71.真相1
「静粛騒動で大混乱だったせいだな。後手後手に回ってしまった」
伯父様にお伺いしたところ、あっさりと教えて下さいました。
「……やはりご存知だったのですね?」
「ああ、知っていた」
伯父様はあっさりと認めました。
そうだと思いました。
王太子殿下もご存知なのでしょう。
「第四王子殿下は、どうなされるのですか?」
「時期を待って王家所縁の修道院に送る手筈だ。殿下が命じたものでなくとも、責任は取っていただかなくてはな」
「そうですか」
「意外か?」
「いいえ。第四王子殿下にとってはその方がよろしいかと」
「そうだな。あの騒動で第四王子殿下は王太子殿下の不興を買ってしまった。臣籍降下したところで逃げられないだろう。冷遇され、まともな扱いは受けられまい。修道院に送られる方がまだマシだ」
「はい」
王太子殿下は弟のチャスティー王子殿下を偏愛していらした。
その愛する弟を貶めた者達を決して許しはしない。
分かりにくい愛情表現だったおかげで、気づいている人は少ないでしょうが。
「チャスティー王子殿下は運が悪かった」
伯父様が零され、私は思わず頷きました。
第四王子殿下の問題だけではありません。
この国に多くいる他国のスパイ達。
彼らの思惑と行動。
ラース副団長夫人の件もあります。
彼女のご両親が他国のスパイだったことは伏せられています。
ラース副団長夫人は自分の両親が他国のスパイであったことを知らなかったようです。
知らされていなかった、と言うべきでしょう。
彼女は、自分がスパイの娘である自覚すらなく、第四王子殿下の側にいただけ。
「彼女の両親は?」
「秘密裏に処刑した。娘と一緒にな」
「そうですか……」
「副団長には急な病で死んだと伝えてある。他国のスパイなど、公表できないのでな」
「賢明な処置かと存じます」
副団長はきっと不審に感じたことでしょう。
何故、急に妻が亡くなったのかと。
けれど、副団長は深く追求してこなかったそうです。
離婚するしないで揉めていたと聞きますし、おかしいと思っても、王家からの発表に粛々と従うしかなかったのかもしれません。
「最後に一つ、お伺いしてもよろしいでしょうか?」
「ああ」
「チャスティー王子殿下は、本当にお亡くなりになったのでしょうか?」