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最後まで落ちず
「 ―― そのあとに見たり感じたりしたものは、生きていたときのものか、それとも、いまのように死んだあとのおのれがつくりだした幻なのかもわかりませぬが、耳の、いや、頭の奥にはいまも、ぽきりぽきりと枝か骨が折れるような音がのこり、鳥や、腹をすかしてここまでやってくる獣、虫にからだを這いまわられ、すこしずつ、くわれてゆくしかございませんでした・・・」
「そうか。そのからだが朽ちて枝から下へと落ち、おぬしはその四方へ散ったからだの骨が気になっておったのか」
「はい。なにしろ頭だけは、こうして枝にのびてきた藤の蔓に目の穴をからめとられて、下へ落ちようにも落ちられず枝にさがったまま。 先に落ちたからだがさまざまな獣にくわえられてゆくのを、ただ見ているしかなかったもので・・・」
「最後まで、おのれが大事か」
「はい。あさましきことでございます。 おカツだけ、あの男の手で弔われたのも悔しく、こうしてさまよいつづけております」
「うむ、どうにもしかたのない男だ。供養のしがいもない」
坊主は手にした杖の先で、ざりざりと、土間になにかをかきはじめた。




