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藤の蔓(つる)
坊さまは困ったような顔で板の間にこちらをそっとおろすと、首にさげていた布もほどいておろし、つつんであった『柴』を、囲炉裏のそばへと並べ始めた。
「おぬしのせいといえば、そうかもしれぬが、まあ、それほどのことではない。 わしのところで修行しておる子狸がな、この山をとおるのに、おぬしがこわいと、泣きそうな顔でいうので、見に来たのだ。 あれは、 ―― 藤かの」
「 『 ふじ 』? 」
「そうよ。 おぬしの中をとおって、そのまま木に下げたのは、藤の蔓であろう?」
『 中をとおって 』 ―― 。
ああ、そうか。
「 だから、なにもないのか・・・」
家の中に、殺してしまったおカツどころか、なにもないのは ―― 。
「 わたくしが死んで、 もうかなり経つのでしょうか?」