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プロローグ
多分、彼女は、大人になろうとしている。
爪の先で立つほど背伸びして、たまたま見えた先にいたのが僕だった。それだけだろう。
やり方はお世辞にも、正しいとは言えないけれど。
そう。
彼女は世間の噂よりも不器用で、意地っ張りだった。
オルティス・レイトン回顧録
*
叶わない恋なら優しくしないで
どうしようもなく落ちていく
好きだと伝えられたらどんなにいいか
でも言えない。
だって私は……。
もしこの瞬間が過去になってもきっと一生忘れないだろうと思った
人生で、一度くらいそんな風に想ってみたいと考える。
パトリシア・ブラック