表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/107

14.エンビーside 〜壊れた日常〜

「これからは伯爵家の見習いメイドです。その立場を弁えて行動するように」


 何を言われたのか分からなかった。

 私が何?

 なんで使用人に?

 この人は何を言っているの?


「エンビー、返事は?」


「……はい」


「宜しい。それでは、仕事に取り掛かりなさい」


 怖そうなおばさんが偉そうに私に命令する。

 なに?

 何が起こっているの!?

 分からない。

 この状況が理解できない。


 何が何だか分からないまま、一日が終わった。


 明日になれば元に戻っているよね?


 そう願ってベッドに入り、眠りに付いた。

 夢であれば良い。

 もしかしたら今夢の中なんじゃないかって思う。

 だってそうじゃなかったらおかしいもん。


 目が覚めたら元通りに戻っているに違いない。

 きっと、そうに違いない。


 なのに……。

 なんで?どうして? 朝が来ても夢から覚めない。

 夢じゃなかった。


 毎朝、ロディおねえちゃまに整えて貰っていた私の自慢の長い髪。

 それをひとまとめにされて、頭の後ろで縛られた。


「準備は整いました」


「そう、では行きましょう」


 先輩メイド?って人が、私を置いてけぼりにして昨日の怖いおばさんと会話している。

 状況が飲み込めない。

 怖いおばさんに腕を掴まれて引っ張られた。

 痛い。痛いよ。放してよ。

 私はロディおねえちゃまの所に行くんだから!


「エンビー!早く来なさい!」


 怖いおばさんが怒鳴った。

 なんで?なんで私が怒られなくちゃいけないの? 私は何も悪いことしていないのに。

 でも、逆らうとまた怒られそうだから、言う事を聞くしかない。


 嫌だった。

 でも逆らうこともできない。

 辛くて泣いてしまった。そんな私を怖いおばさんが睨んでいる。


「泣くのをやめなさい!」


「うっ……く。ご、ごめんな……しゃい……っく……」



 どうして?

 私が泣いても誰も慰めてくれない。

 ロディおねえちゃまはどうして来てくれないの?

 いつだって私の味方だったのに。


 あの日から、私の全てが一変した。

 使用人が着る服を着せられ、朝から働かされた。


 ロディおねえちゃまの部屋に行こうとしたら、怖いおばさんに止められた。


 あの日から一度も会っていない。


 勉強をする必要がなくなったけど、その分だけ給仕や掃除の仕方を徹底的に教えられた。

 もう、嫌だよ。

 怒られてばかりだし、ご飯も美味しくないし、ベッドも硬い。

 ロディおねえちゃまに会いたい。
















『遠慮しないでいいのよ。今日からここがエンビーちゃんの家なんだから』


 そう言ってくれたよね?

 初めて見た大きなお屋敷。

 広い部屋。

 綺麗なドレス。

 ふかふかのベッド。

 甘いお菓子は口の中で蕩ける美味しさだった。

 毎日が楽しかった。

 そんな生活が、ずっと続くと思っていたのに。


 なんで?

 どうしてこんなことになっちゃったの?


 幸せな日々から辛い毎日。



「お嬢様の部屋の掃除をしておきなさい」





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
勉強はしていたんだ(一応) 上げて落とす。気の毒ですよね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ