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23.副団長side ~娘の雇用契約~

 結局、俺は娘よりも仕事を選んだ。

 近衛騎士団の団長になることは子供の頃からの夢だった。

 副団長になり、やっと近衛騎士団をまとめていける立場になった。

 夢に近づいた。

 あと一歩で叶うところまできた。

 俺は娘と自分の夢を天秤にかけ、娘よりも夢をとっちまった。


『それでは、ここにサインをお願いします』


『あ……はい』


 伯爵家の執事とやらに促されるまま、俺は書類にサインをした。

 “雇用契約”と書かれた書類。

 保護者欄に、俺のサインをする。

 アンビーは「“メイド見習い”とはいうけれど、七歳の子供に何ができるっていうの。貴方は大袈裟なのよ。名目上、そうなっているだけ。実際のところは伯爵家での行儀見習いのようなものよ」と笑っていた。

 ロディーテにしてもそうだ。

 彼女も「私がお従兄様の娘をメイドにするわけないわ。全く、もう」と呆れていた。


 本当にそうか?

 この契約書は正規のものだ。


『これで契約は完了となります』


『はい』


『“雇用”は三年ごとの更新となります。契約満了の一ヶ月前には、こちらから通達させて頂きます』


『わかりました』


『雇用契約を引き続き更新されるも、契約満了で終了されるも、すべてラース家でお決めになってください。強制ではありませんので、契約期間中にお考えになられるのが宜しいかと思います』


『……はい』


『それでは、私はこれで。ご契約ありがとうございました』



 淡々とした契約内容。

 雇用は三年で更新か。

 ああ、そうだな。今は七歳でも三年後は十歳。その更に三年後は十三歳だ。十歳を過ぎれば、学校に通う子供も出てくる。

 騎士団の子供は大半が親と同じ職種に就くことが多い。女の子なら親の紹介で騎士と結婚する場合が大半だった。

 身元が確かなこともあり、王宮の侍女になる子も中にはいる。よくある話だ。


 あの執事もそれを含んだ物言いだった。


『ラース副団長、我が主より言伝がございます』


『……なんですか?』


『雇用契約の内容通りに、最初の三年間はエンビー嬢を“奥様を癒すための慰め役”としての雇用となります。給金は出ませんが、その分だけ伯爵夫人の横に立っても見劣りしない衣類や宝飾品などは提供させて頂けます』


『…………そうか』


『そして、契約満了後、エンビー嬢の進路はラース副団長に一任するとのことです。ただ、次の三年間からは契約書通りに“メイド見習い”として、働いて頂きます。見習い、なので給金は発生致しませんが、衣食住、必要な物は全て提供されます。伯爵家での生活と変わらず、旦那様や奥様に御目通りすることも可能です』


『……』


『ただし、エンビー嬢に伯爵家のメイドたる資格がないと判断された場合、もしくはラース副団長がエンビー嬢をメイドに相応しくないと判断された場合。この雇用契約はただちに終了致します』


『……はい』


『それでは、私はこれで。失礼致します』


 執事は一礼し、帰っていった。

 一抹の不安が過る。

 契約自体真っ当なものだ。何も不安に思うことはない。

 なのに……。

 何故か、胸がざわつく。

 嫌な感じだ。




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