72.真相2
質問の意図が悪かったのかもしれません。
私と伯父様の間に気まずい沈黙が流れました。
「何故、そう思う?」
やがて、伯父様が静かに問われます。
質問を質問で返さないでほしいですわ。
「王太子殿下の行動に疑問を感じてしまったというべきでしょうか」
私は正直に答えることにしました。
別に隠す必要もありませんしね。
そもそも王太子殿下が悪いのです。
死んだはずの元第三王子を、さも生きているかのように話されるのですから。”逃げた小鳥”は十中八九、チャスティー王子殿下のことでしょう。
私は、王太子殿下とのやり取りを伯父様に話しました。
「なるほどな……」
伯父様は静かに頷かれます。
まったく驚かれない伯父様。
きっと、伯父様も怪しんでいらっしゃったのでしょうね。
それとも何か確信がおありなのでしょうか。
「王太子殿下との茶会で他に何か気になったことはあるか?」
「そうですわね。……大したことでもありませんが、王太子殿下は、私の次の婚約者に第四王子殿下はどうかと提案されました」
「グリード公爵家との縁を繋げておきたということだろう。何もおかしくはない。もっとも、第四王子殿下は王家から去ることは決まっている。おそらく、王太子殿下は、ユースティティアを試したのだろう」
「試した?何をですの?」
「王家との婚姻に飛びつくかどうか、だ。時期的にも第四王子殿下の処遇が決まった頃だしな」
「私はそのことを知りませんでしたので、王太子殿下が私の言質を取りたいものだとばかり思っていました」
どちらにしても第四王子殿下との婚姻は考えていませんでしたが……。
王太子殿下も本気なのか冗談なのか判断に困りましたし……。
婚姻をほのめかしているわりには熱意がまったく感じられませんでした。
王家から出すと決定している第四王子殿下。
どうりで、真剣味がないわけです。
「王太子殿下の真意がどこにあるのか、私には分かりかねます」
「そうだな。だが、一つだけ確かなことは……王太子殿下はユースティティアをとても気に入ったということだ」
「それは……また……。光栄なことですけれど……」
あまり気に入られたくありません。
なんと言っていいのでしょうか?
めんどくさそうな人だと、感じてしまうのです。