設定など(本編未読時は閲覧非推奨)
#用語
<吸血鬼>
人間と同じような姿をしており、脊椎動物の血液を食料としている種族。
本作における吸血鬼は人間とは別個の種族であり、
人間から吸血鬼になるような事は不可能。
病的に白い肌、赤い(体を流れる血の色なので正確には赤黒い)瞳、
人間の基準で妖しいまでの美しい容姿をしている。
視覚、嗅覚、聴覚に優れておりかなり遠くまで正確に見通せ、
可聴領域も超音波を聞き分けられる程に広い。
逆に触覚は人間の半分程度しかなく、痛覚も鈍い。
身体能力自体は人間と比べて大差はないが、
常時リミッターが外れている火事場の馬鹿力状態なので
人間より怪力だと誤解されている。
魔術とは非なる黒い炎を操る異能を持ち、
武器や自身の拳に炎を灯して戦う事が多い。
この黒炎は自身の手が触れている単一の物体を伝わせる事が可能で、
かなりの長さにまで炎を纏わせられる。
石畳などの複数の部品を組み合わせてある物体は単一と扱われないので、
炎は一部分にしか出ない。
大地、空気などに伝わせる事は不可能。
黒炎は自身を焼く事はなく、他の物体が熱で燃焼した場合は普通の火になる。
不死性は最大に近しく、受けた傷はすぐに再生し、
たとえ灰になっても再生できる。
滅ぼすには山査子の杭で心臓を突き刺し、
膝下の腱を切断した後に埋葬するしかない。
傷の再生にはエネルギーを消費し、
補給にはエネルギー量に応じた血を吸う必要がある。
灰からの再生で生き血が一人分(約4リットル)。
脊椎動物の血液であれば何でもいい。
ただし一度灰化してしまうと、
生き血を補給しても復活には百年近い時間を要する。
傷の再生と黒炎の消費エネルギーは共用。
どちらも血によって得たエネルギーがないと使えない。
血のエネルギーは食物からは補給できず、生き血でしか補給はできない。
他の体液による代用は不可。
本編でも言及されていたが死体の血は吸血鬼にとって猛毒。
不死者である同族の血も同じく猛毒となる。
半吸血鬼は不死者ではないので毒ではなくなる。
このため肉、魚類が食べられない。
死血をわずかでも含んでいると毒になってしまうため。
死血を含んでいるかどうかは臭いで判別可能。
本作の技術レベルでは不可能だが、
冷凍保存の輸血パックなどがあればそれは毒にならない。
血液としての機能を喪失した時点で死血となり、毒となる。
異性に対しての吸血行為には、吸われる対象に激しい快楽が伴う。
これは人間だけでなく動物相手でも同様であり、
通常の肉体を持つ者では抗えない。
ただしあまりに強烈な快楽を感じさせられた者は、
以降永続的に快楽が半減するという悪影響が現れる。
二回目で25%、三回目で12.5%……の快楽しか感じられなくなる。
「何をしても半分しか楽しくない。何を食べても半分しか美味しく感じない」
という台詞で説明している。
この状態を治療する手段はなく、一生耐え続けるしかない。
唯一、吸血行為によってのみ快楽を十全に感じる事ができる。
同性に対する吸血でも快楽は伴うが大した事はなく、悪影響も殆ど発生しない。
吸血鬼に対する吸血行為では異性であっても快楽は発生しない。
一般的に吸血鬼の弱点とされる物は有効と無効が分かれる。
信仰を伴った聖印に触れれば体が焼け、
直射日光を約2~3分ほど浴び続けると体が焼け爛れていく。
日光を直接見た場合は再生が完了するまで失明する。
流水を渡れない、鏡に映らない、
住人に招待されなければ家に入れないなどの弱点は存在しない。
本作では不可能だが紫外線の照射なども特に効果はない。
人間との間に子を作る事は可能。
半吸血鬼は必ず不死性を失い、吸血鬼の能力や利点もなく、
弱点だけを受け継ぐ。
弱点を受け継ぐ度合いは個々人で違い、ほぼ人間と同じ子もいれば、
不死性と特殊能力のない吸血鬼のような子も産まれる。
ハーフが人間と子を成すと九割の割合で人間、一割でハーフ。
吸血鬼とハーフの場合は半々の確率で吸血鬼かハーフとなる。
先祖を遡っていくと吸血鬼の血が混じっていたりする人間はそう多くないが、
人間の血が混じった吸血鬼は割と多い。
本編で言及されていた「純血」は、
直系尊属の三親等以内に半吸血鬼がいない吸血鬼を指す。
黒い炎、滅ぼす方法:スロベニアの吸血鬼クドラク +
エルデンリングの祈祷「黒炎の刃」+
機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORYより、
ガンダム試作3号機の爆導索。
死体や同族の血が毒:映画「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」
吸血行為に伴う快楽:覚醒剤の効能、及び悪影響
#キャラクター
<ジュルター>
傭兵であり、非常に目立つ黄色の外套を着た槍術士。
"黄色槍"という異名を持つ。第二話開始時点で25歳。
当初は傭兵部隊の隊長に嫌がらせで着せられた黄色の外套は
武の高みに近づくため、
わざと目立つ格好で戦場に立っていたのが元々の理由だが
いつしか異名と共に名が知れるようになり、
トレードマークとして今も身に着けている。
鮮やかな黄色だった外套は、
度重なる戦の中でかすれてくすんだ黄色になってしまっている。
黒髪、黒い瞳で、体格はそれなりに良いが威圧感を与えるような風貌ではない。
少々身嗜みはだらしないが、普通のおっさんと言った感じ。
黄色の外套以外は目立つような物も身に着けておらず、地味で頑丈な旅人装束。
そのため黄色の外套だけが印象に残ってしまい、異名の由来となった。
隠密行動などの時は当たり前だが外す。
幼い頃から鍛え続け、戦場で経験を積んだ槍術、格闘術は相当の物。
私塾の稽古で身に着けた基礎部分と自己流の部分をきっちりと分けており、
基礎部分だけを教える事ができる。
武の高みを目指すという理由は建前であり、
実際は死に値する場所を探すための方便。
いつ死んでもいいとは思っていたが、ただ単なる死では納得ができなかった。
家族を河川の氾濫で失い、
一人生き残った自分が"死んでもいい"場所を求めており、
それと同時に自分が"まだ生きていてもいい"理由を求め続けていた。
アウリウの事は大切な戦友、友人として思っているし人前でも憚らず口に出す。
異性としても割と好意を持っているが、異種族の上
お互いに傭兵という仕事柄、一線を越えるような言動は控えている。
聞こえていない難聴系ではなく、
現状の関係を維持したいのでわざとはぐらかしているだけ。
周囲には普通に男女の仲だと思われているくらいに距離が近い。
名前の由来はチェコ語の黄色(žlutá)。
キャラクター設定のモデルとしては、
ドラゴンクエスト4のライアン + 地球防衛軍5~6のグリムリーパー隊長。
<アウリウ>
吸血鬼だというのに傭兵をしている変わり者の女性。
第二話開始時点で79歳(実年齢)/外見年齢16歳前後。
吸血鬼たちは特に根拠もなく貴族を名乗る事が多いが、
アウリウには自身が貴種という認識はなく、むしろお高くとまった者を嫌う。
長い金髪に血のような赤い瞳をした、妖艶な美貌をたたえた小柄な美少女。
肌は吸血鬼のため病的に白く、日光に長時間当たると酷い火傷のようになるので
厚手の黒い衣服を好み、露出は一切ない。
日中の屋外や日当たりの良い場所では外套の頭巾を深く被る。
アウリウ本人は頭巾を被るのはあまり好きではなく、
曇りの日や日陰などではすぐ外す。
無色透明な薄い宝石を使った魔道具の眼鏡をかけている。
UVカットサングラスのような物で視力矯正用ではなく、
裸眼の方がよく見える。視力に換算すると3.0ほど。
頭巾と違い眼鏡は気に入っているのもあり一々外さない。
得物は細剣。
その剣技は優雅さとは程遠く、
敵の攻撃を強行突破し一撃で刺し貫く戦法を最も得意とする。
細剣は剣身の一部分が柄にまで伸びている特注品で、
その部分を指で触って黒炎を纏わせる。
そのためアウリウは剣を少し変わった持ち方で持つ。
大蒜や臭いの強い香草が嫌いで、
臭いの周辺には近づけず、むりやり近づけられると涙目で怒る。
煙草が大嫌い。
煙を吹きかけられようものなら黒炎を髪か服に着火させるくらいはやる。
吸血鬼を嫌っているが、自身が吸血鬼だという事実を否定はしない。
吸血行為は食事として動物を、
介錯の一環(末期患者にモルヒネを投与するようなもの)、
許しがたい悪党への一生続く拷問としてのみ行う。
ジュルターをおちゃらけてからかう事もあるが、信頼している表れ。
割と異性としても好意を持っているのだが、一線を越えられない。
関係を崩す事の不安感と、
吸血鬼という種族としての負い目が踏み込む事を躊躇わせている。
好意はアウリウの方がかなり強め。
傭兵としてジュルターと常に共闘してきたのは、
二回目まではは偶然。三回目あたりから験担ぎ。
五回目あたりでジュルターに好意を持ち、
黄色槍の逸話を作って喋るようになった。
親密さのアピールもあるが、一番の目的は自陣営に来る有力傭兵を増やすこと。
誰よりも目立つ黄色の外套を着て戦場に出る、想い人のため。
後はどうせ給金が同じなら楽に勝った方がいいじゃない、みたいな考え。
名前の由来はルーマニア語の金色(auriu)。
キャラクターのモデルとしては、ドラゴンクエスト4のホイミン +
妖怪人間ベムの妖怪人間たち、及び同アニメのオープニングテーマ。
<イェシル>
災いの花。
三十年ごとに世界に現れ、花が咲いた時に災いをもたらしたとされる植物。
名はジュルターが名付けた。由来は彼の故郷に生えていた一本の木。
人間との会話が可能で、高度な知性を持つ。
物語開始直後の性格は無垢な少女の物であり、
後半に従って学習、変化している。
最終話終了時点での性格は、
単純に言えばジュルターとアウリウを足して二で割ったような感じ。
頑固で生真面目な父親と、陽気で優しい母親の娘。
だがろくでなしの二乗。
その本来の名称は「願いの花」。
周囲の人の願いや想いを読み取り、それを叶える花。
あまりに超常的な願いでなければ、力の限り叶えてくれる。
咲く花の色や形状は読み取った願いによって変化し、
基本的に同じ物は存在しない。
何の願いも読み取らずに咲いた場合は無垢な白い花が咲く。
願いを叶えるといっても超常的な方法を取る事は少なく、
力業で何とかしようとする。
大金が欲しいと願えばどこかから奪ってくる、など。
イェシルが善性の性格をしているのは
ジュルター、アウリウの影響が強かったから。
花色のイメージは淡い七三黄銅(真鍮の一種。イエローブラス)。
黄色の色味が強い金色であり、
黄色の外套と、女吸血鬼の金髪を合わせたような色。
金管楽器などによく使われている色合い。
名前の由来はトルコ語の緑。
キャラクター設定のモデルは
「アラジンと魔法のランプ」に類する願いを叶えてくれる魔人 +
猿の手などの願いを叶えると碌な事にならない呪いの道具。
外見のイメージは聖剣伝説2以降の木の精霊ドリアード、
ドラえもんのキー坊(幼少期)。
<ゲルメズ>
第3話に登場。物心ついた時から山賊として生きてきた男。34歳。
山賊である事に誇りを持ち、
その生き方以外を知ってもなお、山賊として生きた男。
その内心は奪う事しかできない山賊に対して否定的であり、
山賊を卑下しこき下ろすのはゲルメズが本質的に善人であるから。
山賊を世界に不要な悪と認識しつつも、山賊の誇りを持って行動する矛盾の塊。
子分たちには山賊から足を洗ってほしかったのだが、
誰よりも誇り高く山賊で在り続けるゲルメズの姿が憧れとなってしまい、
子分たちを山賊の道に繋ぎ止めてしまっていた。
ゲルメズ風に言うと「可能性を奪った」。
積極的に死にたがっている訳ではないが、
いつ死んでも構わないとは思っていた。
真っ当な相手に負けて山賊として死ぬ。それが理想の死に様と。
そのため、子分たちを失った後にジュルターと出会ったのは渡りに船だった。
戦斧(右)と小鉈(左)の二刃を同時に使うが、利き腕は左。
戦斧は見せ罠としての役割も持ち、本当にゲルメズが信頼しているのは鉈の方。
戦い方は後退を行わず、ひたすらに前進していく突撃型。
この戦法も死を恐れないどころか、むしろ死に踏み込んでいく心境の表れ。
名前の由来はペルシア語の赤。
<ホペア>
第4話に登場。超一流の腕を持つ女料理人。19歳。
あくまで"超一流"であり、常を超える才には達していない。
両親から虐待教育を受けて育ったが、感性はいたって普通。
これは幼少期、ヴァーレンと彼の両親と共にいた影響が大きい。
割と自信家ではあるが、自身の限界も理解している。
精神性も含め、町一番にはなれても世界一の料理人にはなれないと。
アウリウやイェシルを舐めるという奇行は、自分を試してみた結果。
ここまでやるのは無理そうと思って夢を断念する一因になった。
イェシルの味のイメージは金蓮花の葉っぱと花びら。
名前の由来はフィンランド語の銀色(hopea)。
ヴァーレンの名前の由来は、
フィンランド語の水色(ヴァーレンシニネン/vaaleansininen)。
<モーヴ>
第5話に登場。山奥の小さな村の近郊に居を構える物知り爺さん。79歳。
実はアウリウと同い年。
隠居した高名な大魔術師であり、
その魔術は一般的魔術師とは一線を画する凄まじい物。
天賦の才を持つ魔術師で、
若かりし頃はその魔術を存分に発揮し英雄と称えられた。
その反面、多くの敵を作ってしまい地位と財産を失い、
失意と貧しさの中で妻と子も亡くす。
考えなしに力を行使する事の愚かさをようやく悟ったモーヴは、
亡国の貴族から依頼を請けて二十年の月日を費やし、
結界の魔道具を作り上げて表舞台から姿を消した。
三十年前の災いの花が起こした顛末、
後の結界の扱われ方をその目で確認して彼は嘆き、生き残った英雄に言った。
結界に籠る事に何の意味がある、そんな事のために結界を作ったのではないと。
英雄から返事はなく、ただ拒絶されたモーヴには諦念だけがあった。
自分は何もかも不幸にする事しかできないのだと。
その後に彼が魔術を使う事になるのは、
山神の代役をする時まで待たねばならなかった。
死が間近に迫ってきた時、せめて何かを幸福にしたいと。
玩具のような魔道具は手慰みで、
せめて幼子が笑ってくれるならという切なる願いも込められている。
自分の作った物で一瞬でも楽しさを感じてくれたならという思い。
不幸にするだけではないと証明してほしくて。
名前の由来はルーマニア語の紫、菫色(mov)。
<サフィ>
第6話に登場。吸血鬼の餌場とされた村で一人逃げ延びた、
白き炎の子と呼ばれる異能を持つ少女。15歳。
真面目な優等生に見えるが、割とうっかり者でおっちょこちょい。
咄嗟の判断力が弱く、ジュルターの屁理屈に付き合ってしまったり、
作戦を無視して突撃してしまったりと本来の性格が出る場面もある。
元々ただの村娘であり、そもそも戦闘要員には向いていない性格。
白炎は吸血鬼の黒炎と似た性質を持っているが、
発動には自身の血を必要とする。
そのため長時間の使用は貧血などの症状を引き起こし、
限界を超えて消費すれば出血多量と同じ状況となる。
吸血鬼のように外部からの補給はできないが、
体の機能としてエネルギー源を自己生成できるのが白炎の特徴。
白炎は黒炎に対して一方的に有利であり、
重なった部分の黒炎を打ち消して燃える。
さらに吸血鬼が白炎で焼かれると、焼かれた箇所は一日間再生できなくなる。
一般的には半吸血鬼の異能とされる場合も多いが、
吸血鬼の血を引く者には発現しない。
名前の由来はヒンディー語の白(サフェード/सफ़ेद)。
白き炎の設定はスロベニアの伝承、吸血鬼殺しの子クルースニクの能力より。
<吸血鬼(第6話)>
サフィの村を餌場に変えた吸血鬼。48歳(実年齢)/外見年齢20歳前後。
外見年齢はこちらの方が上だが、アウリウと比べて30年近い若造。
このため吸血鬼と人間を取り巻く環境を一切理解しておらず、
本気で自分の王国を作ろうとしていた。
男女の吸血鬼による餌(人間)の完全支配という、
幼子でさえ抱きそうもない妄想を。
自信過剰、誇大妄想、傲慢、そして選民意識の塊。
相手の考えや感情を理解できず、する気もない。
平凡な吸血鬼。
アウリウが来たのはただの偶然。
女吸血鬼が来なければ近隣の田舎村を食いつぶしながら待つつもりだった。
後数年と持たずに、国から派遣された者たちによって討伐されていただろうが。
その際は滅ぶ事はなく、百年より後に復活していたかもしれない。
部屋に設置していた黒炎の罠は敵対者避けではなく、
勝手に入ってきて夜這いを仕掛ける女たち用。
キャラクターとしてのモデルは不倫関連の話に登場するアホ&クズな間男。
そして麻薬、覚醒剤などを使った性行為の果て。
<老人(第7話~最終話)>
三十年前に災いの花を討った英雄の生き残り。58歳。
左腕と右足を失っているが、技の冴えは健在。
果ての岬に作られた結界の中で、災いの花を殺すために待ち続けていた。
長柄の鎌を杖兼武器として使う。
形状は草刈り鎌に近く、薙刀の刃を逆につけたような形状の武器。
現実逃避、保留癖を固めて塊にしたような存在。
武の道を志した理由からして堅苦しい貴族の家から逃げたかったからであり、
突出した才があったがために英雄として祭り上げられ、
それを疎ましく思いつつも心地よくも感じていたため、
英雄の座に保留して座っていた。
英雄の座を保留し続けるために災いの花討伐の招集を受け、
自分以上の才と武を持つ他の九人に怯え、
彼らがいなくなれば自身の平穏は守られると願い、
願いを叶える赤黒の花はそれを叶えて英雄たちを殺した。
自身の浅ましい願いが現実になったような有様から目を背け、
そんな事を願ったなどと知られぬように結界に籠り、
災いの花を結界内で討つという大義名分で全てから逃げ続け、保留し続けた。
ジュルターからも指摘されているが、本気で災いの花を討つ気はなかった。
都合のいい言い訳があったから使ったというだけ。
苛烈な態度は猜疑心と恐怖から。
本編における態度は必死で格好つけて、虚勢の仮面を被っているだけ。
言い訳に使っていた花を本当に届けに来た阿呆がいたのが運の尽き。
イェシルを討つ事を喜んでいるように見えたのは
自分を傷つけ苦しめた花への復讐心、
いっそ死ねば楽になれるのでは? という諦め、
もし上手くいけば英雄に返り咲けるかもという情けない希望。
要するに「頑張ってるふり」を三十年続けただけの老人。
だからこそ聖女の「もういい」の意味を正確に理解できた。
笑顔に見えたものに込められていた感情は、
あれ、これもしかしたらもう終わりにできるのでは? という期待、
このまま行けば英雄のまま終われるという欲望、
それはそれとして腕と足の借りを返してやるという憎しみ、
よくも来てくれたなお前よぉ~、というよく分からないハイテンション。
こんなもの、感情の機微に疎いジュルターに分かるはずもない。




