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背にのる
そうか、と坊さんはうなずくと、わしも手伝おうといって、しゃがみこんだ。
「おぬしひとりでは、手間もかかろう?まずはわしの背にのるといい」
「 せ? 」
いわれて、ようやく、からだに力がはいらないことにきづいた。
地面が近いとおもったのは、腰が抜けたようになっているからか・・・。
「さ、遠慮はいらぬぞ」
坊さんはこちらへ背をむけて膝をついている。
「 ・・・のって、いいと?」
「おう。はようのられい」
坊さんの声に命じられたように、勝手にからだが、坊さんのほうへ這いずるようによってゆき、背にある笠をつかんでどうにかしがみついた。
「 ―― お手間を、かけます」
「 ―― いや。お気になさるな」
また、くちにしなければよかったとおもう言葉がでてしまったが、ぐう、と立ち上がった坊主の背からみえる景色の高さに、なんだか楽しい気分が勝って、どうでもよくなる。