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くちからでるのは
「 ―― あっちだな? 」
ひとつのほうをゆびさしたときに、にやりとして顔をのぞきこんできた。
はて、顔に出てしまったのだろうか?
「へえ。 その、なにしろ狭くて汚くて、お坊様をおとめできるような家ではねえんですが・・・」
「ほお、わしをとめてくれようと?それはありがたい。 いやいや、家の中にいれてほしいとは思わんが、せめて軒先をかしてくれぬか?」
「そんな。お坊様に軒先で寝ろなんて、 ・・・きたねえですが・・・中にはいって寝てもらわねえと・・・ 」
言ってしまってから、ああしまった、とおもう。
いつもそうだ。
なんだか悪い方へむかわせるのは、こうやっておのれのくちからでてゆく、思ってるのとはちがう言葉だ。
そう、あのときも
おれは、 女を、 女房を、 おカツを、
―― 殺そうとおもって、たたいたわけじゃない。