きる気配もなし……か」


 うん、これはどう見ても薬で眠らされたとしか思えない。

 さっきまで結構大きな声で話していたもの。普通なら「煩い」と、起きても不思議じゃない。

 それなのにまったく起きないということは、そういうことだ。


「まったく……国王陛下に一服盛るなんて、命知らずな王太子殿下だわ」


 そこが気に入ってもいるけど。


「どうせなら王宮の侍医にやらせればいいのに」


 とはいえ、王宮の専属医師達が素直に王太子の命令を聞くかどうかは分からない。

 大半が難色を示すだろうし、国王に進言する可能性は大いにある。

 王太子殿下の命令とはいえ、国王を害することは彼らにはできない。彼らの主人は、あくまでも国王陛下。


「ま、外面は完璧の王太子殿下だものね」


 本性を知らない王宮の医師達には、好青年の王太子殿下だ。

 加えて貴族達だけでなく国民の人気も国王よりも遥かに上。


「あんな、ぶっ飛んだ性格だとは夢にも思わないでしょうね。陛下もお気の毒に。ぶっ飛んだ性格の出来の良すぎる息子をもって」


 私は嫌いじゃないけどね。

 でも、陛下は知らないのよね。

 まあ、知らない方が幸せだわ。

 知ったら、間違いなく発狂する案件だもの。


 さて、準備に取り掛かるとしましょうか。

 やり方は私の好きにしていいって言質はとってあることだし。


「王太子殿下の進言にのみ素直に耳を傾け、他者には今まで通り。ただし、年のせいで性格が若干丸くなる……か」


 なくもない依頼内容。

 老害を邪魔だと思う若手は結構いるのよね。

 国王の場合、王家にはもう王太子の息子一人しか残っていないし、気落ちして弱気になるパターンは分かりやすいし、周囲にも理解してもらいやすい。


『私も結婚したばかりだ。父上には、もう暫くの間は国王のままでいてもらいたい』


『陛下を早々に隠居させなのですか?』


『まだ早い。後継者ができるまでには、引退してほしくないよ』


『つまりそれは、王太子殿下に御子様ができれば、用済みと解釈してよろしいのですか?』


『ははっ。はっきり言うね』


『大事なことですから』


『用済みになるのは、()()()()()()()だよ。少なくとも、数年先まではない……かな』


 王太子との会話を思い出す。


「まあ、私としては依頼料は破格だし、新しい研究対象が増えたから別にいいけど」


 どうも腑に落ちないのよね。


「絶対に何かあるわね……」


 依頼の裏に何か、策略のようなものを感じる。

 もっとも、父親であり国王を「自分に従順な人形」に作り替えてしまおう、としていること事態が立派な策略だ。


「他にも何か画策している気がするのよね」


 あの王太子のことだから。


「ま、別にいいか」


 私は私で好きなようにさせてもらいますか。

 こうして始まった「国王改造計画」は、順調に進んでいった。




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