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戻らぬわけは
そうかそうか、とうなずいた坊さんは、それならゆくか、といきなりこちらへ手をのばしてくると、親し気に顔をみあわせ、おや、というように眉をあげきいてきた。
「家に、戻らぬのか?」
戻った方が、いいのか?
坊さんの顔をみながら、考える。
「・・・・いえ。おれは、 ―― ここで、まだ、・・・仕事があるンで」
まさかこの坊さんは、おれの家にでも泊まるつもりなのだろうか。
いや、泊めてもいいが、 ・・・いや、いや。
だめだ。
そうだ。
家に、
家には
―― 殺した女がいる。